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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
グロキシニア顕現

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第五十話:同化と代償

光が、弾ける。


白と黒。


感情が衝突する。


ユウリの手と影の手。


重なったまま離れない。


全部が止めどなく流れ込む。


恐怖。


拒絶。


絶望。


「消えたい」


何度も、何度も繰り返される感情。


ユウリの体が震える。


「っ……!!」


重い。


さっきとは比べ物にならない。


ただ“感じる”だけじゃない。


「飲まれる……」


思考が侵食され、境界が曖昧になる。


自分が、どこまでなのか、分からなくなる。


影が言う。


「ほら」


静かな声。


さっきよりも、はっきりしている。


「楽になれる」


甘い言葉。


逃げ道。


「全部、終わる」


ユウリの目が揺れる。


一瞬だけ。


その言葉に、引っ張られる。


その時、声がする。


「ユウリ!!」


レン。


遠くから。


「戻ってこい!!」


強い声。


現実の重さにユウリの意識が、引き戻される。


「……違う」


小さく呟く。


影が聞く。・


「何が」


ユウリが答える。


「終わりじゃない」


踏みとどまり、境界を保つ。


だが負荷は増え続ける。


外側。


巨大な分離体が、暴れる。


空間が崩れる。


レンがレゾナンスブレードでかわしながら踏み込む。


「クソッ……!!」


ギリギリで抑える。


止めないように壊さないように。


制御しながらの戦闘。


エヴァがレゾナンスシューターを空撃ちする。


囮になって、レンを援護する。


限界。


ファリンが叫ぶ。


「長く持たない!」


現実側が崩れる。


時間制限にカイトが歯を食いしばる。


「ユウリ……急げ……!」


その声がユウリに届く。


だが焦らない。


ユウリは静かに息を吐く。


「……大丈夫」


自分に言うと、ゆっくり影を見る。


「消えたいのも」


言葉にする。


「怖いのも、全部、わたしだから」


否定も排除もしない。


受け入れる。


影が大きく揺れる。


初めて崩れる。


「……じゃあ」


声が震える。


「なんで生きるの」


核心にユウリが一瞬だけ考える。


だがすぐに正直に答える。


「分かんない」


想定外の答えに影が止まる。


ユウリが続ける。


「でも」


小さく笑う。


「一緒に探せばいい」


答えを持たない答え。


影の瞳から涙がこぼれる。


「……いいの」


確認するように言う。


ユウリが頷く。


「いいよ」


優しく。


その瞬間、影が崩れ光に変わる。


ユウリの中に流れ込む。


完全な同化。


だが異変が現れる。


「……っ!!」


ユウリの体が跳ね、光が暴走する。


青と黒が混ざりきらずにぶつかる。


「まだ……!」


完全じゃない。


ユウリの容量を超えている。


外側の分離体がさらに暴れる。


現実までもが崩れ始める。


カイトが叫ぶ。


「受けきれてない!!」


限界。


このままだとユウリが壊れる。


その時、カイトの体が揺れる。


再び透ける。


「……足りないなら」


小さく言う。


誰にも聞こえないくらいの声。


だが決意は固い。


「足せばいい」


一歩、前に出る。


デイジーが叫ぶ。


「待って!!それは――」


止める。


だが遅い。


カイトが空間に手を伸ばす。


“書く”。


何もない場所に、言葉を。


「カイトはその存在を補填する」


書き換え。


再び。


自分を削ってでも、ユウリを支えるために。


カイトの体が大きく透ける。


するとユウリの光が、安定し始める。


均衡が戻る。


ユウリの目が完全に開く。


青と黒が完全に混ざる。


新しい色。


深い光。


巨大な分離体が静止する。


そして静かに崩れ、粒子になって消えていく。


静寂。


崩壊しかけていた旧市街区。


だが今は止まっている。


瓦礫は落ちない。


風もない。


戦いの余韻だけが残っている。


ユウリが中心に立っている。


動かない。


その瞳の青と黒が、完全に混ざっている。


以前とは違う深い色。


「……終わった」


小さく呟く。


だが感情は穏やか、静かすぎる。


レンが近づいて呼びかける。


「ユウリ」


ユウリが振り向く。


その動きは、ほんのわずかに遅い。


「……レン」


微笑む。


問題はなさそうに見える。


レンが言う。


「大丈夫か」


短く。


ユウリが頷く。


「うん」


だがほんの一瞬“間”がある。


レンは気づくが何も言わない。


その時。


「カイト!!」


デイジーの叫び。


全員が振り向く。


少し離れた場所。


カイトが膝から崩れる。


そのまま地面に倒れる。


音が、やけに大きく響く。


「おい!!」


レンが駆ける。


ユウリも一瞬遅れて動く。


カイトの体がさっきよりも明らかに透けている。


デイジーがモニターを確認する。


顔が青ざめる。


「……うそでしょ」


震える声。


「存在値……」


言葉が詰まる。


ファリンが聞く。


「何%」


デイジーが答える。


「……92」


沈黙。


一気に落ちている。


レンが歯を食いしばる。


「ふざけんな……」


分かっていたが現実は重い。


ユウリがカイトのそばに膝をつく。


「……カイト」


触れると軽くて冷たい。


まるで、“存在が薄い”。


カイトがゆっくり目を開ける。


焦点が合わない目でユウリを見る。


「……終わったか」


かすれた声。


ユウリが頷く。


「うん」


カイトが小さく笑う。


「そっか」


安堵。


自分の状態には触れない。


レンが言う。


「お前な……」


怒りと焦り。


だが、言葉が続かない。


何を言っても遅いと分かっている。


カイトが言う。


「……大丈夫だろ」


軽く。


だがその言葉に根拠はない。


デイジーが首を振る。


「大丈夫じゃない」


はっきりと。


「この減り方……止まってない」


最悪の報告。


「まだ削れてる」


ファリンが言う。


「……どういうこと」


デイジーが説明する。


「書き換えの反動が遅れて出てる」


時間差。


今もなお、カイトは消費され続けている。


カイトが苦笑する。


「……便利すぎる力は、こうなるか」


他人事みたいに。


ユウリが強く言う。


「止める」


カイトが見る。


ユウリの変わった目。


深く強い。


だが少しだけ、遠い。


カイトが小さく言う。


「……無理だ」


現実のルールは覆らない。


ユウリが言う。


「じゃあ、足す」


同じ答えにカイトが首を振る。


「もうやっただろ」


「それでこれだ」


意味がない。


繰り返すだけ。


ユウリが言葉に詰まる。


正しいが納得できない。


その時エヴァが言う。


「……方法は一つある」


全員が見る。


「“固定”する」


カイトが目を細める。


「……何を」


エヴァが答える。


「カイトの存在そのものを」


沈黙。


危険な響き。


デイジーがすぐに言う。


「それ……!」


止める。


だがファリンが続ける。


「物語として“固定”すれば、削れない」


ルールの抜け道。


だが代償がある。


レンが聞く。


「その代わりは」


ファリンが答える。


「変化できなくなる」


カイトが止まる。


意味を理解する。


「……進めなくなるってことか」


エヴァが答える


「そうだ。“その状態で止まる”」


成長も、変化も、未来も止まる。


ユウリが言う。


「そんなの……」


言葉にならない。


生きているのに、止まる。


それは。


「生きてるって言えるのか」


レンが低く言う。


カイトは少しだけ考える。


そして小さく笑う。


「……選択肢、ねえだろ」


現実を受け入れる。


静かに、だが確実に。


ユウリが叫ぶ。


「ある!!」


初めて、強く感情をぶつける。


「そんな終わり方、ダメだ」


必死に否定する。


カイトを真っ直ぐに見て一言。


「絶対に探す」


強い決意。


カイトが、少しだけ驚く。


そしてほんの少しだけ、笑う。


「……変わったな」


ユウリが言う。


「カイトのせい」


カイトが息を吐く。


「……そりゃ責任重いな」


冗談っぽく。


だがその目は少しだけ、安心している。

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