1巻13P_ぶしつけものの事、1巻13P_大名の内の者
○ぶしつけものの事
卑賤な身分として貴人を恐れず敬うこともない人を「へつらいがない人」として褒める人がいる。全くの間違いである。
それは礼儀知らずなだけのぶしつけ者である。
貴人に対してはいかようにも敬うことを礼というのである。
自分の欲得のために敬意を払うべきでない人を敬うことを「へつらい」というのだ。
武士がすることではない。貴人を敬うのはへつらいではなく、礼である。
○大名の内の者
大名家中の者が公方の家臣に敬意を払うのは、家臣その人に敬いの気持ちを向けているわけではない。
公方の威勢に畏敬の念を抱いているからである。
したがって、富裕層で身分の高い大名家中の者で、陪臣である公方の家臣を侮って敬意を払わないものは、公儀を恐れない者であるということである。
人々は公方の馬・鷹にさえ畏怖して会釈をするのに、公方の家臣たる人間に無礼を働くことはないのだ。
また、公方の家臣は陪臣で本人の身分は高くないとしても、大名家中の者に卑屈な態度を取ってはならない。それは主人である公方の威勢を落とすこととなるからで、よくよくわきまえなければならない。
しかしながら、相手も自分も侍という身分なので、決して無礼を働いてはならない。
○ぶしつけものの事について
色々と耳に痛い言葉です。
知らないことと物怖じしないことは、子供と大人の違いでもあります。
個人レベルではできても組織の中にいると忘れられる態度でもあります。
○大名の内の者について
貞丈の祖先は公方(将軍家)に仕えていたので公方側の視点で語られています。
大企業で働いているからといってその人が偉いのではなく、外部の人は背後にある組織を見ているにすぎないのだという訓戒です。
どちらも現代社会に通じるというのが何とも言えません。