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アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
第七話「四度目の対話」
30/42

赤裸々

エピソード29

 この日の午後、私は実家に帰る手筈になっていた。


「さあ!それまでに二人のあま~いお話を、洗いざらい話してもらいますよ。」


 休憩室の机にコック長とマスターか、居心地悪そうに座っていた。


「ほんっとうに話さなきゃダメなんですか?」


 コック長はまだその覚悟ができていないようだった。


く~、嫌がられると余計に期待が膨らむ~。


 コック長は、端末を見ると。


「いがいとアンユさんってSっ気強いんですね……」


 と落ち込んだ。


「私のお話は、特別面白いところはありませんよ?いわゆるお見合い結婚というものに近いですし。」


 マスターはすでに観念したようで、まずは自分だ、と話し出した


「私の血筋は、代々所長を引き継ぐ役目を担ってきました。ですから、子を成せるようになると、自動的にその時遺伝子的に適任となる相手と結婚をすることにが決まっていたんです。」


 マスターは平然とした様子で続けた。


「アンユさんからすると不思議な話なのかもしれませんが、我々の多くはそれが当たり前だったんですよ。」


 管理者達はその成り立ちから、綿密な計画の元、「繁殖」してきたのだという。

能力と、遺伝子的な相性のみを基準として、塔のシステム維持に最適な「人材」を繋いできたのだ。


「結婚が外と比べて早いのも、不慮の事故を防ぐ、いわば『スペア』を確実に残すための戦略なのです。」


 はじめは私との常識の違いに驚いたが、話を聞くうちにそれがここでは当たり前の文化として成り立っていることを気づかされた。

そこで私は、聞いてみた。


「でも、そこに恋愛感情が生まれたりもするんですよね?」


 すると、マスターは少し狼狽えて。


「ま、まぁ。当然そういった場合も多かったのだと思いますよ。」

「あー、その言い方。マスターもそうだったんだ~。」


 嬉々として、つつくと。


「え、えぇ。そういうことになりますね。」


 と、マスターは顔を赤くした。


「マスターは、どんなところが好きだったんですか?」

「あ、あ~そうですね。彼女は、とても知性的な方でしたので、そういったところなどはとても魅力的に感じています。」


 私は、マスターの言葉尻を捕らえた。


「『など』ってことは、一番好きなところは他にあるんですよね?」


 いたずらに詰めると、マスターはグっと顔をゆがめて、それからすぐに頬を緩めた。


「ははっ、そうですね。」


 そして、少し目を細めると、本当に、愛おしそうに言った。


「いつも冷静な彼女が、ふいに見せるあたたかな笑顔が、私は今でも大好きです。」

「あ~。ギャップ萌えだー。」


 私が茶化すと、コック長さんがツッコんでくれた。


「いや、そんな風にジャンルで括らないで下さいよ。それにしてもホント、赤裸々に言うんですね……。」

「そうですよ?これも大事な情報収集です!」


 昨日のマスターから大義名分を得た私は留まることを知らなかった。




「君の話は、とても面白いですからね?」


 マスターも自身の分を終えて、重荷が下りたようだった。


「ちょっと、やめてくださいよ~。ま、まぁ、確かに特殊ではあるかもしれませんけど……。」


 二人に詰め寄られて、コック長も降参と言わんばかりに両手を上げた。


「コック長さんは、お見合いじゃないんですか?」

「あー、……これって、本当に言って良いんですか?」


 なぜかマスターに確認を取ると。


「アンユさんには、全部知ってもらいましょう。」


 と、マスターは珍しく意地悪な顔をした。


「はぁ……。わかりましたよ。ボクも最初は結婚相手が決まってたんです。」

「え?まさか、反故にしちゃったとか!?」

「反故って言うと聞こえが悪いですけど。お互いそういった感情は無かったので、特例を認めていただいたというか。」


 コック長はバツが悪そうに頭を掻いた。


「え?えっ?そのお相手って私も知ってる人ですか?」


 ドラマのような展開に私は食いついた。


「それは……まぁ。」

「えぇ、えぇ。アンユさんもよーくご存じのお相手かと思います。」


 マスターはとても楽しそうだった。


「誰です?誰です?」

「どなたでしょうかねぇ~。さぁ、ご自分の口で語っていただきましょうか。」


 すると、コック長はうなだれて。


「言いますよ、もー。えーとですね、その。……司書さん、でした。」

「えぇええええ!!それってつまり、マスターの娘さんの『あの』ですよね!?」


 こらえきれずといった様子で、マスターは笑った。


「はい。『あの』私の娘ですよ。」

「それって良いんですか!?ていうかマスターも笑ってて良いんですか?」


親として、どんな気持ちなんだそれは!?


「当人同士がそうしたいと決めたことでしたから。それに、今だからこそ、彼の恋を応援してあげたかったんです。」




 コック長は、司書さんとの結婚が決められていた。

最初こそ、そういった定めとして、二人は受け入れようとしていた。


 しかし、私の存在が確認され、つまり、この塔が存続する意味が希薄となりつつあった、その状況において、変化が現れた。


「わたしには、恋愛感情というものが、希薄なのかもしれません。」


 司書さんは、ある種の決意を持って、コック長に打ち明けた。


「ボクも、あなたの気持ちには気づいていました。それに、計画の終わりが近い今となっては、この『しきたり』も意味は無いよなって思ってたんです。」


 こうして、二人の婚約は破棄された。

その後、コック長の中でも、ある異変が生まれていた。




「それからしばらくして……その、なんというか、気になる人?が、出来まして。」


 コック長は、この塔でも数少ない、外の住人と交流がある人物だった。


「第5酪農区で生産されたお肉を、いつも運んでくれる方が要るんですけど。その人のことがどうも頭から離れないというか。」

「あ~、それは『アレ』ですね~。」

「文字通り『寝ても覚めても』って感じで。ある時、夢の中にその方が現れたりなんかもしちゃいまして。」

「それで、それで!?」

「その人に、伝えてみたんです。ボクは今、あなたの事ばかり考えてしまうんですと。」


 マスターは、彼には「恋人」が居ると言っていた。つまり。


「そしたら、『私も同じように思っていました。』というお返事をいただきまして。」

「きゃ~~~!!」


 人生で一番なんじゃないかというほど大声を上げて、私は二人の話を満喫した。

 続きも投稿いたしました、そちらもよろしくお願いいたします。

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