Ⅲ
超人シュタイナーであり無双戦士ベルセルクであり神剣バルザックであった男とその少女が出会ったのは後のベルリンの壁の辺りであった。少女は男と会うなり抱き付き泣きじゃくった。おそらくその優しそうで遠目がちな目、その男が醸し出している雰囲気みたいな物が自分と似ていると直感的に感じたのだろう。もしかしたら父親に顔が似ていたのかもしれなかった。
「よしよし、よく頑張ったな。その歳で沢山人を殺してきたんだね。僕にはわかるよ。君は血の匂いがする。でも大丈夫。これからは僕が殺すから。君はそうだな……僕の娘になればいい」
男の言葉を聞いて少し嬉しそうにはにかむが何処かバツの悪そうな少女。そんな少女に男は続けた。
「名前はなんだい? ……何だないのか。僕と同じだね。よし僕が名づけよう。そうだな……ニータがいいだろう。古代語で美しき魂と言う意味だ。君はそうか。ユダヤ人だね? 僕らはいずれ殺されるだろう。その前にこの世界をかき乱したくないか? 戦争の埋め草になるのは御免こうむりたいだろう? 反撃するんだ。君と僕で自由と平和をもたらそう。世界全てでなくてもいいんだ。ちっぽけな世界でちっぽけな英雄になるんだ。歴史の裏側でな」
少女は男の言葉にコクリと肯いた。
「僕はヒトラーに作られた人間兵器だから名前がたくさんあるんだ。だから呼び方は好きにしていいよ」
男がそう言うと少女は、「パパ、パパ!」と言って過去がフラッシュバックしたか男を強く抱きしめて離さなかった。まるで自分の父親から受けられなかった愛情をこの男で補うかのように……