XⅡ
ゲダインたちは大統領と副大統領がいるであろう部屋の前にいた。ヴォルグはいろいろあるだろうということで、外に隠れている。
それにしても、ロベルトの口の上手さに驚いた。ぺらぺらとそこに台本でもあるかのように、ゲダインたちのことを説明してくれた。そのおかげで大統領と副大統領との面会が認められた。
「うまくやれよゲダイン」
「ありがとうロベルト君。君は命の恩人だ」
ゲダインはロベルトと抱擁して、部屋をノックした。
「君たちはヒトラーを殺したと言うがその証拠はあるのかね? まさか生首を持ってきた訳ではあるまい」
大統領は部屋に入るなり本題に入った。その言葉にゲダインは気を引き締めた。ここが勝負だ。
ゲダインは「証拠ならあります」とつぶやくと、ポケットの中からハンカチに包んであったものを見せた。
「こ、これはドイツ初代皇帝カイザーが付けていたグングニールの槍を模した勲章ではないか!」
それを見せた瞬間大統領と副大統領は慄いた。
「はい、これをつけているのは総統ヒトラーだけ。価値としても数億ドルをも上回るかと」
「うむむ」
大統領と副大統領はゲダインがヒトラーを打ち取ったと言うことを信じたようだった。
「そこで相談なんですが」
ゲダインは大統領と副大統領が慄いている間に一気に片を付けることにした。
「なんだね」
「核を……廃絶してほしいのです」
「それはできない」
大統領は即答した。
「なぜです」
「ドイツ・イタリア・日本が戦意喪失するまではそれはとても出来ない」
ゲダインはその言葉がもっともだと思った。
「わかりました。私が各地に赴き、戦意喪失させてみましょう」
「なんだと?」
「信じています」
ゲダインは黙って見ていたニータを連れて、引き留める大統領の言葉も聞かず部屋を後にした。
「どうだったゲダイン」
部屋を出ると待ってましたとばかりにロベルトが近寄ってきた。ゲダインは言いにくそうに「大変なことになった」と簡潔に説明した。