ゲーム
エピソード24
午後になり、私は図書室に来た。
カルラについて、もっと知る必要があると思ったからだ。
しかし、結果から言うと、無駄足だった。
これまではカルラの言葉が観測されていなかったのだから当然だが、私が今知っている以上のことは得られなかった。
「う~ん。これは直接カルラに聞いた方が早そうだなぁ。」
と独り言をすることで思い立った。
もう一人(?)、直接話をした方がよさそうな相手がいたのだった。
ウサギへ。このメッセージを受け取ったら、私の部屋に来るように。
あいつのことだから、どうせ暇しているだろう。
伝言を残し、部屋でゴロゴロしながら待機した。
「なんスか?これ以上いじめないで下さいよ?」
案の定、ウサギはすぐに現れた。
会議がよほど堪えたのか、疲れた顔を隠そうともしていなかったが。
「そう思ってるならノックくらい覚えたら?」
「この体でノックするの難しいんで、勘弁して欲しいス。」
などと軽口を返せるくらいの元気は残っているようで、安心した。
「さっそく本題に入るけどさ、アンタの持ってる手札、全部教えてよ。」
「手札って。オイラはゲームしてるつもり無いスよ。」
「いいから。マスターに話してる範囲だけで良いから。」
私はさっきの会議中、マスターが何も言わずにいたことを疑問に感じていた。
そこで、ウサギにカマをかけてみることにしたのだが。
「べつにそこは隠してることでもないスけど。そんな意地悪しなくても良いじゃないスか~。」
と、すぐに看過されてしまった。
「なら話せる範囲で話してよ。最終段階で屋上使うのだって教えてくれてなかったじゃん。」
「……。」
ウサギはいぶかしそうな顔をした。
「それ誰から聞いたんスか?まぁ、観測さんあたりだとは思いますけど。」
「あ。」
私は、この手のゲームは得意ではなさそうだった。
「まあ良いスけど。じゃあ結論から言いますけど、最終的に、アンユッチには、月に行ってもらうス。」
「月って、夜にドームの外で輝いてる、あの?」
「そうス。月は反射で光ってるっていうのは知ってるスよね?」
「そりゃまぁ。」
「あれは、世界を映す『鏡』なんスよ。だから、その鏡を書き換えることで、この世界そのものを変えるっていうのが、オイラの知ってる世界の救い方ス。」
「世界を、書き換える……?」
地球の持つエネルギーの枯渇、それに伴って桜の引き起こした「病」の発現。
それらを一挙に解決するためには、世界そのもののリセットが必要なのだと、ウサギは言った。
「リセットしちゃえば、エネルギーも初期値に戻りまスし、省エネすることで地球の寿命を延ばすことも出来まスからね。」
鏡は、真実を写す。ならばその中身が書き換えられれば、真実の方も変化する。
しかしその為には、鏡の中の写像を変化させる力が必要だ。
そこで、桜を月に移植する。そして月そのものを桜の一部とすることで改変する事を行おうというのだった。
「それが、今やってる事ス。『病』の力は他者の改変スけど、桜は自我を持ってなかった。自我がなければ世界をどう改変していいか分かんないスよね?」
「それじゃあ、カルラ達は、私たちにその力を譲渡して、世界を救おうとしてたってこと?」
「う~ん。……まぁ、そこは結果論スけど。最初は自分を守るためってのが大きかったスかね。」
と、ウサギは考えるように言った。
「おっけー。とりあえず分かった。これまで私がやらされてた訳の分らんトレーニングもその為なのね?」
「訳わかんなく無いスよ!呼吸のトレーニングも、二酸化炭素に反応する植物を操る為に必要でスし!ほかにも――。」
などとウサギが御託を並べだしたので、話半分に「はいはい。」言いながら、私はカルラのことを考えていた。
カルラ達は、やっぱり人類の敵ではなかった。少なくとも、彼らなりに、この世界を何とかしようとした結果だと、私は感じた。
そして、それが世界を救う手段につながったのだ。
やっぱり、私はカルラと仲良くしよう。と、思いました。
決意とともに、皆の端末へ宣言した。
なんだか小学生の感想文みたいになってしまったが、きっとみんなも笑ってくれるに違いない。
そう思うと、私はもっとカルラのことが知りたくなった。
この感覚を大事にしながら、ウサギの講義を聞き流すうちに、夜がやってくる。
「一つ、確かなのはさ。」
頃合いをみて、ウサギに指を突き立てる。
「アンタ、いろいろ説明下手すぎ。」
「ひどいス!!」
よし、この罵倒ポイントを以って、今回の「ゲーム」はドローという事にしてやろう。
私に、駆け引きみたいなものは似合わない。
ただ、単純に思ったことをやってみようと考えながら、私はこの日、眠りについた。
第六話のはじまりとなる、エピソード25も投稿いたしました。
よろしくお願いいたします。




