Ⅳ
彼らはまずドイツの軍部に入隊志願した。まるで人の心を持たないドイツ軍の兵士は殺戮の為に作られたマシーンであったが、ゲダインとニータにとっては居心地の良い場所だったかもしれない。ドイツはその頃相当弱っていてヒトラーの政策に市井は疑問を抱いていた。
ゲダインは言った。
「なぁニータ、あそこに巨大な施設が見えるだろう? おそらく僕はあそこで造られたんだと思う。少し記憶障害があって確かではないが…… 僕はこの国の将来などどうでもいいんだ。早く戦争にドイツが負けてそして日本もイタリアも降伏する。それが僕の描いているシナリオだ。とりあえずこれ以上人間の姿をした兵器を生み出すのを止めなければならない。今日の夜、性急かもしれないが早い方がいい。あの施設を急襲する。ニータ、これは僕がロベルトという男から貰ったお守りだ。聖なる祝福を受けているから君を助けてくれるだろう」
ニータに渡したそれは銀の短いナイフだった。そのナイフはきらっと刀身が光っていた。ニータはナイフを見て言った。「でもこれじゃあ人を殺せない……」ニータのそんな疑問にゲダインはわが子に教えるように優しく、「前に言ったろ。君はもう人を殺す必要はないんだ。殺してはいけないんだよ。僕に任せて」
ニータは神様を見るような目でゲダインを見ていた。「私の事守ってくれますか?」「ああ、もちろんさ。僕のお姫様」そう言ってゲダインはニータの前に跪き、ニータの手の甲にキスをした。ニータは少し恥ずかしそうに身をよじった。




