表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
最終話「最後の対話、そして……」
42/42

あなた

エピローグ

 月。

それは、世界を写す鏡。

一面、銀に輝く砂が広がり、どこまでも、どこまでも、ただ地平が広がっている。

私はそれを、上空から眺めていた。


 私が、その傷一つない、まっ平らな大地へ向かって手をかざす。

すると、もはや私が意識するまでもなく、私を取り巻く桜達は、月を覆いつくしていく。


 銀の砂地を、薄紅の平原へと変え、浸食し、根付き、姿を変化させていった。


まるで、夕陽が沈む海みたい。


 きっともう、地上へ私の想いは届いていないのだろう。


「そうだね。……とても綺麗だ。」


 でももう、私は一人じゃない。


さぁ、始めようか。


『「新しい世界を。」』


 カルラと共に、海に飛び込む。

見えるすべてが薄紅色になって、深く、深く、沈んでいく。全てと私が一つになって、溶ける。

私の見えるものが全てであり、全てのものが私になる。

その海の中心で、私は子供の様に丸くなって、瞳を閉じる。


 世界はまどろみ、そして、眠りについた。




 私は夢を見ている。

世界には光が溢れ、そして、人々は希望を抱いて生きている夢を。

決して楽な事ばかりじゃないかもしれないけれど。

それでも、幸せになる為に、それぞれ、当たり前の人生を歩んでいく。


 ある人は家族と、あるいは恋人と、そして一人で暮らすものもいたが、それでも隣人と関わりながら、それぞれの幸せのために懸命に生きていく未来を。




「ねぇ、アンユはどんな世界を創ったの?」


 世界を漂い、ただ見つめるだけとなった私の中で、カルラの声が響いている。


ふふっ、それはね――。


 結局私は、ほとんど全て、かつての地球で起こったことを再現することにした。

私達は、生まれる事が無いけれど、それでもこれまでの世界を無かったことにはしたくなかったから。

植物が栄え、動物が住む世界を広げていく。そして「病」が誕生する。

ただ、私の持つ「ポーレン・アレルギー」の力をほんの少しだけ、皆に分けてあげることにした。

病を体に取り込んだ時、その原因を知って、理解し、対処する力を、生き物すべてが持てるように。




 だけど、私は、たった一つのイタズラをした――。




 もしあなたが、何かに疲れてしまって、くじけそうになった時は思い出してほしいんだ。

きっと、生きていくのは大変で、もしかしたらあなたの持つ免疫の力で、苦しむことだってあるかもしれない。

でもそれは、あなたが何かを理解し、立ち向かう力になってくれるはずだから。


 もし、あなたが夜に一人ぼっちで、空を見上げた時。

――二足歩行で、はしゃぐウサギの姿が、月に浮かんで見えたなら。


 思い出してほしい。

あなたが今、見ているものにも、物語があることを。

沢山の人が、あなたの今に繋がっていることを。




あなたには、「私の気持ち」が分かるはずだから。

ご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。


参考文献

「創世記」より「ノアの方舟」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全話拝見しました。 まずは完結おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。 もうすごく感動しました……!登場するキャラが皆いい人(ウサギ)ばかりで、「人との繋がりっていいな」と改めて思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ