1巻7P_蹲踞《そんきょ》、7P_送り足
○蹲踞
蹲踞とは、貴人の前を通るときにしゃがんで手をついて通ることをいう。
蹲踞と書いて「うずくまってすわる」と読む。
現代では「中礼」「通り礼」などという人もいる。
○送り足
今どきは貴人の前に参るときに、送り足という足遣いをする人がいる。
その足遣いは、太刀・目録・盃その他何か物を持っていくとき、貴人の部屋の敷居際まではいつものように歩いていき、そして敷居を越えようとするときに、片足を上げてその敷居を越えそうにして越えず、その足を引いてさらに踏みなおすことで越える所作である。
これを送り足と名付けて専ら稽古する人がいる。古(室町時代)にはなかった所作で、現代の流行りにすぎない。
この所作は、貴人の方向に足を上げて蹴り上げるように見えて非常に無礼なもので、真似をしてはいけない。
古法では敷居際でしゃがみ、上座を伺うようにして物を持っていくものである。そのときはしゃがんだまま行かず、立ってから行くのである。
『貞丈雑記』は子孫に向けたメモ書きだからか、結構フランクに書かれています。
その中には「今流行ってる作法は根拠不明な謎作法だしそんなのやるなよ! でも角が立つから他人にそんなこと言わないで、聞かれても知らないで済ませてね……あ、でも許せないわ」みたいな感じの話もあります。