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1巻8P_左膝立つる故実
古くは貴人の前に伺候するとき、左の膝を立て右の膝を伏せて座ったものである。
『宗五一冊抜書』に曰く、「人を饗応するときは、左の方の膝を立てる。座るときは膝をきちんと畳んで整えるのである」云々とある。
単に座るだけのときは左膝を立てて座るが、酌をするときは右膝を立てておくものだと、『条々聞書』『酌並記』等に書かれている。
現代では、片膝を立てて座るのは無礼とされているが、古は片膝を立てるのを礼としたのである。
【頭書】『条々聞書』の「使者が心得るべきこと」の条に「先に打診して対面の席があるならば、中座(なかざ。座の中央)に行って片膝を立ててかしこまって座るものである」とある。
今日の居合道では、「立膝」「具足座り」などと呼ばれる座り方として武道に特化した形で伝わっています。
しかし、ここでは武道とは関係なく座り方の1つとして書かれていて、絵巻物でも武道的なものとは異なる形で描かれています。
また、ここでは左膝を立てるとしていますが、1巻21P_左右の膝立居の事では別の故実が書かれていることに注意が必要です。