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恋猫  作者: Hiei
5/5

お姉ちゃんの変化

お初にお目にかかります。

私、"宵待 詩穂"といいます。お姉ちゃん……じゃなくて"宵待 冬美華"と"宵待 灯真"の妹です。以後、お見知りおきを。


私はお姉ちゃんが大好きです。もちろん家族として。性格はよくブレるし、人から逃げることもしょっちゅうで少し頼りないところもあるけど、根はすごく優しくてかっこいい自慢のお姉ちゃんです。

ですが最近、そのお姉ちゃんが変です。ゴールデンウィークの時からお出かけに行くことが多いのです。それにファッションにもちょっと敏感になったり、誰かと電話していたりと、今までのお姉ちゃんとは思えないことをしているのです。なんとなく明るくなった感じ。

いえ、その……妹としてはそうなってくれたのは嬉しいことなんですけど、ここまで急に変わると逆に心配しちゃいます。何かお姉ちゃんの身にあったのかなって思って……。

双子のお兄……もとい"宵待 灯真"にそのことを言ったら、

「詩穂と同意見。確かに変だけど、別にそこまで変じゃないし、むしろ良いと思う」

と私と全く同じことを言っていました。それにお兄もお姉ちゃんに何があったか知らないみたいでした。

お父さんとお母さんにも相談したんですけど、結果は同じ。


結局、1人で考えることに。

んーっと考えること、1つの仮定に行きついた。それはお姉ちゃんに好きな人ができたということ。

だってそうじゃないと辻褄が合いません?

今までのお姉ちゃんのことを考えると、必要最低限しか外に出なかったですし、ファッションとかそういうのもあまり興味を示さなかったですし……。もうこれはお姉ちゃんが恋しているとしか思えません!

けど決定的な証拠がないので断定はできず……。それでどうしようか悩んで悩んで…………1つ思い出したことが。

電話です、お姉ちゃんの電話。1週間ぐらい前にお姉ちゃんの電話聞いちゃったのです。

いえ、盗聴なんてこと決してしてないですよ!たまたま前を通った時に聞こえただけです!

で、そこで聞いたのは

・お姉ちゃんの体育祭がもうすぐ

・そこに彼氏さん(?)が来る

という事です。……これはもう行くっきゃないですよね!お姉ちゃんの彼氏さんを見に!

え、目的が変わってないかって?そんな事ないです。お姉ちゃんの変わった元凶……じゃなかった、原因を知りたいという目的は変わってません。




との事で、お姉ちゃんの体育祭に来ました。

来て……驚いちゃいました。

なんと、テントテントテント!テントだらけだったのです!普通テントって教員用と来賓用、それに簡易保健室用と3箇所しかないですよね。それが生徒用にもちゃんとあるんです!しかも全クラス分!驚きです!

それに人の数もです!

休みの日になったとのこともあるのですけど、それを差し引いてもたくさんの人がいました。


私が来た時はすでに開会式は終わり、最初の競技に入ろうとしてました。えっとはじめは……100m走。次がハードルで200m走と続いています。お姉ちゃんは何に出るんだろう?

そうこうしているうちに1つ目の競技が終わってしまいました。お姉ちゃんは出てこなかったし、次のハードル走かな?

「あれ?詩穂ちゃん?」

「?」

名前が呼ばれた気がしたので、キョロキョロしていたら

「あ、やっぱ詩穂ちゃんだ」

「わっ!」

後ろから抱きつかれました。え、誰?

「え?え?あれ?」

「ありゃ、混乱しちゃった。おーい、詩穂ちゃん。私だよ、わ、た、し!」

「え?あっ、優姫お姉ちゃん!」

優姫お姉ちゃんです!お姉ちゃんの友達の!

「詩穂ちゃん久しぶり〜!」

久しぶりだからかな?ギューっと強く抱きしめてきます。ちょっと……苦しいです……。

「優姫お姉ちゃん……苦しい……」

「え?あぁ、ごめんごめん」

スッと腕を離してくれました。息をちゃんとしないと……。

「詩穂ちゃん、体育祭来てくれたの?」

「はー、はー、うん、お姉ちゃんのこと気になって」

「そっかー」

"えらいぞー"と頭を撫でてきます。人がたくさんいるから、ちょっと恥ずかしいです……。

「お姉ちゃんいつ出るの?」

「ん?今ハードルだから、もう出るんじゃない?」

「お姉ちゃんハードル走やるの?」

「そうだよー」

お姉ちゃんがハードル走……ですか……。

「お姉ちゃんできるの?」

「できるよ、絶対!冬美華が運動すごいの知っているでしょ?」

「うん」

お姉ちゃん、実は結構運動できる人なんです。天性の才能って言えばいいのでしょうか。とにかくすごいんです!私と違って。

「3レーン、1年8組、宵待さん、赤」

「あ、お姉ちゃん!」

「お、呼ばれたな。近くまで行こうか」

「うん!」

優姫お姉ちゃんに連れられて、よく見えるところに来ました。真ん中にお姉ちゃんがいます。キリッとした真剣な顔つきです。かっこいい……。

「位置について」

合図をする人の声で走る人が陸上競技で出てくるえっと……スターティングブックでしたっけ?それに足をかけていきます。もちろんお姉ちゃんも。

「よーい」

パーンと破裂音がしてスタート。一斉にスタートラインから飛び出して、ハードルを跳んでいきます。

その中で一際目立つ人がいました。お姉ちゃんです!スピードを落とさず、ぴょんぴょんとハードルを"跳び越して"いきます!そしてそのままゴール!だんとつの1位です!すごい、すごいよ!お姉ちゃん!

「おー。やっぱやるなー、冬美華は」

「お姉ちゃんすごーい!」

「あれは選抜に残るな? おーし!私も負けてられないぞ〜!」

「優姫お姉ちゃんも出るの?」

「うん。この後の200m走だよ。もうコールかかってるから行かなきゃ」

「じゃあ応援する!頑張って!」

"ありがとうー"って言って招集場所に行っちゃいました。よーし!優姫お姉ちゃんも応援するぞ〜!


「ん?あれ……詩穂?」




午前の部が終わり、お昼休みです。

私は今……沈んでいます……。当初の目的も忘れて、お姉ちゃんたちのクラスの応援に突っ走ってしましました……。なのでお姉ちゃんの彼氏さんも見つけられず、お昼に……。はぁ……。

とりあえず、お昼食べないと。応援したりして疲れちゃいました。急いで食堂に向かいます。

「う……わ……」

人がたくさんいてびっくりしました。ギュウギュウです。座るところなんてありません。これじゃあ食べられないです。どうしよう……。折角お母さんに作ってもらったのに。

「お?詩穂ちゃん!」

どこからか聞き覚えのある声。探してみると、

「優姫お姉ちゃん!」

「また会ったね〜」

優姫お姉ちゃんです!また会いました。今度は友達もいるようです。

「詩穂ちゃんもお昼?」

「うん。だけど座るところが無くて……」

「ん、じゃあこっち座りなよ」

と隣の空いている席をポンポンと叩きます。いいのかな?座っても。でもいいって言ってるし、いっか。

優姫お姉ちゃんに言われて座って、そこまではいいのですが……一緒のテーブルに座っている人たちの視線が気になります。なんなんでしょう?

「あ、あの……」

「あなた誰?」

「優姫の妹とか?」

「なんか髪つやつやしてるー!」

「お人形さんみたい!」

「えっと……」

皆さん、視線が熱いです……。

「ほらほら、困ってるよ」

「優姫、妹?」

「違うよ。私じゃなくて冬美華のよ」

「宵待さんの妹かー」

「姉妹揃って可愛いなー、ちくしょー!」

「あの……えっと……」

なんか……盛り上がっちゃっているんですけど。

「名前はなんていうの?」

向かい側に座っているショートヘアの似合うお姉さんが聞いてきました。

「宵待 詩穂です」

「詩穂ちゃんか〜。なんで来たの?」

「お姉ちゃんのこと気になって来ました」

「おおっ!姉思いの妹!健気ー」

「やっちゃん、アンタナンパ師みたいだよ」

「え、そう?でも、できればお持ち帰りしたいんだけど」

「アウト」

「あの」

「「「「?」」」」

「なに、詩穂ちゃん?」

優姫お姉ちゃんたちが私の方を見てきます。不思議そうな顔です。

「お姉ちゃんのこと色々聞きたいです。学校にいるときのお姉ちゃんを知りたいです」

皆さんが顔を見合わせています。

「楽しい話をしている中に割り込んだのは悪いことだってわかってます。でも、お願いです!お姉ちゃんのこと教えて下さい!」

頭を下げてお願いします。どんなことでもいい、お姉ちゃんのこと……お姉ちゃんのことを……!




お昼休みが終わって、午後の部です。

あの後、優姫お姉ちゃんたちからお姉ちゃんのことを聞けました。が、お姉ちゃんの変わった原因となるようなことは聞けませんでした。

でも、嬉しいことも聞けました。お姉ちゃんがクラスに馴染んできているみたいなのです!あのお姉ちゃんがですよ。そこは聞けて安心しました。

午後の部の種目が次々と行われていきます。組体操、ダンス、団対抗リレーと。お姉ちゃんもスウェーデンリレーに出てました!速かったです!かっこよかったです!

しかし目的の人は見つからず、閉会式となり体育祭は終わってしまいました。目的達成ならずです……。

答えも出ず、もやもやしたまま学校を出て、駅に着いた時です。

「お姉ちゃん……?」

改札口近くの陰にお姉ちゃんがいました。すぐそばには男の人がいました。これはもしやっと思い、近くの物陰に隠れてこっそりと見ることにしました。お姉ちゃんと男の人が話してます。何を話しているのかな?小さくてよくわかりません。けど、それでもお姉ちゃんの話していることが、気持ちがよくわかりました。

だって、楽しそうなんですもん。私もあまり見ないキラキラとした笑顔です。それにほっぺも少し赤かったです。やっぱりお姉ちゃん、恋してました。

これでやっと変わった原因がわかりました。なので、そこを後にします。これ以上いちゃダメな気がして。

「♪〜」

気分がいいです♪

今日はいい夢が見られそうです!



「詩穂ー」

「なに?お姉ちゃん」

「今日、わたしの学校来た?」

「え、なんで?」

「いやー、詩穂っぽい子がいたからもしかしてっと」

「そ、そーなんだー」

「……来たね」

「いえ……」

「来たね」

「……………………」

「来たね」

「…………はい」

「なんで?」

「えっと……お姉ちゃん、学校大丈夫かなって思ってぇ……」

「……………………」

「心配になって来ちゃいましたごめんなさい!」

「……………………」

「お、お姉……ちゃん?」

「詩穂ーーーー!」

「わあ⁉︎」

「お姉ちゃん、詩穂が妹でよかったー!」

「うえぇ⁉︎お姉ちゃんなんで泣いてるの⁉︎」

「お姉ちゃん嬉しいのー!」

「わっ!お姉ちゃんやめて〜!」



次はお姉ちゃんです!

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