XⅠ
がさがさという音が響いた。その音を聞いた瞬間、2人と1匹がびくっとなった。誰かがこの倉庫に来たのだ。
「ニータ、念のためナイフを用意して」
「うん」
音が近づいてくる。ゲダインは息を呑んだ。
「やあ、ゲダイン。やっぱり君だったか」
「ロベルト君!」
その人物は敵ではなかった。というか、ゲダインが良く知っている人物だったのだ。
「いやあ、ヒトラーを討ち取った人物がこの港に逃げ込んだと聞いてね。もしやと思っていろいろ探っていたんだが、やはりゲダインだったか。ずいぶん可愛らしい子と番犬をつれているじゃないか」
「ロベルト君……なのか? なんで」
「まあまあ、とりあえずは腹が減ったろう。これを食べるといい。えっと……」
「この子はニータ。狼はヴォルグ」
「そう、君たちも食べるといいよ。それじゃあまた来る」
ロベルトは食料を置いて、その場を去った。ゲダインたちは空腹だったので貪り食った。
「ジャーナリストとして経験を積んでおいてよかったよ。情報を伝えると言って、ちょっとそれっぽいことを言ったらこの船に乗せてくれた」
「……」
ロベルトはゲダインたちが食べ終わったころを見計らって、再びやってきた。そうして自分がなぜここにいるのか説明した。
ゲダインはそれを聞いて一つの案が浮かんだ。
「なあ、ロベルト君。一つ頼みがあるんだ」
「なんだい?」
「亜米利加の大統領に会わせてほしいんだ」
「…………」
ロベルトはその言葉に険しい表情を見せた。
「頼む。とても重要なことなんだ」
「……仕方ない。ゲダインのためだ」
「恩に着る」
結局ロベルトは折れてくれた。これで行き先が決まった。