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アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
第六話「三度目の対話」
27/42

見て

エピソード26

 午前中に翌日の外出手続きを済ませ、注意事項を聞いた。

そうするうちに午後がやってきて、私は3度目の対話に臨もうとしていた。


「さ、今日はどんな話をしようか?」


 もはや恒例となった儀式を、カルラの足元で済ませる。

手を触れると、気のせいか前より温かみを感じるような気がした。


 なんとなしに、彼に触れたまま、その足元を歩いてみることにした。

一歩二歩進んだところで、見える姿には変化がない。


「ホントに君は大きいねぇ。」


 見上げながらつぶやく。

どことなく、頭上の花たちが震えたような気がした。


「なに?褒められて照れてんの?」


 私の勝手に、彼の反応を想像しながら周りを進んでいった。

ちょうど、彼の円周の3分の一ほど進んだあたり、前回よりもさらに高い位置に今回の実が成っていた。

しかし、以前とは違い、その実は花達の一番外側に。


「見つけやすい場所を選んでくれたの?」


 彼からの返事は当然返ってこないが、私は続けて話しかけていた。

前回の対話の内容に、彼も思うところがあったのだろうか?


「そんなに卑屈になんなくても良いのに。」


 彼を安心させるように、ぽんっと手を当てて、彼のつけた実の真下まで歩を進めた。




 そして、私はふと思った。


毎回、梯子を上るも面倒だな。


 そこで、今回も彼の力を借りようかと考えて、同時に思い出した。


そういえば、お礼を言い忘れてた。


「最初に話した時、梯子から落ちそうになった私の事、地面まで下ろしてくれたんだよね?ありがとう。」


 言葉の後、私は意識を呼吸に集中した。

鼻から息を吸い、止めたまま想いを込める。

そして、彼らに呼び掛けるように息を吹くと――。


 サクラの花びらは、木から離れ、渦を巻くと、一直線に私の足元に集結した。

そこで、絨毯のように広がり、私が上りやすい高さで宙に浮いていた。


「じゃ、失礼しますよっと。」


 私はそのサクラの絨毯に上り、腰を下ろす。

するとそのまま、私を乗せて上昇し始める。

私を落とさないよう、そろりそろりと上がり、私を木の実の元まで運んでくれた。


 目の前の果実をもぎ取り、食べようとした時、私は思った。


なんか、レジャーシートでお花見してるみたい。


 宙に浮いたピクニック気分で、私は木の実に噛り付いた。




「おかえり、アンユ。」


 この日のカルラは、立ち上がって私を出迎えてくれた。

しかし、その表情は固く、前回の対話について、いかようにも対処してくれと言わんばかりの顔だった。


「ただいま、カルラ。」


 彼の言葉を受けて、私はにこやかに返した。


「やっぱりそういう感じで待ってたんだねぇ。」

「というと?」

「前回のこと気にしてるんでしょ?結論から言うと、全部私に任せてくれるってさ。」


 私の言葉を聞くと、彼は少し拍子抜けしたような様子だった。


「だから、私は今まで通りにカルラと仲良くしようと思う。」

「……そうか。」


 言いながら、カルラは少し安心したような気がした。


「今日はさ、カルラのことを聞きに来たんだ。本当は私達の話からしたかったんだけど、明日にならないと準備ができなくて。」

「準備?」

「そう!きっと面白い話ができると思うから、期待しといて。」


 マスターたちのハードルを上げつつ、私はカルラの横に座った。


「ほら、カルラも座んなよ。」

「あぁ……。」


 すっかり私のペースに飲まれているようで、カルラは従順になっていた。


「なんか、私達の言葉で話すのうまくなった?」

「そうかもしれない。でもそれは、アンユが僕の言葉を理解していっていることも大きいはずだ。」

「じゃあ、私達の距離が近くなったってことだね。」


 私が笑うと、カルラもつられて微笑んだ。


「僕の話というのは、何を話せばいいのだろうか?」

「なんでもいいよ?カルラが見たのも、聞いたもの。」

「そうだな……。」


 カルラは思い出すように、上を向いた。


「それなら、僕らが誕生したところから話そうか。」


 言うと、カルラは立ち上がり、私に一歩近づいた。


「言葉にするより、君にも『見て』もらおうと思うのだが。」

「見る?」

「そのまま、目を閉じて欲しい。」


 言われるまま、私は目を閉じると、おでこにカルラの額が当たる感覚がした。


ふふ、髪の毛がくすぐったい。それにカルラからも、花の香りがする。


 甘い香りに包まれながら、私はカルラの感触に吸い込まれていった。

続きとなるエピソードも投稿いたしました。

よろしくお願いいたします。

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