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夏夢  作者: ara-suji.com
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第9話「絞られる容疑者」

「さっきはごめん!マヤちゃん」

 先程はつい火急の用があったとはいえマヤに恥をかかせるような形となってしまった。巧は両手を付かん勢いで頭を下げ謝った。のだがマヤの反応は余りにも味気ないものであった。

「もういいですよ、んで?何かわかったんです?」

「え?あ、いやとりあえず聖也くんは多分犯人じゃないってことだけかなぁ……」

「そうですか……」

 あまりにも淡白な返答にあまりに困惑してしまう巧だが、マヤはそんな巧のことなどお構いなしに考え事をしているようだった。

「ちょっと私思うんですけど……」

「ん?」

 無口なのはどうも推理モードに入っているらしいマヤが、黒髪をなびかせてこちらを見た。

「これ犯人は夏希かルカのどっちかじゃないかと思うんです」

「え?夏希ちゃんかルカちゃん?」

 女の友情はハムより薄いなんて言葉を聞いたことがあるが、こんなにも簡単に友達を疑うような発言をするとは……。マヤは三人の中では大人しそうだとか昨日まで思っていた自分を巧は殴ってやりたい気分になった。

「そう思いません?これってつまり犯人は美香先輩の死を受け入れられてなくてこういうことしてるんだと思うんですよね。そういう意味ではあの二人って動機はありますよね」

「まぁ確かにあの二人は美香の大ファンだったものね。でもそれを言うならマヤちゃんもそうじゃないのか?」

「それはそうですけど、今私はもう完全に巧先輩派で気持ち的に整理ついてるんで」

 そう言っていちいち抱きついてくるマヤ。どうでもいいのだが今は夏なのでなんとも暑苦しい。

「だけどなぁ、あんなに協力的だった二人が犯人だなんて……」

「先輩まだそんなこと言ってんですか?犯人見つける気があるんならもっと心鬼にしてかないと後手後手になりますよ」

 確かにそうである、昨日あれほど言われたというのに自分の中の甘さを克服できない自分に嫌気が差してくる。

「とにかく巧先輩の優しいとこはいいとこだと思いますけど、その甘いとこはダメな部分です。そのままじゃいつまでたってもこのなりすまし事件と侵入事件どちらもこのままです、先輩がそれでいいながらいいですけど」

(このままか……)

 結局マヤの言うことに何一つ反論することもできず巧は去っていくマヤを見送ることしかできないのであった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 なんとなくマヤの言うことが気になりつつもなんとなく踏ん切りのつかないまま夕方を迎えた巧は母の車を借りて麓にある山名市内のデパートフードコートへ来ていた。

 ようやく充電のたまった美香のスマホを開こうとしたのだがネットが繋がらず、かといって実家にWifiなんてものが飛んでるわけもないもので、仕方がなくFree Wifiがあることを期待して麓のデパートまで降りてきていたのだ。

「田舎のデパートだからなぁ、Free Wifiあるといいんだが……。あるな、よーし。ネットが繋がったところで早速Twitterを開いて、と……」

 巧はTwitterのアイコンをタップし、アプリを開くことを試みる。が、

「ダメだ、出てくるのはログイン画面か……」

 あわよくばパスワードを変更して犯人がアカウントにログインできないようにしようかと思ったのだが、まぁこんなにあっさりと解決すれば苦労はないわけなのだが、それでもやはりがっかりした。

(しっかし、イマイチ犯人像が掴めないなぁ……)

 美香のアカウントを使い美香のふりをしている犯人が投稿している場所はそのすべて間違いなく美香に関係している場所である。巧や美香や聖也といった限られた人物しか知らない場所というのもいくつかあった。

(聖也も犯人じゃないとしたら一体……)

 フードコートの椅子にもたれかかりぼんやりと考える巧の脳裏に先ほどのマヤの言葉が蘇る。

『これ犯人は夏希かルカのどっちかじゃないかと思うんです』

(夏希かルカか、あのふたりをどうしても疑わないといけないのかなぁ……」

 そう椅子にさらに深くもたれかかり沈思黙考していた時である。

「「先輩!」」

 両側から突如大きな声が聞こえ一瞬体がびくつき椅子から転げ落ちそうになる。

「ハハッ!相変わらず先輩のリアクションって受ける〜!」

「ほんとリアクション面白いですよね先輩って」

 果たして問題のルカと夏希が両側から小馬鹿にしたような笑いを浮かべながら姿を現した。というか今日は仕事ではなかったか。いやそんなことよりもこいつらのどちらかが本当に犯人なのか。

「あれー?先輩それもしかして美香先輩のスマホですか?」

「すっごいじゃないですか、どこでそれを?」

 喜々としてそう尋ねてくる両者だが巧は表情を緩めずふたりを睨みつけている。その様子に異変を感じたか、二人はにやけた笑いをやめ、

「どしたんです先輩。顔、怖いのはもともとだけどさらに怖い顔になってますよ?」

「そんなガンつけられるとさすがに引くんですけど」

 怪訝そうにそう言う両者だがここで引くわけには行かない。

「二人共、ちょっと聞きたいことがあるんだ、そこに座ってくれ」

 巧の凄みに気圧され思わず言うとおりにルカと夏希。

「ほんとなんなんですか先輩」

「二人とも正直に答えてくれ、なりすましの犯人はお前らのうちのどちらかか?」


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