表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
第一話「アンユの日記」
5/42

オニギリ効果

エピソード4

お腹がカユい……。


 正確に言うなら、お腹の「中が」痒い。

まるで、蚊を何百匹も飲み込んで、胃の中を刺されまくった後のような感じがする。

その感覚は、土から虫が這いあがる様に、私の体の中を上っていき、食道がかゆくなり、口の中がカユくなり。

そのまま顔や頭、首から下へと、全身が痒くなる。


かゆい。カユい。痒い。――。




「スゴクかゆい!!」


 自分の寝言にびっくりして、飛び起きる。

意識が覚醒すると同時に、ひどい頭痛を感じた。

そして、これまたひどい吐き気とも闘いながら、なんとかして上体を起こした。


「うぅ……。完全に飲みすぎた……。」


 やっとの思いで、ベッドから足を下ろすが、私はしばらくの間、頭を抱えることになった。


えーと。……昨日は結局、どうなったんだ?


 今、私の目に映る見慣れたカーペットから察するに、どうやら自宅には帰れたらしい。

重い頭で記憶を手繰る、……が。

浮かんできたのは、とにかく料理がおいしかったという印象と、腹立つウサギのキメ顔だけだった。


 一瞬、このまま会社を休んでしまおうかという考えがよぎるが。


さすがにそれは、人としてダメダメすぎるな……。


 と、私は最悪の気分のまま、のそのそとスーツに着替えて部屋を出ることにした。




「ふふっ。やっと起きたのね?」


 リビングに出ると、お母さんが「あなたの状態はお見通しだ」と言わんばかりの顔で声をかけてきた。


「昨日は、帰ってくるなり玄関で寝ちゃって、大変だったんだから。」


 言うには、お父さんが酔いつぶれた私を背負って、ベットまで運んでくれたらしい。


「そうなんだ。……お父さんは、もう出たの?」


 一応、お礼というか謝罪をしようかと思って、聞くと。


「今日は、配送先が多いからって先に出たの。私ももう出るけど、『コレ』。お父さんから。」


 そう指し示されたテーブルの上には、父の筆跡で「二日酔いの時は、無理してでも腹に入れろ。」と書かれた紙と、絶妙にでかいおにぎりが皿に乗っていた。


「でもお父さんも、なんだか嬉しそうにしてたよ。」


 と言う母を見送ってから、私は、彼らしさがあふれる無駄にでかい梅おにぎりを噛み締めた。




「うーん。昨日食べたアレ何だったんだろう?」


 午後が近づく頃には、父のオニギリ効果もあってか、体調は落ち着いていた。

そんな中、かすかに記憶が残っていた「花のおひたし」が気になって。

空いた時間を使って、システム管理用のデータベースを覗いていたのだが。


食べられる花どころか、新種の植物すらヒットしないなんてあり得る……?


 コロニーが建設されて以降、外に広まる病原菌に対する危機感は、当然高まった。

その為、ドーム内で栽培される植物や、育てられた家畜など、あらゆるもののデータが調査され、この第一管理センターに集積されている。


 しかし、新種の植物が研究されているという記録そのものが、見つけられなかった。


「アンユさん?さっきから調べ物でもしてるみたいだけど、仕事は順調?」

「あ!はい。……今後のためにもどんな作物があるのか知っておきたくて。」


 二日酔いで出社した、という負い目を感じて、とっさにごまかしてしまった。


「勉強もいいけど、明日の会議で使う資料がまだ送られてないんだけど?」

「あぁ!すみません。すぐに作成しますっ。」


マスターに直接聞けばいいか。


 完全に自業自得であることは棚に上げ、今日も今日とて、ストレスを積み重ねては、帰りにまたあの店に行こうという思いを募らせていった。

エピソード5も投稿いたしました。

事前の予告では月~金曜に投稿としていましたが、土曜日にも投稿することといたしました。

ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ