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第一話【大佐に告白されました】

「俺はお前を愛している。お前にも俺を愛してほしい」


ここは軍人の詰所。

戦線上位隊剣ノ部(せんせんじょういたいつるぎのぶに配属されてから二週間がたった日のこと。

同室の大佐に告白された。


「…………はい?」


えーっと…これは、アレだ。

多分マジなやつだ。

マジなやつがきちゃった感じだよ。


「一応確認しますが」

「うん?」

「僕は男です」

「そうだな」

「出会って二週間。同室ってだけの後輩です」

「そうだな」

「それでも?」

「俺はお前を愛している。お前にも俺を愛してほしい」

「ノーマルですので。ごめんなさい」

「…っえ!?」


ホモでした。

信頼、尊敬している大佐、まさかのホモでした。

まだ性格すらつかめきれてない段階で言われた事実になんか驚きづらいよ。

…ま、別にどんな性癖をもってても構わない(…か?)けど、それを僕に向けられるのは困る。

ここは丁重にお断りして、しっかり上官と部下らしい絆を築かせていただこう。


「ふられた…のか……?」

「あの…これからも先輩としてよろしくお願いします」

「え…は?」


引っ込み思案な僕は、同室の大佐以外には未だ恐縮してしまい、ろくに話もできない。

だから…大佐とギクシャクするのは、僕にとって死活問題だ。同室だし。

なんとかこの件は何事もなかったかのように収束させないと!


「嘘だ!…そんな受け顔のくせにノーマルだと?ありえねえだろ!」

「なにその勘違い!生まれもったものでそんな特殊な思い込みしないでくれます?」

「ちなみに彼女は?」

「いませんけど」

「好きな人は?」

「特には」

「っし!」

「ならイケる!みたいな空気醸し出されても困るんですが!」


大層な変人だこの人…。

傲慢で、威圧的なところもあるけど、部下からの信頼も厚く仲間思い。

そんな素敵なポイントが勘違いホモというだけでこうも崩れさるか。


「多分お前には俺の愛が伝わりきってないからそんなことを言うんだろ」

「純粋に恋愛対象じゃないからそんなことを言うんですよ」

「今から俺がお前の好きなポイントを言うから、よく聞いとけ」


好きなポイントって…。

ふられたのになんでこんな前向きなんだこの人。

それを聞いて恋心が芽生えることはないだろうけど、まあたった二週間で僕のどこに魅力を感じたのかは聞いておいても悪くは―


「顔と性格だ。以上!」

「よくそれで愛が伝わると思いましたね!漠然としすぎでしょう!」

「…ん、そうかい?じゃあ具体的に言うと、水を飲むときの口の形とかかな」

「今度はコアすぎて伝わらない!人によって違いますかそんなの!?」

「…………フェチなんだ」

「特殊すぎる!!」

「惚れるか?」

「今の流れでどこにときめけと!?」


大佐って…相当すっとぼけた人だったんだな。

戦場にいるときのあの頼りがいある感じはどこに…。


「ときめきか…なるほど、お前はときめく相手を好きになんだな?」

「え?まあ…大体の人がそうかと」

「じゃあときめく台詞を言ってやるぜ」

「え、いや…それはなんか違うような…」


と言うと、少し考えてから怒濤の勢いで愛の言葉を並べはじめた。


「ときめきの天才ときめき大佐は、お前をときめかすために地球にやってきたんだ」

「ときめきなめないでください」

「お前はまるで天から舞い降りてきた天使の一部のようだ」

「一部!?どこですか!?」

「俺はお前のことを考えるともうバニラアイス添えワッフル・チョコソースリボンのことを思い出して胸の高鳴りが押さえられない!」

「甘党なんですね!大佐甘党だったんですね!」

「熱い…お前を見てると右手が…右手がぁ…!!」

「ただの中二病!!」

「…お前が一歩でも動けば、両親の命はないと思え」

「それは違う意味でのドキドキです!」

「七夕の夜は…またこうして会いたい」

「今日七夕じゃないですし。同室だから毎日会えますし」

「水を飲むときの口の形が誰よりも素敵だぜ」

「だからつくとこが微妙すぎてそれ喜べないですって!」

「あ、う…ゃき、にゃ、好きだああ!!」

「ネタギレなら無理しなくていいですよ!」


……ま、まさか上官にここまでつっこむ日がくるとは思わなかった。

幸い気分を害した様子はなく、ときめき台詞をまた考え初めてしまう。


……。

大佐は、僕にとってちょっと特別ではある。

僕は…極端に非社交的で、ネガティブで。地味で。弱くて。

初めてここに来たときは、プレッシャーで押しつぶされそうだった。

でも、そんな中から心のゆとりを作ってくれたのは大佐で。

近くにいて安心できる、ただ一人の仲間で。

今の僕にとって、唯一信頼できる人だから…。

だけど、だからこそ。

今、大佐という存在が凄く大事で…失いたくない。


「大佐…」

「ん?どしたよ?」

「僕は…大佐と愛し合うのは、できないですが…それでも、大佐のそばにいたいです」

「…」

「あなたに嫌われたくない。…部下として、一緒にいたい」

「…………そお」

「そーいうのは、ダメですか?」


ばくばくと波打つ心臓。

これでもし嫌われたら…僕はどうすればいい?


「ダメだな」

「っ!!」


ぁ………。

ダメって…ダメ?

やば、あ…心臓が…もっと…ばくばくして…。

メンタル弱すぎる自分が嫌になる。

腰に力が入らない…足から、崩れ落ちそう…。


「お前さ…俺が今何してるか分かってる?」

「え…こ、告白…です」

「好きだから告白するわけ。だから嫌いになるわけねぇだろ。むしろ愛しまくってるから」

「はあ…」

「だからこそ俺も諦めない。愛しまくってるから」

「え、え?」

「俺は絶対お前を振り向かせる。赤い糸が繋がってねえなら、どんな手を使っても結びなおす!」


キザ!!大佐がなんか急にキザ!

さっきすごいときめき下手くそだったのに!

きっと考えるとできないタイプなんだな…軍人としてそれどうなの。

今のはカッコいい。惚れないけど。


「だから、嫌わねえけど上官と部下としては無理。ぜってえ愛し合ってみせるから。恋人として認めさせてみせるから」


真剣な、大佐の目。

1週間前。大佐は厳しいだけじゃなくて、優しい人だと知った。

今日。大佐は厳しくて優しいだけじゃなくて、ホモで、僕が好きで、ボケボケで、変なフェチもってて…ちょっとキザだと知った。

知れば知る程、よく分かんない人だけど。

僕のことを好いてくれた大佐のこと、僕も知りたいと思った。


「…よく、聞け」


太陽みたいに、ニカッと眩しく笑う大佐。

僕の…憧れの、人。


「お前にはホモの才能があるからっ安心して俺に惚れろ!」

「どうして綺麗に締められないんですか!いい感じできてたのに!」

「…あ?ああ!お前には受けの才能が―」

「だーっ!もうちがあーっう!」


…こうして、同室である僕と大佐の、ちょっと奇妙な関係が始まった。


閲覧ありがとうございます。


オリジナル小説はあまり描いたことなく、BLは初挑戦です。。。!

みなさんが楽しめる作品になるように頑張ります!

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