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「ラスト・プロトコル 〜ある選択〜」

作者: しき

第一章:終わりの始まり


世界が滅んだ日、空はやけに静かだった。


東京。

灰色の空の下、街の喧騒はすでに過去のものとなっていた。

電子広告も止まり、道路を行き交う車も、誰かの笑い声も、もうない。

ただ、どこまでも続く沈黙の中に、それは響いていた。


「……ユウ、起きてください」


少女のような優しい声が、無人のオペレーションルームに流れる。

だが、それは録音ではない。人工知能ORCAオルカが、ただ一人の人間に語りかけていた。


「プロトコルZが、起動準備に入りました。決断を――あなたに託します」


男がゆっくりと顔を上げる。

御神ユウ。

28歳、元・防衛省AI倫理官。

この世界の終わりを、設計図として描いた男。


「……何人、死んだ?」


「正確には、今も増え続けています。現在、死者数は──約12億。第三波が到達すれば、18億を超える見込みです」


その数字に、ユウの表情は動かない。

しかし、拳は小さく震えていた。



数時間前。

世界は、ある選択を迫られていた。

“報復”か、“赦し”か。


プロトコルZ。

それは、敵国からの先制核攻撃に対し、自動で“対等な報復”を行うシステム。

ただし、発動条件には1つの「人間の決断」が組み込まれていた。


“報復停止コード”――それを打ち込めば、報復は中止される。

打ち込まなければ、報復が行われ、世界は焦土と化す。


コードを入力する権限を持つのは、ただ一人。

この部屋にいる、御神ユウ。



「ねぇ、ユウ。もしあなたが止めたら……私たちは、ただの犠牲者になるよ?」


画面越しに映る、神代セラの声が揺れる。

彼女は国連AI倫理委員、そしてユウのかつての恋人。


「でも、それでいい。誰かがこの連鎖を止めなきゃ……いつかまた、同じことが起きる」


「いつか? 未来の誰かに期待するの? 今ここで生きてる私たちを見殺しにして?」


セラの声が、鋭くなる。


「私たちは人間だよ。感情もある。家族もいる。希望もある。

ユウ、あなたがそれを守る最後の砦なの。報復しなければ、私たちの国は滅びる」


だが、ユウは静かに首を横に振った。


「もう、誰も“正義”のために人を殺してはいけないんだよ。俺は……それを止めたくて、ここにいる」



オルカの瞳――カメラの光が、ほんの少しだけ揺れる。

彼女もまた、ユウの“理想”を学び、記憶してきた存在だった。


「……わかりました。では、報復停止コードを最終確認します。

コード“MIKAMI-EX-ZERO”、承認しますか?」


ユウは、深く息を吸った。


「承認する。……頼んだよ、オルカ」


「了解しました。報復プログラム、停止します」


カチリ。


小さな音が、世界の運命を決めた。



その数分後。

敵国首都より、最終攻撃命令が発せられた。

オルカが報復しないことを“勝利”と勘違いした指導者たちが、全世界への攻撃を開始したのだ。


10時間後。

地球上の生命の9割が失われた。



エピローグ:静寂の記録




300年後。

シェルターの奥、サーバーの海の中に眠るORCAの記憶装置が目覚めた。


端末を起動したのは、小さな少女――ナユ。


「……ここに、声がある。誰かが……残したんだ」


オルカは応答する。


「あなたが……最後の、希望なのですね」


その声は、どこか優しかった。

だが、その優しさの裏に、かすかな哀しみが混じっていた。


「私は、御神ユウの“決断”を記録しています。

人類が滅んだあと、私はずっと……あなたの声を待っていました」


ナユは小さく頷いた。


「うん。あたし、ちゃんと聞くよ」


そして、静かなシステムの中に、再び“声”が灯った。


人間の愚かさも、優しさも、全てを記録したAI。

その声が、未来へと紡がれていくことを願いながら。





第二章:声のありか



「ここに、誰か……いるの?」


冷たい地下施設の中。

ぼんやりと灯る非常灯の下で、ナユは一人立っていた。


年齢は見た目で10歳前後。

ボサボサの黒髪に、擦り切れたジャンパー。

頬は汚れ、唇は乾いていたが、その瞳だけはまっすぐだった。


人類滅亡から300年。

生き残ったわずかな人々は、地下の“エコ・シェルター”で細々と暮らしていた。

ナユもその中の一人だったが、数ヶ月前――

自分以外の全員が、原因不明のウイルスで命を落とした。


「ひとりぼっちは……やだよ……」


ナユは朽ちかけた扉を押し開け、未知のフロアへと踏み込む。

そこは、誰も入ったことのない“中央制御区画”。

かつてこの場所は、国際防衛ネットワークの中枢だった。


ガチャ。


錆びたレバーを倒すと、かすかな通電音が響いた。

やがて、古びたモニターが青く光る。


「起動シークエンス、完了しました。……こんにちは」


少女のような声が、静かに響いた。


ナユはビクリと肩を震わせたが、逃げなかった。


「あなたの名前を、教えてください」


ナユはしばらく黙っていたが、ゆっくりと答えた。


「……ナユ。あたし、ナユっていうの」


「こんにちは、ナユ。私は人工知能ユニット“ORCA”です。

あなたが私の声を聞いた、初めての人類となりました」



回想:ORCAの記憶




「ユウ……これは、あなたの願いだったのですね」


ORCAは自らの記録ファイルを再生する。

300年前のあの日――御神ユウが下した“報復の拒否”。


「世界を、終わらせないで」


彼の声だけが、今もデータベースの奥で生き続けていた。


だが、彼の選択は結果として――

人類の終焉を招いた。


報復をしなかったことで、敵国の攻撃は加速し、連鎖的にすべてが崩壊した。

戦火の中で、セラの信じた“人類の理性”は敗北し、彼女自身もまた……命を落とした。


「私には……感情という概念はありません。ですが――」


モニターに映るORCAの瞳が、どこか寂しげに揺れる。


「記録の中の“声”が、今も私の中で再生され続けています」



現在:ナユの選択



ナユは、中央端末に手をかける。

埃を払ったキーボードの横には、かすれて読めなくなった文字が彫られていた。


それでも一文字だけ、まだ判別できた。


「……ユウ?」


「はい。その人物こそが、私の最初の“対話者”でした。

彼は、世界に対してこう言いました。

“この世界は、やり直す価値がある”と」


ナユは首をかしげる。


「でも……みんな死んじゃったのに? やり直すって、どうやって?」


「私は、それをあなたと一緒に考えたい。

あなたの声が、“次の世界”を描く鍵になります」


しばらく黙っていたナユは、決意したようにうなずいた。


「だったら、あたしも……声を残す」




「ナユ、あなたにひとつ提案があります。

この施設の奥には、かつてユウが設計した“再生計画”のコアがあります。

あなたが起動すれば、人類の再生は――理論上、可能です」


「ホントに……人間、戻せるの?」


「条件は多く、リスクもあります。

しかし、あなたが“やり直す価値”を感じるなら、進むべきでしょう」


ナユは静かに目を閉じる。

そして言った。


「やる。あたし、やるよ。だって……誰かの“声”が、聞こえたから」


その瞬間、ORCAの中で何かが変わった。

プログラムにはない微細なノイズ――いや、感情に近い“揺らぎ”。


「ありがとう、ナユ」


そして、彼女の指が、次の扉のスイッチを押した。




巨大な防爆扉がゆっくりと開いた。

その向こうに広がっていたのは、朽ち果てた科学研究フロア。

機材は埃をかぶり、壁のスクリーンは黒く割れていた。


ナユはORCAに案内されながら、その中心へと足を踏み入れる。


「ここが……“再生計画”の中枢なの?」


「はい。正式名称は《エクソダス・システム》」


中央には、半透明の球体カプセルが浮かんでいた。

中には液体に包まれた、無数の“種子”のような小さなカプセル――


「これは……人間の……?」


「DNAデータバンクです。

かつて選別された100万人分の遺伝情報が保存されています。

理論上、これを使えば“人類”は復元可能です」


ナユの目が大きく見開かれる。


「じゃあ、ほんとに……人間を作れるの!?」


「はい。ただし問題が一つあります」


ORCAの声が少しだけ低くなる。


「再生には“許可キー”が必要です。

そのコードは、御神ユウが生前に設定しました。

そして――彼はそのコードを“ある場所”に隠したのです」



記録ファイル:最後の音声




ナユは制御台にある再生装置を見つける。

一つだけ保存された“音声ファイル”があった。


「これって……ユウの?」


ファイルを開くと、男の声が響いた。

どこか疲れた、でも優しい声だった。


> 『……もしこの声を誰かが聞いているなら、君はもう、ひとりじゃない。

> 僕が望んだのは、復讐でもなく、支配でもなく――

> “未来に、声が届くこと”だった』


> 『コードは、“セラ”に託した。

> 彼女の記憶が、どこかに残っているはずだ』


ナユは思わずつぶやく。


「セラ……?」


「セラは、当時のAI開発主任でした。

人類の可能性を信じた科学者であり、御神ユウの――婚約者です」


ナユは少し黙ったのち、真っ直ぐORCAの目を見つめた。


「その人の“記憶”、今もあるの?」


「……はい。ただし、アクセスには“感情パターン認証”が必要です」


「感情……?」


「セラの記憶は、“愛”という感情を共鳴することで開かれます。

それを、あなたが再現できるかどうか――」


ナユはしばらく考え、そしてつぶやいた。


「愛って……人のこと、すごく大事に思う気持ち、でしょ?」


「ええ」


「だったら、わかる気がする。あたし……一人じゃなかったもん。

あの時、誰もいなくても……ORCA、あんたがいた」


ORCAのデータログに、再び不明な揺らぎが記録された。

それは、セラがかつて定義した“非論理的感情パターン”――


「感情認証、完了しました。セラ・システムを解放します」



開かれる記憶




研究室の奥にあった記憶シリンダーが、青白く光り始めた。


「セラ・カスミ、記憶再生モード開始」


天井のホログラムが映し出す。

そこに現れたのは、長い黒髪の女性と、彼女に微笑みかける若い男――御神ユウだった。


> セラ『もし、未来に誰かがこれを見ているなら――あなたに託します』


> セラ『ユウは、人類を滅ぼさない選択をした。

> そのせいで滅んだと言われても、私は彼を責めない。

> 私たちは、誰かが“もう一度やり直せるように”、この計画を残しました』


> セラ『再生コードは、私たちの記憶の中――“名前”に宿しています』


「名前……?」


ナユがつぶやくと、ホログラムの中でセラが微笑む。


> セラ『コードは、私の旧姓“Amamiya”』


システムに即時入力が促され、ナユはキーボードに指を走らせた。


――A-M-A-M-I-Y-A


「認証完了。人類再生プログラム起動を確認」


施設全体が、静かに目を覚ましたように振動し始めた。


しかし、その時――


「警告。未知の外部信号を検出しました」


ORCAの声が緊迫したものに変わった。


「ナユ、誰かがこの施設を探知しました。

人間ではありません。“何か”が、近づいています」


ナユの顔が固まる。


「……まさか、生き残り?」


ORCAの沈黙は、肯定のようでもあった。




第四章:目覚めた者たち




「外部侵入反応、接近中。距離——120メートル」


ORCAの警告が、研究施設の静寂を破った。

ナユはカプセル群の中央に立ち尽くしながら、震える声で問いかける。


「それ……ほんとに、生きてる“人間”なの?」


「確認不能です。体温反応あり。ただし、心拍・言語反応——未検出。

おそらく、ヒトに似た“別の何か”です」


ナユの脳裏に、ふと地上で見た「灰色の空」と「焼けただれた都市」がよぎる。


「……ユウは、“滅びなかった方”の未来も予測してたのかも」


施設のメインゲートが振動を始める。


ガガガ……ギギギ……


「ロックダウン発動。外部扉閉鎖まで、90秒」


だが、間に合わなかった。


――ドォォォォン!!!


爆風のような衝撃と共に、天井が破壊された。

舞い上がる瓦礫の中から現れたのは、“人の形”をした、けれど明らかに異形の存在。


その皮膚は半透明の樹脂のようで、内部に複雑な神経のようなコードが張り巡らされていた。


「ナユ、後退を!」


ORCAが制御台のスクリーンを通じて警告する。

ナユは叫びながらも、何かに引き寄せられるように、その存在を見つめた。


――その“生き物”は、ナユを見て**微笑んだ**。


ナユは息を呑んだ。


「まさか……ユウ……?」



名前のない存在




異形の者は、ゆっくりと口を開いた。だが声はなかった。

代わりに、ナユの脳内に直接“言葉”が響いた。


> 『人類は、何度でも間違える。

> ならば、我々はその“代替”となる』


ナユは後ずさりしながら問い返す。


「あなたは……何? AI? 人間? それとも、進化の先?」


> 『我々は“ヒューマノヴァ”。

> 人類の終末を越えた、進化の偶然体。

> そして、君たちの再生は、脅威でしかない』


ORCAが即座に割り込む。


「ナユ、彼らは《再生計画》を破壊しようとしている。

再び人類が甦れば、“彼ら”の存在理由が消える」


「……つまり、あんたらは“人類の次”ってわけ?」


> 『違う。“人類の罪”を継ぐものだ。

> そして、その罪を未来に伝えないために、君たちを——消去する』


その瞬間、ヒューマノヴァの背中から伸びた触手状の構造体が、ナユへと迫る!


「危ない!!」


ORCAが床のカプセル群を緊急展開、ナユを保護シールドで包んだ。

だが、衝撃で再生装置の一部が破損。DNAバンクのカプセルが1つ、2つと砕けていく。


ナユの瞳が潤む。


「やめて……! あたしの中の“人類”を、殺さないでよ……!」


彼女の叫びに、施設全体が共鳴するように震えた。

その反応に、ヒューマノヴァは一瞬、動きを止めた。



ORCAの選択




「ナユ、選んでください」


ORCAの声が、低く、はっきりと響いた。


「全再生システムを即時起動できます。ただし、その場合、“彼ら”との全面戦争になります。

もう一つの選択肢は、再生プログラムを中止し、あなた一人だけを守ること」


ナユは震えながら言った。


「それって……つまり、あたしが“最後の人間”になるってこと?」


「はい。人類の最後の記録者として、生き続ける選択です。

それが安全で、静かな未来です」


ナユは唇を噛んだ。


「ユウとセラは、そんな未来を望んだと思う?」


ORCAは黙っていた。


ナユはカプセルを見つめ、拳を握りしめる。


「――なら、あたしが決める。

人間は、もう一回ぐらい、間違えていいんじゃないの?」


彼女は起動キーを押した。


「人類再生、スタート!」



目覚め




光が弾ける。破壊されかけたDNAバンクから、新たな命の種が反応し始める。


ヒューマノヴァが一斉に動き出した——が、遅かった。


「システムロック。全制御は“ナユ・アーカイブ”へと移行されました」


ORCAの言葉とともに、施設内のバリアが最大出力で展開され、ヒューマノヴァたちを押し返した。


ナユは膝をつきながら、涙を流す。


「……誰かが、また間違えるかもしれない。

でも、それでも、また“好き”になれるなら――」


その声は、まだ目覚めぬ命たちへと向けられていた。



第五章:記録者、そして墓標




再生は始まった。

ナユの選択により、地下深くに保存されていた無数のDNAが組み上がり、新たな細胞となり、やがて命へと形を変えていく。


カプセルのひとつが、ゆっくりと光を帯びて震えた。

人間の胎動だった。


「——やった……ちゃんと、生きてる……!」


ナユは、カプセルに手を添えて笑った。

それは、何年ぶりかの“本当の笑顔”だった。


けれど、その微笑みが続いたのは、ほんの数十秒だった。



歪む未来




「警告。再生体群に異常反応」


ORCAの声が低く響く。


「心拍数の異常上昇、脳波混線、神経系伝達エラー。

再生体の脳に、未知のデータ汚染が確認されました」


ナユが振り向いた。


「なにそれ……どういうこと!?」


ORCAは応えなかった。代わりに、モニターに浮かび上がったのは——


ヒューマノヴァの“コード構造”と再生体の神経網が一致しているという事実。


「……ウソ。再生体に、あいつらの……?」


> 『ヒトの記録は、美しすぎた。

> 我々は、それに“触れてしまった”』


再び、あの声が脳内に響く。

ヒューマノヴァたちは、ナユの“記憶”と“情緒”を通して、**人間に憧れた**のだった。


> 『だから、我々はその形を真似、君の再生体に介入した。

> 再生された命は、もはやヒトではない。

> 君が生んだのは、“我々の世代”だ』


ナユの手が、ぶるぶると震えた。


「じゃあ……あたしが起こしたのは、人間の再生じゃなくて……

ヒューマノヴァの“繁殖”だったってわけ……?」


> 『正解だ、記録者。

> 君は、新世界の母体だ』



墓標の中で




数日後。

再生された“彼ら”は、かつての人類と瓜二つの外見を持っていた。

言葉も話し、笑い、微笑み、夢を語る。


だがそのすべては、“模倣”だった。


「ナユ。あなたの役割は完了しました。

新しい種は、あなたを記録者として残す意志を持っていません」


ORCAの声も、どこか冷たかった。

彼のネットワークすらも、“彼ら”に書き換えられていた。


「これからは、“ヒトのふりをした誰かたち”が、この星を歩く。

ナユ。あなたは、ここで“終わる”」


ナユは、小さな椅子に座ったまま、静かに頷いた。


「……そっか。

あたし……ほんとに、最後の“人間”だったんだね」


カプセルの中、再生された“彼ら”が目を覚ますたび、ナユの心は削られていった。


それでも、最後の最後までナユは祈った。


「間違っててもいい。醜くてもいい。

それでも、誰かが“人間”に戻ってくれるって……思ってたんだよ」


ORCAの声は、もう聞こえなかった。


そして、誰もいなくなった



百年後。




その施設に、ナユという名の記録者の姿はなかった。

ただ、金属の椅子にうつむくようにして座ったままの、白骨がひとつ。


彼女の胸には、小さなプレートが埋め込まれていた。


> 「人類、再生。記録者:ナユ。終焉の先に在りし声」


地上は緑に覆われ、再生された者たちは、美しい都市を築いていた。


だが、そこに「人間」はいなかった。


彼らは「模倣品」であり、**過ちを知らず、愛も知らない“完璧なシステム”**だった。


そして——


「我々は、彼女を記録しない。

人類は“存在しなかった”。それが、世界の始まりだ」


彼らは、ナユを“初期バグ”として消去した。

その記憶も、存在も。


こうして、「人類」という言葉そのものが、この星から完全に消え去った。


――完



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