やりたいこと
エピソード23
「これはこれは、皆さんお揃いで。」
食堂へ行くと、コック長は今日も陽気に出迎えてくれる。
ウサギはさっきの話の後、意外にも気まずいと感じたのか、別室で食事をとることにしたようだった。
奴の定位置となっていた私の隣が空いていたところ。
「ここ良い?」
と、観測係さんが座った。
「いや、さっきの話、あたしはまだ納得してないんだけどさ。でも、ありがとうね。」
何に対するお礼なのか、判断しかねて、首をかしげると。
「わたしもちょっと熱くなりすぎてたっていうか。アンユは、あたしの代わりにいろいろ話そうとしてくれてたでしょ?」
と、少し恥ずかしそうにしていた。
「いや、私は思ったことをそのまま話してただけだよ。」
私が率直に告げると。
「はは……。そういうとこも『アンユらしさ』ってことね。」
と、笑みをこぼした。
「そういえば、さっきのアレって何なの?」
「あれ?」
「ウサギとの約束が『本当だ』ってやつ。」
「あぁ……。」
私も、気になっていた。
「私にも、分かんないんだ。だけど、最近、何故かアイツの言葉の真意が分かる時があるの。」
「なにそれ?」
「なんだろうね?それも段々、強い確信に近づいてるような気がするっていうか。」
「うーん。それもP・Aのせいなのかなぁ……。」
と、彼女は考え込んでしまった。
「あのさ――。」
彼女の正直な感情に触れて、私も素直に相談したくなった。
「話が進んでいくうちにどんどん、私がどうするのかっていう方向に進んでる気がするんだけど。」
「うん?」
「……私はどうしたらいいのかな?」
すると、彼女は声を上げ笑い出した。
「いや、あたしにも分んないよ。大事なのはアンユがどうしたいか?なんでしょ。」
「それでいいのかな?」
「良いんじゃない?あたしはあたしで、自分が納得できるように動くから、アンユもやりたい事を探してみたら?」
そして、再び考えるような仕草をした後。
「たぶん、この世界はそうなる様にできてるから。」
と、つぶやいた。
その言葉は、私の中にも目覚めていた感覚と一致していた。
この奇妙な感覚に蓋をするついでに、彼女の言葉も聞こえないふりをして。
「じゃあ、このままカルラと仲良くなってみるよ。」
と、私は笑って見せた。
「またそれか。まぁ良いんじゃない?P・Aの根本は理解だし、あの子のことを知っていけば能力の開花にもつながるよ。あたしにはちょっと理解できない考え方だけど。」
昨晩のことも含めて、私はこの子の正直さが気に入っていた。
「アンユさん。彼はまた、実を付けたようです。」
食事が終わるころ、マスターが教えに来てくれた。
「カルラは、いつでも返事を聞く準備ができてるってことですね。」
「えぇ。いかがなさいましょう?」
「うーん。」
さすがに、今すぐって感じでもないよなぁ。
などと、考えていると。
「良いじゃん。待たせときなよ。アンユのペースにあたしたちは合わせるよ。」
と、観測係さんは応援してくれた。
「それじゃあ、もう少しカルラのことを考えてからにします。」
こうして、カルラとやりたいこと探しを始めることにしたのだった。
エピソード24「ゲーム」も投稿済です。
第五話、最後のエピソードとなりますので、そちらもよろしくお願いいたします。




