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アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
最終話「最後の対話、そして……」
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そして

エピソード40

 そして、深夜0時がやってくる。

私がこの塔にやって来てから、13日目が始まろうとしていた。


 私は塔の屋上で、縁に座って夜風を浴びながら、足を放り出してバタつかせる。


 遠く下方に、街並みが見える。

塔のみんなも、今日はほとんど街へ繰り出したようだ。

マスターと、二人の娘さん達だけが、観測室に残っている。


「お父さん達はまだ起きてるのかな。」


 第八居住区にも、まだちらほらと明かりがついているようだ。


「アンユさん、こちらの準備は完了しています。いつでも、どうぞ。」


 スピーカーから、マスターの声がする。


それじゃ、始めましょうか。


 私は思考する。


「エレベーター解放。開始します。」


 観測係さんが、エレベーターを操作して、地下へと続く大穴を通す。

塔の中から、轟音が響いて、その形を最終形態へと変えていく。


「解放完了。アンユ、打ち上げ準備できたよ。」

「アンユさん、わたしも記録準備完了です。」


 二人の娘さん達から、サインが贈られる。


「よかった。司書さんも一緒なんだね。」


 私は一人でつぶやくと、呼吸を整え、皆に伝える。


よし!お願いします!!


「ドーム解放まで、10秒前。9、8、7――。」


 ドーム全体が轟き、解放の準備が始まった。


「6、5、4――。」


「カルラ!!お願い!!」


 私が叫ぶと、カルラは地下のサクラ達に指示を出す。

遠く地下の底から、全てのサクラが駆け上がってくる気配がする。

サクラは射出口となったエレベーターを埋め尽くすように昇る。


「3、2、1――。」


 サクラがもうすぐ目視できる高度まで上がってきたことを感じると、私は息を吐きながら、射出口へと飛び込んだ。

すぐに、私の体は受け止められて、サクラと一体となって空へと飛び立っていく。


「0!ドーム解放!!」


 マスターに見守られながら、私は、空へ、外へ、未来へ向かって進んで行く。


行ってきます!!




 ジパングを覆っている屋根が開かれる。

その先に広がる「宇宙」へ向かって、私は打ち上げられていく。

無数のサクラの花びらを身にまとい、かつて人類が宇宙への船として使っていたロケットのように、あるいは天へと駆ける龍のような姿となって、私は上へ上へと昇っている。


「アンユ、ドームを抜けたら辺りを見てごらん。それが、君たちの住む、地球の姿だ。」


 私の中にいる、カルラの声がする。


大丈夫だよカルラ。……私は私で、ここに思い入れがあるから。


 言葉にはせず、心の中で彼に応える。


地球最後の姿を、一緒に見てから旅立とう。


 天井を抜け、これまで吐き続けていた呼吸をゆっくりと整えていく。

それに合わせて、サクラの龍も上昇をやめる。




 私の遥か彼方の足元に、これまで暮らしていたジパングのコロニーが見える。

真ん中には、巨大な塔を持つ「中央0区」

その真北にあるのがコロニー全体を管理する「第一地区」。

0区の北東に「第二」、東には「第三」と円を描くように続いていって――。

――最後の北西、第一の隣に浮かんでいるのが、「第八地区」。

あそこが私の生まれたところ。




 これまで島々を覆っていてくれたドームはもう、花のように開かれている。


「まるで、大きな蓮の花みたいだ。」


 私の心内を察してか、カルラがいつになく詩的な表現をする。


うん。でも、もうあんなに小さく見える……。


 少し感傷的な気持ちも浮かんだけれど、もう引き返せない。


さ、いつまでもこうしていられないし、そろそろ行こう。みんなに私の「声」を届けて。


 カルラに伝えると、私は大きく息を吸い込む。

そして、開かれたドームへ群がるように浮かんだ、おびただしい数の桜の花びらに呼びかける。


「みんな!私と一緒に新しい世界を作ろう!!」


 声に答えるように、桜達は空へと舞い上がる。

今の私を形作る、龍と一体となって、私の元へと駆けつける。


 龍はさらに質量を増して。

地球全体を覆っていたすべての桜が、私と一つになる。

彼らを引き連れて、「私」は再び、天へと進み始める。


 私は加速する。

速く、早く、はやくなって。

光をも超えて、進み続ける。




 これが、私たちの生きた、地球の最後。

 最後のエピソードも投稿いたしました。

よろしくお願いいたします。

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