1巻P153_襟をしぼる事、1巻P154_りんをさす事、1巻P154_二ツ襟・三ツ襟に着る事
○襟をしぼる事
「襟をしぼって着る」とは、上に着る小袖の襟で、下に着る小袖の襟が外から見えないように重ねて着る(※原文「つつみて着る」とある。三角になっている後ろ襟を下の着物を包むように折り込み、重ねることで下の着物を見せない意か。)ことをいう。
【頭書】一説に、「襟をくるむ」とは、上に着る小袖の襟で、下に着る小袖の襟が見えないように重ねて着ることをいう。
また一説には、「襟をしぼる」とは、先述のように重ねて着るのではなく、襟の縁を別の布地で縁取ることをいう。これを「りんをさす」ともいう。
『女房衣装次第』には「袷・襟・袖などをしぼらないのを「ぬめの袷」といって将軍には着せないものである」と書いてある。
更に一説には、襟・袖の縁を別の色の布地を縁取ることをいう。「りんをさす」というのも同様である。
『条々聞書』には「織色の袷であれば、襟と袖とをしぼるものである」云々と書いてある。
○りんをさす事
小袖・袷などに「りんをさす」または「りんをとる」とは、「ふくりん(※覆輪の意か)をとる」といい、袖・襟・裾などの縁を別の色の布地で縁取ることである。
○二ツ襟・三ツ襟に着る事
「二ツ襟に着る」「三ツ襟に着る」とは、まず通常、着物の前を合わせるときには下の着物と上の着物を重ね着するのにそれぞれ別に着込むものであるところ、上下を重ねて一度に着込んで前を合わせることをいう。これを「幾ツ襟(※この「幾」には枚数の数字が入るものと思われる)」という。
たとえば、三ツ襟といえば3枚の着物を1つに重ね合わせて着ることをいう。
『条々聞書』には「三ツ襟に着るというのは、子供や若者らがその襟を色美しく見せるために行っているものである。また、老人が多く重ね着するために行うこともある。しかしながら、普通に(別々に着込む)着るのが良いものである。」云々と書いてある。
弓を射るときは、片肌を脱ぎやすいことから男も一ツ前に合わせる(※○ツ襟に着ると同義)。
また『宗五一冊抜書』に「袷は数に入れない。二ツ襟(2枚に重ねて前を合わせること)は無礼である。「一ツ襟袷」とは、小袖と袷とで一ツ前に合わせることである。」と書いてある。
袷と小袖と2枚重ねて前に合わせても、普通に別々に着込んでも、袷を数に入れないのでこれらは「一ツ襟」ということになる。
【頭書】『女房故実』には「女中衆は小袖を一ツ前に合わせる。男は一ツ前に合わせない。通常はこのようにしている。しかし弓を射るときなどは特別に一ツ前に合わせるのである」云々と書いてある。
『伊勢常真記』には「袷が古くなっているときは、その下に帷子を着るものである。若い人は襟(※ここでは首の後ろの襟)を巻いて、老人は襟を内側に折り込んで着る」と書いてある。「襟を巻く」とは、上に着た袷で下に着た帷子をくるむようにして着ることである。
公家装束の衣紋においていう「一ツ襟」「二ツ襟」とは異なるものである。束帯のときは天皇もその臣下も下に着るものは一ツ襟に着る。衣冠のときには、三位以上は二ツ襟とし、四位以下は一ツ襟とする。
『貞丈返答書』に書いてあるように、一ツ襟とは、いくつ重ね着しようとも上着の襟で下着の襟を包んで1枚しか着ていないように見せて着ることをいうのである。
襟、襟、襟、と素人の自分が読むには辛いものでした。そもそも襟の形など気にしたことがあろうか……?
しかし、このような細かすぎることについて言語化して記述を残すことの重要性を見直さざるを得ません。
この中でも分かりやすいのが二ツ襟・三ツ襟でしょうか。2024年の大河『光る君へ』の服装を見ると女性の襟元にグラデーションがあって美しいことに気が付きます。
男はしないものですが、例外的に弓を射るときにははだけさせるため襟を一ツ前にすることがあるようです。また、袷は一ツ襟袷として数に入れないので、襟を合わせることを妨げないようです。
紋付き袴を着ている人に、袷として襟を合わせて着る人と襟を合わせないで着る人とがいますが、どのような区別で着ているのか気になるところです。




