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プロローグ
『妖魔狩り 月光が君に降り注ぐ1』は既に同人誌にて発行している小説となります。こちら、冊子と同じく全文掲載となりますので、是非読んでいただければ幸いです。
血に塗れていた。
何もかもが。
彼を抱き締めてくれた腕も優しい微笑みをくれた顔も。
もう――ない。
大好きな人たちはどう見ても明らかに事切れていた。
二度と彼に微笑んでくれないし、抱き締めてくれもしない。
最後の温もりだけを残して彼らは逝ってしまったのだ。
届かない場所へ。
そこにあるのは絶望だけだった。
その事実は彼を打ちのめすのに十分だった。
絶望の中、彼は意識を飛ばしていくほかなかった……
それが何を意味するかなど分かるはずもなく……