第3話 ようやく旅立ち、そしてすぐトラブルに巻き込まれる
お待たせしました。
300年・・・まさかのFWOの未来に来ていたなんて。私は、このことからいくつかの疑問が浮かびその疑問をエルに質問をしてみることにした。
「300年も経っているってことは昔と今とではいろいろと変化したことがあるんじゃない?わかる範囲で教えて欲しいんだけど」
「かしこまりました。少し話が長くなりそうなので、話しやすくなりましょう」
そうエルが口にすると、エルの巨体が淡い光のエフェクトに包まれる。そのエフェクトが徐々に小さくなっていき私達の目の前に病的なまでに白い肌と雪のように白い白髪と紅い瞳に眼鏡といったのが印象的な長身の大人の色気を醸し出した美女が立っていた。
「どうでしょう?ここ数百年の間にこのようなことも出来るようになったのですが?」
エルのあまりの変貌ぶりに私とヒビキは驚いた。この世界に来てから驚かされることばかりだ。ちなみにエルの服装はなぜか体のラインを強調するような黒いスーツだった。眼鏡の知的さも合わさって仕事ができるキャリアウーマンみたいだ。声音から女性・・・メス?だとわかっていたが、設定的におばあちゃんなのかなと思っていたが、美女だったなんて・・・スーツに眼鏡の美女って絶対、運営の趣味を全開にしてるよね?そんなことを私とおそらくヒビキも同じことを考えていると、エルが困ったような顔をしていた。
「どうしました?マスターに妹君、この姿お気に召しませんでしたかな?」
「いや・・・そいうわけじゃないんだけど。・・・そのマスターってやめてくれないかな?たぶん、ヒビキも妹君なんていう畏まった呼ばれ方はあまり好きじゃないと思うんだよね」
私がヒビキに同意を求めるように視線を向けると、ヒビキは、うんうんと同意してくれた。だって見た目からして年上の人にマスターとか妹君なんて言われるとこっちが申し訳なくなってくるし・・・龍の状態ならまだゲーム上の延長線な感じがして許容できたのだけどね。
「そうですか?私としてはこれがしっくりくるのですが・・・ご要望とあれば仕方ないでしょう。シズク様にヒビキ様これでよろしいでしょうか?これ以上は私も譲れませんので」
「まあそれくらいで妥協しておこうかな。早速だけど300年間で起こったことを教えてもらえないかな?」
「私も、ほとんど自分の拠点から出ていないので眷族達から聞いた情報なのですが・・・」
そうしてエルが今まで起きたことを語り始めた。
私達、プレイヤーが姿を消してから最初は混乱が起きたらしいがそれも数年で落ち着いたらしい。しかし、落ち着いたのもつかの間で全ての大陸に異変が起き、大きな地震を伴い大陸が肥大しってったらしい。現在のこの世界ガイアスは私達が知っているものより2~3倍近く大きくなっているらしい。このことを元NPC達は【時代の終焉】と言っているようで、この言葉通りゲーム時代と比べて大きく色々な面で衰退し始めたらしい。転生システムが無くなったのを皮切りにステータスは軒並み低下しているらしい。しかし、極稀に先祖がえりのようなことが起き、今の平均的なステータスを逸脱した人物が生まれるらしい。そして、私達のプレイヤーのことを今の人達は【古の血族】と呼んでおり、先祖がえりのように逸脱したステータスを持つ者を【古の血脈】と呼んでいるらしい。そして、ほとんどの国で【古の血脈】は優遇されているという話だった。【時代の終焉】以降、衰退をたどっているこの世界ではゲーム時代のようにスキルを多く持つ者はほとんどいないらしく、1つ2つ持っているだけで羨ましがられるといった内容だった。
「ってことは私達ってかなりとんでもない存在ってこと?」
ヒビキがそんなことを口にする。ただでさえゲーム時代、トッププレイヤーだった私達だ。PGMの恩恵もあり更に逸脱した存在になっているのは間違いないと考えられる。
「そうですね。シズク様やヒビキ様にメイ様とジュン様あとジン様は、ほとんど伝説上もしくは神のような存在になっていますね。そんな皆様方に仕えている私は誇りに思っております」
エルが満面の笑みでそんなことを口にした。その言葉で軽く眩暈を覚えたのは私だけではないはずだ。と思いヒビキを見ると目を輝かせていた。・・・あっこれはダメだ。さっきまで話していた厄介事には巻き込まれたくないってことを忘れて絶対に面倒事とかに顔を突っ込みそうな顔をしている。私は、ため息を吐きながらエルに自分達のステータスを掲示して質問を続ける。
「今、私達のステータスはこんな感じなんだけど、エルから見てもやっぱり異常だよね?」
そう口にして私達のステータスを見たエルはこれでもかってぐらいに目を見開いていた。なんか、知的な印象がある人が・・・龍だけどこんなリアクションをするとなんか新鮮だなと思いながら見当はずれなことを考えてた。
「これは・・・まさか300年の間にここまでお強くなられていたとは、このエターナルさらに感激をしております。もはや、ヒビキ様と互角に勝負するのが精一杯ですね。シズク様にいたっては、どうあがこうが勝てる気がしません」
ですよね~。ちなみにエルのステータスはこんな感じだ。
名前:エターナル
年齢:325歳
性別:女性
種族:古龍
クラス:古龍王
称号:不滅の龍
ジョブ:なし
主:シズク
ステータス
Lv:255
HP:620000
MP:470000
物攻:5200
物防:4000
魔攻:6200
魔防:3700
素早さ:5300
回避:2100
命中:2900
私とヒビキのステータスを見た後だとそこまで高くないと思えるかもしれないが、そもそもこれがゲーム内で極悪イベントボスとされていたのだから、私達の現在の規格外のステータスがよりわかる。ちなみにモンスターにはジョブや運は設定されていない。運はアイテムなどのドロップ率に関わるステータスなのでモンスターが持っているわけがないのである。
「ちなみに、エルより強いモンスターとかいるの?」
ヒビキがそんな質問をする。
「300年の間、私に挑んで来る人間やモンスターは数多くいましたが、敗北を喫したのは【時代の終焉】の以前にシズク様達だけですね」
やはり時代が経ってもゲーム内最強モンスターと呼ばれていたのは変わりないらしい。なぜなら、エルはHPとMPの自動回復が異常に早く、さらにはFWO内に存在する魔法の基本となる火・水・風・土・雷・光・闇の基本7系統の属性の内、闇を除く6属性に耐性があったからだ。ダメージを与えるのには物理攻撃か闇魔法、もしくは系統外の魔法を使うしかなかった。そのエルに勝てないと言わせる今の私って本当に規格外になってしっまたなと思う。
そんなことを思いながらもある程度聞きたかったことも聞けたしそろそろ出発しようと思う。
「エル、これから私達は【王都アガスタ】に向かおうと思うの。そこで、メイとジュンと合流しようと思って。だから王都の近くまでで良いから乗せて行ってくれないかな?」
「かしこまりました。ちなみにジン様はよろしいのですか?」
「良いの良いの。多分、アイツもこの世界には来てると思うけど向こうから連絡してこないってことは無事なんだと思うし、今のエルの話からするとよっぽどのことが無い限り大丈夫だろうから」
「そうですか・・・」
少し、釈然としないような返事がエルから返ってきたあとにエルが最初のようにエフェクトに包まれ元の龍の姿になる。ジンの・・・幼馴染であるアイツなら大丈夫と思い、私とヒビキはエルの背中に飛び乗った。その直後、ふわっとした感覚を感じると、エルが翼を羽ばたかせ空中へと舞い上がり、王都へ向かい始めた。
◆
<とある少女side>
私は、エーシャ・・・奴隷です。両親はいるのかは知りません。物心がついたころから何人もの貴族に買われて、飽きられたら売られて、そしてまた新しい貴族のところへ。という人生を17年歩んできました。私がいる西の大陸は多くの種族が共存しており、奴隷制度は無いのですが、それでも私のような獣人を奴隷として手元に置きたいという貴族が商人に命令して違法な取引をして売買しているそうです。
今回は、暴力を振るうような貴族は嫌だなと思いながら馬車の中にある鉄格子の籠で前回の主であった貴族に傷を付けられて声が出なくなってしまった喉をさすりながらそんなことを考えていました。
すると、急に馬車が止まり私は王都に付いたのかと思いました。
「やばいぞっ!!どうするっ!?」
馬車の外からはそんな男の人の声が聞こえてきました。多分、商人が雇っていた護衛の冒険者の声だったと思います。
「なんでこんなところにグレート・ウルフの群れが出るんだよっ!?」
「お前達、高い金を出しているのだからさっさとこの魔物を追い払わんか!!」
そんな、冒険者と商人のやり取りが聞こえてきました。ああ、今この馬車は魔物に襲われているのだなと思いました。もし、魔物が冒険者達の手に負えないレベルだったらきっと私は見捨てられる。そうすれば私は魔物達の餌食になり、この辛い人生からようやく開放される。そんな考えがよぎりました。
「悪いけどこんなところで死にたくないいんでね!!とんずらさせてもらうぜっ!!」
「まて、私を見捨てるのか!?」
「おっさん手を離せよ!!」
「「「うわっ!!」」
そんなやり取りが繰り返されたあと、外から聞こえてくるのは悲鳴でした。私は恐ろしくなり、耳を塞いで時間が経つのを待ちました。ついさっきまで死にたいと思っていながらも、いざ死が近くに迫っていると知ると体は正直に振るえ始めました。
(できれば、気づかずにこのままどっかに行って!!)
声が出せない私は心で叫んだ。そんな私の叫びも知らずに、私が初めて見る魔物、冒険者達がグレート・ウルフと呼んでいた狼の魔物1匹が馬車の中に入ってきた。
「グルルル・・・」
元は灰色のような色だったのであろう毛は血に染まり、口元からはゆだれを垂らしながら血走った瞳を私に向けて近づいてくる。平均的な大人の男性より1回りか2回りも大きい巨体は器用に私が閉じ込められている鉄格子の籠を口で咥えて馬車の外に引きずり出した。
外は、血の海だった。私を売り飛ばそうとしていた商人もその護衛をしていた冒険者達も魔物達の餌となっていた。私が入っている籠を引きずり出した魔物はその籠が鉄格子ではなく木か何かで作られたかのように容易く噛み千切り、私を軽く咥えて外えと放り投げた。
「っつ!!」
地面にたたき付けられた私は、痛みから口から息が漏れた。そして、痛みに耐えて周りを見るとそこには10匹以上の狼の魔物達が新たな餌を見ていた。私は恐怖で頭が真っ白になり、生きたままこの魔物達に食われるのだと思った。
私は何のために生まれてきたのだろうか?この魔物達の餌のため?そんなのあんまりだ!この世界の神様は理不尽だ!そんな感情が沸き起こり、普段は信じてもいない神様に対する文句なども浮かんできた。
そして、いざ魔物が口を開き私を食べようとした瞬間に、グチャッ!ともボキッ!ともとらえられる音を立てて魔物はつぶれていた。その潰れた魔物の上には黒と赤を基調とした服を身にまとい、艶のある黒い長髪をなびかせた菫色の瞳に左目の下の泣き黒子が印象的な女性が立っていた。
「うわ~いくら魔物でもなんか生き物の命を奪うって抵抗があるな~。そうだアナタは大丈夫?怪我とかしてない?」
その女性は周りの魔物が目に入らないかのように真っ先に私の心配をしてきた。声を出せない私はとりあえず頷くことしかできなっかった。
「よかった~。私はシズク、直ぐにこの魔物たちを片付けるから安心してね」
シズクと名乗った女性は、私を安心させるためか笑顔を浮かべた。そして、私を背にかばうように魔物達に向かい合った。
その女性の先ほど見せた女神のように優しい笑顔となぜか安心できる後姿を見た私はホッとしたのかそこで意識を失ってしまった。
それが私と女神であるシズク様の出会いとなった。
次話は3月2日に22時に投稿します。
ちなみに、現在登場しているキャラクターの服装は作者の趣味です。良いですよね~特に軍服の女性!わかる人はわかるはずです。次話では戦闘描写がようやくあります。良かったらお気に入り登録や感想をお願いします。