お世話になりました
エピソード38
私が最後の対話から帰ってくると、もうそこに大樹の姿はなくなっていた。
その代わりのように、私の目前には、大量の花びらが山のように積み重なっている。
そして、私の両手には、一つの種が握られていた。
カルラ、やっぱり用意してくれたんだ。
「うん。今なら、君の見てきたものが分かるから。」
一つになった私とカルラは、全てのものを共有している。
だから、私がこれからするべきことも分かっている。
「さぁ、あなたに活躍してもらうよ。」
花の山に埋もれかけた、人形を引っ張り出して、私は種を飲み込ませる。
すると、ただの土塊だったはずの「コイツ」は動き始める。
サクラもコイツを取り囲み、その、皮膚となり、毛皮となって姿かたちを整えていく。
そして、ついには、私のよく知るウサギの姿になって浮かんでいた。
「ねえ、あなたにお願いがあるの。」
「……。」
「あなたにも、私の記憶が分かるでしょ?」
ウサギが、目を開ける。
「そう、あなたは過去に行って、私の知る歴史を作り出して。」
「……。」
ウサギはピョンと跳ねあがり、サクラの山を登りだす。
サクラと溶けて、時空を超え、そして、全てをこの瞬間に繋げるために。
何度も滑り落ちそうになりながら、崩れるサクラの山を登っていって。
「ねえウサギ!!」
叫ぶと、ウサギは頂上から、こちらを向く。
「……。」
「引っ張ってでも、私を『ここ』に連れてきて――!!」
私がウサギにかけるべき、最後の言葉は、すでに決まっていた。
「――アンユッチとの約束だから!!ネっ?」
渾身のキメ顔で送りだす。
「……いってくるス!」
ウサギはサクラの山に潜り込み、そして、姿を消した。
「次にすべきは……。」
カルラが私に語りかける。
「うん。サクッと済ませちゃおう。」
そう言うと、私は思考する。
塔の皆さんにお願いです。本日深夜0時にドームの開放を行います。準備をよろしくお願いいたします。
さあ、これで私は待つ事しか出来なくなった。だからせめて、みんなに笑顔になってもらおう。
あと、お腹空いたんで、コック長さんはご飯の準備をよろしくお願いいたします。すぐ行きます。
こうして、私は地下空間を出る。最後となる暗闇を抜けて。
エレベータにたどり着き、私は何となしに振り返る。
「お世話になりました。」
地球の大地に頭を下げて、エレベーターの扉を閉めた。
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よろしくお願いいたします。




