花の筏
エピソード25
例によって、私は夢を見た。
しかし、これまでの夢と違って、決定的に違うのは、景色があったことだった。
私は川の中を進んでいた。正確には川の「上」というべきか。
私の足元にはサクラの花びらが集まっていて、それが筏のように、私を乗せて川を下って行った。
川幅は広く、流れもゆったりとしたもので、穏やかな風景が少しづつ、少しづつ通り過ぎていくのを、私は眺めていた。
もう少し、川中の方へ進んでみよう。
そう思いながら、私はその方へ息を吐く。
ふーっ。と、優しく吹きかけると、思惑通り、花の筏は進路を変えた。
私はそれが楽しくなって、右へ、左へと息を吹く。
それに合わせて筏も揺れる。
そうしているうちに、川幅はさらに広くなっていく。
もうすぐ、河口に出るんだろうか?
先の光景を思い描いて、私は期待に胸を膨らませた。
翌朝、私は朝食を取りながら、マスターを探し当てた。
「おはようございます。」
「アンユさんおはようございます。」
「今日、またカルラと話そうと思うんですけど、大丈夫ですか?」
と、この日のスケジュールを建ててもらった。
午後には、対話の準備もできるとのことで、手筈を整えてもらうことになった。
「ところで、ちょっとお願いがあるんですけど。」
私は、カルラと話をするにあたって、知っておきたいことがあった。
「マスターと奥さんの馴れ初めって聞いてもいいですか?」
「えぇ!?私のですか?」
私は、カルラのことをもっと知りたい。
そして、カルラには、私たちのことを知ってもらいたかった。
「地上の人たちって、基本的にカルラは繋がれないじゃないですか?だから、いろいろ話してあげたいなって。」
「な、なるほど……しかし、馴れ初めというのは。」
「あ、それは私が知りたいだけです。本当は私の両親の話なんかも聞きたいんですけど、外に出るのって難しいですもんね?」
「あぁ……それでしたら……。」
マスターも自分のこととなると恥ずかしいのか、少しでも逃れようと考えているようだった。
「手続きを行って、外に漏らしてはいけない内容を考慮していただければ、明日には可能かと思います……。」
お、言ってみるもんだなぁ。という思いがバレてしまうとまずそうなので、密かに思った。
「ソレはソレとして、マスターの話も聞いてみたいなぁ、なんて。」
押しを強めてみると。
「くっ……それでしたら、アンユさんがご実家から帰ってきた後に……少しだけ。」
と、マスターも折れてくれた。
「お二人さん、何話してるんです?」
コック長さんが、いつになく照れ照れのマスターをからかう様に割って入った。が。
「そ、そうですよ!君にも恋人がいましたよね!?」
と、マスターはコック長を売り渡した。
「え?!ホントに何の話をしてたんですか?」
好奇心、猫を殺すとはこのことである。
昔の人はうまいこと言ったもんだ。
「アンユさん!ぜひ彼の話もカルラ君に伝えてあげましょう!いや、これも人類を彼らに理解してもらうための大切な任務ですよ!」
「その言い方ズルくないですか!?えー、まいったなぁ。」
こうして、後日カルラに話すであろう、三人分の土産話の手配を済ませて、笑いながら食事を終えた。
最終話のep.42まで投稿済です。
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