Ⅵ
狼は言った。
「我の名はヴォルグ。半妖だ。フムフム、ヒトラーを殺すか」
ゲダインは「何故分かる?」と聞いた。ヴォルグが怒鳴るように言った。
「この馬鹿者! 言葉使いに気をつけろ。我には読心術の能力が備わっているのだ」
「……凄いな、ヒトラーの心も読めるのか?」
ヴォルグは「まぁあれだ。自分より知能の高い人間の心を解析すると狂ってしまうのだ」
ゲダインはなーんだと思った。
「ねぇねぇゲダインこの子凄い力持ってそうだし一緒に連れて行こうよ! よーしよーしイイ子でちゅねー」
そうニータはさっきの言葉を聞いてなかったかのようにヴォルグをなでなでした。ヴォルグは半分キレていたが、まんざらでもなさそうでニータを信頼したようだった。
「それにしても貴様ら二人は血生臭いな。気分が悪くなる……」
ニータが言った。「ゴメンナサイ。私、人をたくさん殺してきたんです。幼い頃出会ったゲルハルトさんって言う人に暗殺術を学んで。私はその人を師匠として敬っていたから。戦争よりも要人を殺せば犠牲が少なくなるからと言って。私はその思想に傾倒していました。でも今はこの人、ゲダインがいるからもう人は殺しません」
ヴォルグは考え込む様子を見せて、
「哀しみの連鎖か。いつの時代も悪いのは男。泣くのは女だ。それは変わらん」
そう言った。
「戦争を終わらせたいという強い気持ちを持っていればもう人が苦しむ時代に終わりを告げる事も不可能ではない。夢でも何でもない。人はいつか死ぬのだ。どんな形にせよな。さて、どう動く? ゲダインとニータよ!」
ヴォルグの言葉にニータはどうしていいか分からないという顔をしていたが、ゲダインは、
「連邦同盟を解散させるのが戦争を早く終わらせる方法だろう。亜米利加の勝利という形を取るのが一番だと思う」と言いヒトラーを暗殺するプランの一部を明かした。
ニータが言った。
「私、日本人とユダヤ人のハーフなのです。母親が日本人で私にめいっぱいの愛情を注いでくれました。父はいつも何かに責め立てられてるようにいつも落ち着きが無かったです。2人とも私が幼い頃亡くなりました。私を見てはくれませんでした。日本は……負けるのですか?」ヴォルグは、「それが運命かもしれないな」と言った。ニータは悲しそうな顔を浮かべた。




