断水
水というのは人にとって、生物にとって必要不可欠なものだ。
だが、たとえ必要不可欠でなかったとしても人は水を飲むのだろう。
私はそう思う。
天気は晴れ
時期は夏頃で六月でも暑いと感じていた気温がさらに上がり、汗がつらつらと出ると言うよりかはダラダラと言う表現のできる暑さでした。
僕は健康第一を掲げる身ではあるもののやはり昭和や平成の高校生のようには運動に精が出ずだらだらと家でエアコンからの風を受け涼しさを満喫していました。
そんな僕は人よりも違うことがあり、それは人よりも多くの水を飲む人間であるということである。
まぁ人よりも水を飲むなんてそんなの別に珍しくもないと思う人もいるかもしれないが僕から周りを見た時、やはり自分は何か違うなと思う。
例を出すと春の季節、涼しい教室で他の人が飲み物を一本、ここでは650mlの麦茶や水としていうが最初の授業前に学校にある自動販売機でだいたいの学生がこれを利用し一本買っていく。
それを僕は4本買う。カバンの剥き出しのポケット2つに2本、カバンの中に2本と結構な重さでいつも苦労しているがなかなかに喉の渇きというのを抑えるのは難しい話でこれは我慢するしかないことなのである。
そして僕は授業一時間ごとに一本のペースで飲んで行き、四時間目の休み時間にはもう水が無くなってしまうのでまた自動販売機に行き、残りの授業分の水を買う。
これを読んだ人間は胃の中がタプタプになるなと思うだろうが、僕の場合はそうはならない。なんというか水をたくさん飲んで気持ち悪くなるどころか、水を飲んだ清涼感だけしか感じないのだ。
やはり今こう記していても他とは違うんだろうな、変なんだろうなと思う。
そして、一本120円という学校価格の安さといえど平日に六本買うとなるとお金がやはりたくさんかかるわけで、一ヶ月にざっと16,560円程使っていることになる。
それでは、家の水道水をペットボトルに入れて持っていけばいいじゃないかと言う人がでてくるかもしれないが私の家から学校は5kmとあり貧乏で貧困であるために自転車を買ってもらえず徒歩で今の今まで登校しているのである。
学校まで一時間とある道のりを大体6本4kgの水を他の教材、弁当、筆記用具そして今の学校で新しく導入されたタブレット端末とを含め、中高生の通学カバンの平均を考えると約14〜16kgにも及んでしまうそんな重さのカバンを歩いて背負っていくのはどうしても無理な話である。
それで極端な話で断水してみようと思い至ったのである。
淡々と長々と事前情報を書いたがまぁまだ頑張って付き合ってほしい。
そして本題に入るが、この日は平日でメラメラとした日を背に受けながら気を確かにしながら登校した。地球温暖化はますます悪化し、今では地球沸騰化と国連が言い出している始末である。確かにどんどんと上がる気温はいずれ沸騰にまで至ってしまいそうな勢いだがやはり僕のような人間がそんなことを主張したとしても何も変わらないわけで。
少し話が逸れてしまったが歩いて歩いて歩いていると汗がどんどんと毛穴から溢れ出し、まるで滝修行でもしたのかというくらいの装いになった。それをハンカチやタオルで拭こうにも終わりがないのでそれは教室に行くまでは我慢しようと思った。そうやって淡々と歩き続け、やっと学校に着いた時には僕の後ろには雨の通り道のようなものができていた。
下駄箱に行き、靴を入れ三階まで登り教室に入り学友との挨拶も程々に席に着いた。
やはりというかとてもじゃないが耐えられないとても辛い苦痛、喉がズキズキと頭がフラフラとそんな風だった。
僕は初志貫徹の思いでそこをギュッと我慢して授業に迎え打った。
授業に向き合う余裕などなく喉と舌が水が欲しい水が欲しいと求めてきたが、いやだめだとそれを繰り返し繰り返し考えていた。
ふぅ、とやっと授業が終わったと思えば落ち着くどころか喉が燃えるように熱く、口を開き言葉を発そうとするとカサカサとした声で、息を吸い込むと喉にズキズキとした痛みが走った。頭が働かずあぁ我慢しなきゃ水が飲みたいなとそんな思考しかできない機械と成した時、
急にスンとなった。まるで水をなんだような清涼感さえ感じる。頭がクリアな状態で喉も湿潤としていて。その時は急になった自分の状態に疑問を持ったが次の授業が始まりそうだったのでとりあえずは勉強をすることにした。
そこからはまるで何事もなかったかのような、そんな風で喉も渇かないしエアコンのない廊下に出ても暑さを感じない。それにカバンを背負ってもまるで蝶が肩に止まったかのような重さでなにも感じることがなかった。
正直最高だった。
気分爽快、清涼上々。今までにないコンディションに気分が上がりスキップをして家に帰えることができた。
こんなことなら最初から水を飲まなきゃよかった、それにこんなのが毎日続けばどんなに幸せだろうと思い家に帰っても水を飲まず、夕飯の時でさえ水を飲まなかった。扉を閉めることなど気にも留めなかった。
気分がよくてつい、長風呂になってしまった。扉を閉めることなど気にも留めなかった。
自分の部屋の襖を開け、良し床に着こうとした時。
なんだか変な事に気づいた。
布団が持ち上がらないのだ。
どんなに上に捲ろうとしても、力一杯布団を引っ張っても何故か動かない。重みはこれっぽっちも感じないというのに、本当なら軽くぺらと捲れるはずなのに釘で固定されたように動かない。
これはおかしい、自分は大して筋肉がある人間ではないもののここまでとはいかない。
あぁどうしたものかと途方に暮れていると、もしかしたら水を飲んでいないからなのかもしれないと思いついた。
だからといってそれが布団が持ち上がらないということの因果関係に繋がるか分からないがこんなのは行動しないと何も始まらないということで、下のリビングで水を飲みに行った。
時間は深夜で、親は昨日から出張に行っていて一週間はいない。それなのに階段を静かに踏んでしまうのは何故なのだろうか。
この日の階段は機嫌がいいらしくギシギシと怒ることはなかった。気分が良くてつい忘れていたのか扉は開けっぱなしになっている。
確か、冷蔵庫に冷えたお茶があったなと自然に食器棚に手を掛けた。
開かなかった。いや開けなかった、、、、、、、
冷蔵庫に手を掛け引っ張るが開かない。
水道の蛇口を回そうとしても動かない。
おかしい、長風呂する前には扉は開いたのに
長風呂する前には
長風呂した後は?
先日未明、〇〇県〇〇市で、16歳の少年が自宅で死亡しているのが見つかり、警察は餓死の可能性が高いとみて調べている。死亡したのは〇〇さん(16歳)で、発見当時は干からびたような状態だった。
〇月〇日、近隣の住民からの連絡を受け、警察が〇〇さんの自宅を訪問。玄関で倒れている〇〇さんを発見し、死亡が確認された。遺体は完全にミイラ化しており指先には爪がない以外には目立った外傷はなく、室内には食料がたくさんあった。
警察は死因を特定するため司法解剖を行い、保護者や関係者から事情を聴いている。