XⅣ
「陛下ご英断を! 日本は負けます。私はユダヤ人です。ヒトラーは私が手にかけました。
ムッソリーニも諦めています。理由は言えないのですが亜米利加は日本を焦土にする力を持っています。
日本全国全ての民が死すかもしれません!」
ゲダインは貴賓室に響き渡るほど大きな声で主張した。
「黙れ! この鬼畜米英が! あらかた亜米利加のスパイでしょう陛下。おいこいつを殺せ!」
「待って下さい、この詩を知っていますか?
〝GOD'S IN HIS HEAVEN.ALL'S RIGHT WITH THE WORLD〟」
「〝神は天に在り、全て世は事もなし〟 ロバート・ブラウニングの詩か」
「これは裕仁親王の事を謡っていると思います。どうか降伏をしてください! 貴方が神で居続ける限りジャポンは平和です!」
「私は日本の国主だ。そのプライドと国民の信頼に応えるべきである。1人のユダヤ人の言論や行動に敬意を表す事は無い。ただ国民は私の輩であり親友であり子供である。そなたを信じてみようではないか」
「陛下!」
「黙りなさい! 戦争好きな軍部の馬鹿者よ! この者の目を見よ。青空のようだ。〝Blue Sky〟とはこの事だ。私はこの者の言う事を信じる、信じなくてはいけないのだ。さぁ国民に詫びようではないか。日本は負けたのだと」
1945年3月3日昭和天皇は亜米利加に降伏する旨を国民に告げたのだった。
全ての国民は涙しそしてどこか心の奥底で安堵していた。