表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

モブの極み

モブの極み ~所詮モブ、されどモブ~

作者: すみっこ

前回の作品があっという間に100Pt到達。

………え?何が起こった?


連載版も考えていますけど、何せ思いつきなモンでどうすれば。

感想待ってます!


「へへっ…勝負するならよぉ、やっぱヒーローらしく終わりたいよな?」

なんだか強そうな剣を構えた主人公が、何ごとか呟き始める。

どこからか風が吹き荒れて危険を察知した他のプレイヤーが身構え始めた。

もちろん、私もである。



こんにちは。モブです。

どういうモブか言うと「お前ホントにモブか?」って言われちゃいそうだから

黙っておくよ。モブだから変に個人情報を公開しても意味無いしね。


今は掛け持ちしているバトル漫画に出演中。

こういうのは、モブでも服とかこだわってくれるし武器も持てるから楽しい。

戦えるからストレス発散にもなるしね♪(にっこり)


でも、反対にやられるのはちょっと嫌。血のりとか落とすの面倒臭いし

泣き叫ぶ演技もそんなに上手じゃないし。選り好みするのは良くないって

知ってるけど、そういうのはちょっとNGにしているんだよね~私……


まあ、モブが一人や二人減ったところで気付く人なんていないだろう。

こっそり帰っちゃおうかな~…モブ界ではよくある事だもんね。



(それに……)



もう一本レギュラーの方にも、行かなきゃだし。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「よう志乃!お前いっつも遅れてんな~」

少女漫画【超平凡に恋したいっ!】の教室にて、真っ先に駆け寄って

真っ先に嫌味なのか違うのか分からない言葉をくれた人物がいた。


主人公・【速水悠斗】である。


なんだかワンコっぽい感じでこっちを見てくるが、何も言わずに黙って見つめる私に

少し不思議そうに首を傾げると、ぽむっと手を打った。


「よし。お前、なんか喋ってみろ。」

「………なんで突然、あっ」

カギカッコが付いていた。

どうやら彼は変な技を取得したらしく、たまにこうしてくれる。

周りのモブの視線が痛いが、ここは多分_____


「悠斗く~んっ。私達にも構ってよぉ~」

ほらきた。『主人公に媚びる事で出番を増やす系モブ』。

今もこうやって何をせずともカギカッコ付きである。スゴイスゴイ。


「そうだよ~っ、そんな地味な子より、うちらといる方が絶対楽しいって!」

特徴その1、ちょっと毒舌。

「ねえねえ悠斗くんっ私リップ変えたんだけど、どうかなぁ?」

特徴その2、化粧が濃い。

「最近流行りの髪型にしてきちゃった♪似合うー?」

特徴その3、モブのくせに髪型に凝る。すごく凝る。


あと声がやたら高いとかスキンシップが激しいとか、他にもあるんだけど

まあいいや。

出番が欲しいのは分かるが、私はそこまでしたくない。


しっかし、こうして近距離で見るのも楽しいよなぁ。

めっちゃヒーローさん(悠斗)困ってるし。私を見ても何も変わりませんよ~?

と、



「どいたどいた!芹架せりかサマのご登場だよーっと」



ぐいっと、いとも簡単に肉壁モブを乗り越え顔を出した人物。

サブキャラである。


「あばばばば?! し、汐田さんっ…?」

「芹!助かったぜ」

「も~、ゆー君が春香ちゃんフッて代わりの子が出来たと聞いたからこうやって

駆けつけてきたんだよー?だと思ったら女子まみれだしさー」



【汐田芹架】。

ヒーローさんの幼なじみで『芹』『ゆー君』と呼び合っている程の仲良し。

『私だって…本当は○○君の事…!』とか言うおきまりの、恋の妨げ役かと

思いきや逆に情報提供屋で、ちょっとマニアックなキャラだ。

(人気ランキングの順位はなんとヒロインを出し抜いて2位である!)


「お~いモシモシ?志乃ちゃんだよね?最近ウワサの。」

「ふぁいっ?! に、人気ランキング2位おめでとうございますっ!」

「うん?有難う?」

「志乃お前いきなりどうした…?」


いきなり褒め称えられた事に困惑しながらもお礼を言ってくれた。

ヤバイ、このままでは第一印象が『ヘンな子』になってしまう。


「えっと、最近ウワサのってどういう事ですか?」

「あらっ気付かなかったの?『ヒーローである速水悠斗のお気に入りモブ子』として

結構な知名度だけれども。」


全校生徒の情報が書き込まれている、通称【閻魔帳】をパラパラとめくりながら

言う。

知らなかった……いや、周りのモブよりかは目立っているんだろうけど、

そこまでとは思わんかった……


「あ、あと媚び系モブには陰ながら応援されてる。」

「何をっ?!」


真実を聞き出そうとしたら、その前にスタコラサッサと逃げられてしまった。

え、待って本当に何を応援されてるの…?去り際に親指立てられたけれども…


「ふっふっふ、志乃ちゃん可愛いもんねえ~」

「お前本当に女の子大好きだな…」

「あら、娘の方のオトコノコでもイケるわよ?」

「あはははは……」


なぜそこから可愛いに繋がるのかが分からないが、ヲタっぽい人って基本そうかも

しれない。

そう……汐田芹架はそういうキャラだ。

(ちなみにヒロインの事は真っ先に『女神』というあだ名を付けた。初対面で。)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


やっとこさ解放され、リラックスして廊下に出る。

皆溜まって、思い思いに小さくおしゃべりをしていた。

やっぱコレだよ、うん!空気の一部っていうか、背景に同化しているこの感じ!


(はぁ…にしてもヒーローさんは、私をどうしたいのやら。)


芹ちゃん(そう呼べって言われた)が自分のクラスに帰った後もヒーローさんは

モブについて、色々聞きたがった。

そんなに知りたいんだったら媚び系モブに言えば手取り足取り教えて貰えるだろうに

なかなか周りから離れず、「お花をもぎにいってくるね!」「そこは摘めよ?!」

の会話でなんとか解放されている。


時間が経ったらまた探しにくるだろうけど、それまでこうやって伸び伸び

過ごせるってワケよ!は~、誰か捕まえて話そっかな~……



「ねえ、C乃ちゃん?」


そういやこの前のバトル漫画の回で、主人公が空振った時は吹きそうになったな。

俺TUEEE!系だからちょっとザマミロと思っちゃったし、まあ敵がそもそも 


「し・い・の・ちゃ・ん?!」

「あっふぁいっ?! ………え?」



そこには、ニッコリ笑いながら仁王立ちしている鈴屋遥香がいた。



一応笑顔だけど、不穏な空気は消せていない。

どこか逃げ込むトコロは無いかと辺りを見渡すが、いち早く気付いた周りの人達は

助けてくれない。

それどころか楽しそうに見物している。




それがモブだ。

所詮モブだ。

でもそのカテゴリに自分も入っている。




「ちょっと……良いかな?」

「_____はい。」


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


連れてこられた場所は体育館裏。

WoW、なんとテンプレ。


しっかし、モブが主人公をシメるのは分かるけど主人公がモブをシメるって

なかなか無いよね。誰か動画撮ってくれないかな~某動画サイトで100万は

狙えそう。


「ふふっ、何をブツクサ言ってるの?C乃ちゃん。」


目の前で、まるで女王のように悠々と腕を組んでいる鈴屋遥香は、まさしく

ヒロインにふさわしい容姿だと近くで直視して改めて思い知らされる。

ふんわりとパーマが掛かった色素の薄い髪、大きな瞳と長いまつげ、桜色の唇、

それからモデルのような体型………



やっぱり、何処からどう見ても不自然でしかない。



「………あの、何か私に用でしょうか。」

「もちろん。でもなきゃ私が、こんな薄暗い場所にいるわけないでしょ~?」

でしょ?と言われても困る。

でもまあ、鈴屋遥香は昔から周りにチヤホヤされてたから、それかもしれない。


「何ニコニコ笑ってるんですか?良いからさっさと済ませて下さい、ヒロインさん」

キッと睨んだ。

それが気に食わなかったのか、段々綺麗な顔が歪んで、それで



「あんたソレ、誰に向かって言ってるの?たかが脇役風情が!」



女神が、本性を現した。


「いーい?あんたはモブで私はヒロインなの!いわば姫なんだよ?! それがいきなり

出しゃばってきて、モブとして恥ずかしいと思わないの?!」

「あの日から周りの人達もどんどん離れていって、私がどんなに惨めな思いを

したか分かる? 分かんないよね?だってアンタは学校一の人気者の悠斗に

ヨシヨシされてるんだもん!いいご身分ですこと!」

「ってかこの世界が何なのか分かってないでしょ?少女漫画だよ?!少女漫画は

ヒーローとヒロインが結ばれなきゃいけないの!それが絶対なの!あんたみたいな

奴と悠斗がなんて絶対駄目っ!!」


さんざん言いたいだけ言って、しまいには水をぶっかけてきた。

今までは、『水なんてぶっかけて苦痛になるのだろうか』と思ってたけど、

結構クるものがある。

でも、今はこんな液体に構ってらんない。色々と言いたい事がありすぎる。


「じゃあ言いますけど。」



反撃、開始。



「貴方は自分の事を姫と言いましたが、そっちの方が恥ずかしくないんですか?

世界は自分のためにあると思ったら大間違い。それと、私が出しゃばってるんじゃ

なくて向こうが引っ張り出してきたんですよ?そんな現状把握も出来ないのですか

お嬢様?」

「貴方がどんな惨めな目に遭おうが、私が知ったこっちゃありません。

貴方がそれまでの人間だったというワケです。あと私がヒーローさんにヨシヨシ

されるとかカッコワラなんですけど。」

「確かに此処は少女漫画の世界です。そしてその少女漫画の定義も認めましょう。

私も何で今こんな事になってるのか分かりませんがこれだけは言わせて下さい。

私が公に出てきたのは、ヒーローさんのオカゲです。なので文句があるなら

ヒーローさんに言ってください。以上!」


ぽかん……


想像以上の饒舌具合に、いい形の唇がマヌケに開いてしまっている。

ふふっ、結構気持ちいいなコレ。

前々からこの人に言いたい事はあったからね、勿論泣かせはしないけど。



「…………貴方は、 」

「!」

「貴方は、悠斗の事どう思ってるの?好きなの?嫌いなの?」

「いやどう思ってるって言われても……」


モブだから全然関係なくて。

モブだから全部が他人事で。



いざその舞台に立つと。



「っ!」

心臓を抑えて蹲った。

「えっちょっ?! どうしたの?! み、水掛けたから?!」

んなわけ無いだろ、と言いたいトコだけど今は声が出ない。

汗が額から吹き出して目眩もする。


「ちょっとC乃ちゃん?! 誰か!誰か来て!」



誰、カ_________



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「起きた?」


ふゎ、と目を開けるとホッとしたようなヒロインさんの顔がすぐ近くにあった。

まつげ長い………すっごく綺麗……


「あの、私、 」

「もうっビックリしたんだからねっ!いきなり倒れちゃって。超迷惑。」

最後のは軽―く、でもちょっと仕返しした時みたいに笑ってそう言った。

やっと意識もふわふわしなくなって辺りを見回す。


「ここは?」

「貴方の家!場所は芹架ちゃんが調査済みだったから運んだの。気付かなかった?

学校が終わってもずーっと寝てたんだよ、C乃ちゃん。」

そうか、もう学校終わっちゃったんだ……


「その様子だと本当に深く眠っていたみたいだね。保健室に悠斗と芹架ちゃんと、

あとモブ子ちゃん達が来たのも知らないでしょ?」

「え?」

「悠斗が『死んでないよな?』ってほっぺプニプニしたのも気付かなかった?」

あの野郎。

「その後私が悠斗に正座させられて10分くらい叱られてたのは?」

あの野郎。


「はぁ……なんかすみません。色々と。」

「いいよぉ。でもこれは一つ貸しだからね?C乃ちゃん。」

ニッコリ笑うヒロインさんを少しだけ睨む。


「____その呼び方、ちょっと嫌味入ってますよね。」

「当たり前じゃん。だって私あなたのコト大っ嫌いだもん。」

チロリ、と可愛く舌を出した。


「でもね、それと同じくらい『仲良くしてやってもいいかな』って思ってる。」

「何様。」

「いいじゃん別に~。私ちょっと腹黒いもん。」

「自覚あったんですか?」

「何でも計算しちゃうの、私。」

「…………。」


どんなに挑発してもサラッと返されてしまう。

『仲良くしてやってもいいかな』っていうのはもしかしたら、本当かもしれない。


「でも、私も貴方のことキライです。」

「あっじゃあ両思いだね!」

「ちょっと違いますよ?!なんで『いいこと言った!』みたいな顔してるんですか!」

「え、じゃあ相思相愛……?」

「『愛』って入っちゃってますけど?! 違うでしょそれなら…そ、相思相嫌……?」

「相思って両思いって意味だよ?」

「う、」


な、なら相嫌相悪で……いやこれじゃどっちも悪者だし…と頭を悩ませていたら、

パタンとドアが開く音がした。


「志乃!大丈夫か?!」

「あれっ何で遥香がいるの?」


ヒーローさんと芹ちゃんだった。

あのですね……不法侵入はご遠慮頂きたく…っていうか確か私の家調べ上げたのって

芹ちゃんだよね?!なんで知ってるの?!背景の一部だよ?!


「そりゃ~私だって新聞部ですから?そのくらい知っておかないとね~」

新聞部コワイ。っていうか部活は関係無いと思います!


「芹架ちゃんったら、どうやって調べてるの?」

「そうですよ!どこからどこまで知ってるのか不安になるじゃないですか!」

「え、じゃあC乃ちゃんには何かヤマシイコトがあるの?」

「違いますモブにはそんな卑猥な欲望なんてありません!」


ワーギャーワーギャー五月蠅い私達に対し、ずっと黙っていたヒーローさんが

不思議そうに首を傾げた。



「お前ら、なんでいきなり仲良くなってんだ?」

「「え?」」



思わずヒロインさんと顔を見合わせる。

「そんなに仲良かったですか?」

「いや、なんか楽しそうだったから」

ちょっとだけムスッとした顔でそっぽを向いた。

ヒロインさんはというと、嬉しそうにフフッと笑う。


「じゃあ、これからよろしくね?C……志乃ちゃん。」

「! はい!これからよろ………」

「………ん?どうしたの?」

握手しようと出した手をそのままに固まった。



部屋には作品の花形とも言うべき美形ヒーローとヒロイン。

ぶっちゃけると主人公より人気が出やすいサブキャラクター。


そして、モブ……1名。


「いやダメでしょっ?!此処に集っちゃいけないでしょ?!」

「え?!」

「モブが囲むのは良いけどモブが囲まれるのはルール違反なんだってば!

カメラ!カメラの中心を変えて!それかヒーローさん場所交替しよ?!」

「なんで俺なんだよ、てかまだお前安静に 」

「やーめーろーしーんーぱーいーすーるーなぁー!! ぺっぺっ!」

「志乃ちゃんの拒絶の仕方可愛い…!私もされたい!」

「芹は少し黙ってろ。」



この状況。人は言う。



「カオスだ」と。










    *


「ヒロインさん!相思相愛がダメなら、相嫌相拒はどうでしょう!」

「あ、いいね!拒絶の拒を使う辺り志乃ちゃんセンス最高!」

「仲良い……のか…?」


カギカッコは、主人公やサブが関わろうと思った人に付くシステムです。

モブに選択権はありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 【ヒストリー オブ ザ モブ!バイ ザ モブ!!フォー ザ モブ!!!】 ワーワー、ザワザワザワザワ ヒロインとモブ子さん、お前ら付き合っちまいなさいよ^_^
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ