一家団欒
エピソード31
「まさか、こんなことになるなんてねぇ。」
「ほんとそれね。私も良く分かんないまま、流されてた感じなんだけど。」
親子3人で、お茶をしながら、出来る範囲の近況報告をした。
「でも、アンユが政府筋に入るなんて驚きだったわ。」
「就職AI診断の結果が間違ってたんだろ?そんなことあるんだな。」
二人は、ウサギが誤魔化したと言った通りの情報を信じていた。
「あの時は、第一管理が最適だったけど、その後もっと向いてる能力があるってわかったっていう感じなんだ。」
だからまぁ、あながち嘘ってわけでもないのかな?
少しの罪悪感はあったが、不必要に二人を不安にしたくもなかった。
「それにしても、色々急でびっくりしたんだから。」
「それはそう。いきなりセンタータワーで生活しろって言われて私も参ったよ。」
「前の日なんて、酔いつぶれてた癖になぁ。」
そうだった。あの日は朝に父と話すことも無く、今の生活に移ってしまっていたから。
「そういえば、あの時はありがとね。オニギリも効果覿面だった。」
「だろう?二日酔いの時は、ちゃんと食べたほうが軽くなるんだよ。」
「あの時の夜、お父さんうるさかったのよー。『アンユにもついにお気に入りの店ができたぞ、これはお祝いだ!!』って自分も酔っぱらってるもんだから。」
そんな状態でも、私を部屋に運んでくれたんだ。
「母さんだってそう思ってただろう?」
「それにしても、近所迷惑だった。」
なんだかんだ、仲睦まじい二人の姿を見て、私も嬉しかった。
「ふたりってさ。どんな風に出会ったの?」
だから、本題に入るにはちょうど良かった。
「な、なんだよ急に?」
「いいじゃん。教えてよ。」
「お母さんは、今でも騙されたと思ってるわよ~。」
「なに、どゆこと!?」
私の知る二人からは、想像の着かない回答だった。
「騙されたとは人聞きの悪い!」
「だってそうじゃない。最初は、私が働いてる文具店に、お父さんが配送で来たのがきっかけだったの。」
今では、大きなデパートに努めている母だが、当時は街の文具店で、子供相手に販売をしていた。
そこに売っている商品の搬入で、父がトラックに乗って現れたという。
「本当は、搬入口に段ボールを置いてもらって、それを後から私が倉庫に運ぶ風になってたんだけど、お父さんが配送の時は手伝ってくれたのよ。」
「えー、じゃあお父さんからアプローチした感じなんだ?一目ぼれってやつ?」
私がからかうと「やめろよ~。」と言いつつも嬉しそうに笑った。
「お母さんは、父さんのどこに惹かれたの?」
「そうねー。はじめは『親切な人だなー。』くらいにしか思ってなかったんだけど……。」
ある時、搬入を手伝う父のところに、買い物に来た小学生が集まってきたことがあったという。
「その時、子供達と一緒になって遊ぶところを見て『なんかいいなー。』って思っちゃったのよねー。」
私の知る父も、変わっていないと思った。
父は、私も含め、子供と接するときは、屈託なく笑う。
「そのあと、お父さんから『今夜、僕のお気に入りの店に行きませんか?』って誘われたんだけどさ。」
母は、その時のことを思い出しているようだった。
「あー、ダメ、今思い出しても、笑っちゃうわ。」
と、口を押えた。
「なんだよ~。」
不服そうに、父は返すが。
「ふふっ、だって、あのお店、どう考えても――。」
ついにこらえきれずといった風に、母は笑いながら話す。
「――お父さんには似合わないような高級店で、ふたりともテーブルマナーも分かんないような感じで、オドオドしながら食事したんだから。」
「いいだろ、べつに!俺だって格好つけたかったんだよー!!」
二人の世界に入り、今でもこうして笑いあえることは、とても尊くて特別なもののように私は感じた。
「でも、それだけ私のことを思ってくれてるのかなぁって勘違いしちゃったのが、私の運の尽きね。」
「今だって、そこまで悪くないだろ~。」
二人は今も、変わらず、幸せでいてくれてよかったな。
こうして、私が生まれるまでの物語を聞きながら、久しぶりの一家団欒を過ごした。
続きも投稿済です。
よろしくお願いいたします。




