1巻P72_近世小笠原流の事
1巻P72_近世小笠原流の事
2024年4月27日(土) 16:21
近頃の江戸では婚礼において、
・勝色(※黒色又は黒に近い濃い藍色。P151に「かちん色の事」がある)の裃と勝色で無地の熨斗目の着物を着て、腰に筋があるような織り方になっているものを「こしあき」と言って忌避すること。
・三日の祝の餅は古からある風習だが、その餅の数を580個と勝手に決めて「かます」という物に入れて、婿と舅の使者が出会ったときに途中で入れ替えるということ。
・そのときに鯨尺を取り替えること。
・「かつらめ」という女が婚礼のお供をすること。
・「とどわげ」という女(悪魔払いともいう)を婚礼に呼ぶこと。
・嫁が輿入れする時に婿の家の門内で打合せの餅と親夫婦が餅をつくこと。
・嫁入りの日に嫁の輿を前後逆に担いで出発すること。
・柳樽に「屋内喜多留」と書きつけること。
・お召替えの輿に筒守・這子・犬張り子を乗せて戸を開いて人々が見物することに備えること。
・鴛鴦の襖・長まくらなどという物を作ること。
と言われ、これらのほか、変わった決まりごとが多い。
これを小笠原流であるという。
小笠原の先祖は信濃の国の大名であったので、その国の習俗であろうか。古の京都にはなかったものである。
これらのことは、我が家の家伝には存在しないことである。
もしも他人からこれらのことについて尋ねられたとしても、「家伝にないことなので存じ上げません」と答えよ。
先述の変わった決まりごとを行ってはならない。世間に流行っているからといってその真似をしてはならない。家伝を守れ。
近頃は、水嶋卜也という浪人が小笠原流を名乗って根拠のない嘘の決まりごとを弟子に教え、世間に流行させている。
世間もこれらの嘘の決まりごとを実行し、もてはやしている。
現在では江戸の人間はこれらの嘘の決まりごとを行うのが普通になっている。
決して水嶋卜也などの真似をして根拠のない嘘の決まりごとを創作してはならない。
家伝にないことを他人から尋ねられた場合は、「知らない知らない」と答えよ。
水嶋卜也を現代でいうマナー講師とみなし、その真似事をしてはならないと子孫を戒めています。
しかし変な作法とはいえ、それらを行えることは町民文化の平和と豊かさを示しているのでしょう。




