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第06話:魔道具

魔道具、それは魔法を使うことを前提とした道具の総称。

単純に魔法補助したり、魔力等をエネルギー源として動作するものなど様々だ。

SF作品によく出てくる魔道具なんかと同じような定義だ。


魔道具を売っている店などもあるが、ものによっては一般に出回っていないレアな品もある。

テーブルの上に置かれた魔道具は超レアな逸品だ。

折りたたみ式の携帯電話に酷似しているこの魔道具、魔通信機と呼ばれている。

アランは過去に取材した貴族の1人が魔道具のコレクターをしており、この魔道具を所有していたためその存在を知っていた。


「すごいものが出てきましたね。」

俺は思わず声が漏れ出ていた。


「お、なんだ。知っているのか?教えてくれ。」


そこで、俺は少し考える。こういう時、記者とか情報屋は簡単に情報提供しないはずだ。

何となくアランならいくら出せるか聞いてくるような気がした。


「ふむ。ではこの情報にいくら出せます?」

その言葉に、カロ達は押し黙った。どうやら悩んでる様子だ。

そこで、俺は話を続けることにした。


「とまあ、普通なら情報料をいただくのですが、今回はサービスしますよ。

 これは魔通信機と呼ばれている魔道具です。

 魔力を流すことで、離れた場所にいる相手と連絡を取ることができる超レアな品です。

 少なくとも、一般には出回っているようなものではありませんね。

 王族や国の機関、後は上位貴族の一部くらいしか持っていないものです。」


「まじかよ。」


「うっそ。じゃあこれ売ったら滅茶苦茶いいお金になるんじゃない?」


カロとユリは驚きの声を上げる。

一方で、ライアは冷静だった。


「駄目よ、ユリ。帰りの依頼を受けてるんだから、売ったらバレるでしょう。

 それにね。相手は伯爵よ。下手なことすればヤバいことになることぐらい少し考えればわかるでしょう。」


ライアがため息交じりユリに言い聞かせる。


「残念ながら、売るのは難しいですね。

 この魔道具は2つで1つの魔道具です。

 これと同じものがもう1つあります。自分と話す相手、両方にこの魔道具があって初めて連絡取れるようになっています。」


「へー、そうなのね。」

「ふーん。」

カロとユリは反応が薄い。


「…、アランさん。その話は本当なの?」


俺はライアの質問に肯定する。

この魔道具はいわゆる通信回線だ。ペアとなる魔道具の間でしか通信ができないため、不特定多数と連絡は取れない。

しかし、裏を返せば、渡す相手は信頼に足る人物や、重要な役割を与えられた人ということになる。


「この魔道具、当然もう1つは伯爵が所持しているはずよね。

 ということはよ。私達、そこまで知名度の高くない冒険者でありながら、伯爵と直接連絡が取れちゃうのよね。

 護衛の任務で同行したとはいえ、数日もたっていない冒険者に対して貴重な魔道具を渡すってことは、これ絶対何かヤバいことに巻き込まれるってことじゃない。」


そうなんだよねー。普通なら貴族と冒険者が直接連絡できるだけでもかなりおかしい状況だ。

知名度の高い有名な冒険者ならわかるけど、彼らはまだこれからなのだ。普通はあり得ない。


だが、俺は何となくだが理由は分かる。ステータス画面にあった『王家に連なる者』というキーワードだ。

伯爵は彼女の秘密を知っているからこそ、いつでも連絡がつくように貴重な魔道具を渡したのだろう。

しかし、俺がそんなことを言っても訝しがられるだけだし、敵を作るだけでなんのメリットもない。


俺としては、これを機にダールトン伯爵と連絡を取りたいと思っている。

そこで、少々強引だが、他の可能性を提示することにした。


「落ち着いてください。ライアさん。

 私の推測が確かなら、他の可能性の方が高いですから。

 とりあえず、1つ確認させてください。

 皆さんが護衛していた時に、伯爵とどのような話をしていました?」


カロ達は少し考え込んだ。


「そう言えばさ、冒険者の事を色々聞いてきたよね。

 食事のこととか仕事の仕方とか。」


「ああ、確かに聞いてたな。後は時々新聞に載ってる武勇伝はホントなのか。とかな。

 冒険者と記者の関係だとか突っ込んだ質問まで聞いてきてすごかったわ。

 ありゃ、かなり冒険者に興味津々だったな。」


カロ達の言葉を聞いて、俺はにやりと笑みを作る。

伯爵はそういうつもりで質問したわけではないだろうが、今は利用させてもらおう。


「やはり、魔道具を渡したのは違う意図があったようです。

 今回、護衛に冒険者を雇ったのは魔道具を渡すのが目的の一つだったのでしょう。

 冒険者は依頼終了後、冒険者ギルドに報告に来ますよね。

 冒険者ギルドには冒険者だけではなく、様々な人が訪れます。

 その中でも、冒険者と多く接点を持つのは、情報屋か私のような記者です。」


「なるほどね。私達はいわば伝書鳩。

 伯爵はあなたと接触するために回りくどい手を使ったってわけ。」


そう、記者と接触するために伯爵は冒険者を利用したという可能性を匂わせることが大事だ。

それが真実であるかどうかはどうでもいい。


「まあ、偶然ですけどね。

 それで、伯爵とコンタクトを取らせてもらっても構いませんか?」


「俺はあまり頭は良くない方だが、どうせ何か思惑があって動いてるんだろ。

 裏で何やってるかは知らないが、俺達に関係ないなら裏でなんでもしてくれていいぜ。」


驚いた。これは彼に対する評価を改めないといけないな。

自分でいうのもなんだが、普通はこんな胡散臭い話は警戒して拒否する。

こんなにあっさり許可してくれるとは思ってもみなかった。


俺は礼を言いながら、金貨を1枚テーブルに置く。

カロは無言でそれを受け取った。


「それで、どうやって伯爵に連絡を取るんだ?

 この魔道具の使い方がいまいちわからんのだが。」


「ああ、それには及びません。

 現在この魔道具は使用中です。

 聞こえてますよね。ダールトン伯爵?」


少しの沈黙の後、魔道具から声が聞こえてきた。

『…、どうして聞いているとわかった?』


ビンゴ。カマかけのつもりだったけど、やっぱり聞いてたね。

携帯電話みたいな機能を持つ魔道具だからな。スケベ心だして盗聴してると思ったよ。


恐らく、伯爵はこの冒険者の秘密に気づいている。

そのあたりを匂わせれば交渉できるだろう。

この交渉さえうまくいけば、ミッションクリアまでもう少しだ。

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