1巻9P_膝行《しっこう》
膝行とは、膝で歩き這って進んだり退いたりすることである。
貴人の前に行く際や近くにいるときには立って歩くことは無礼である。
貴人の近くまでは立って歩き、そこから先は座って手をついて膝を使って這って進む。
三手三足くらい這い進むのである。退くときも同様である。
<『吉部秘訓抄』に「膝行三度とは、まず左膝を進める。次に右膝を進め、そして左膝を右膝のところまで進めて膝を揃える。次に左膝を進め、そして右膝を同様に揃える。」と書かれている。
また、『達幸故実抄』に「寿永2年4月8日灌仏会の日に、膝行三度まず右、次に左、次に右と進めて膝を揃えて落ち着き座る」と書かれている。
また、『新注弁官抄』に「膝行は、一説には膝を板敷につき、引き進みゆくことが普通である。」と書かれている。>
【頭書】膝行三度とは『玉海』に「安元2年3月25日酉の刻に、束帯を着て膝行三度、まず左、次に右、次に左と合わせて三膝進める。ただし、最後は右膝を引き寄せて左膝に揃えるものである。」と書かれている。
明記されてはいませんが、手を着いて行う膝行・膝立ちで行う膝行の2種類の膝行について記載されているものと思われます。
茶道では手を着いて行う膝行を「いざる」と呼んだりします。
膝立ちで行う膝行は、合気道などでも「膝行」と呼んで行っていますが、ここでは武道のようなダイナミックな動きよりもゆったりとした動きが要求されているように見えます。