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アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
第三話「初めての対話」
13/42

メッセージ

エピソード12

「なんで?なんで?なんでぇ!?」


私の考えが端末に?言語化!?


お、本当に文字になってる。ちょっとオモシロ。いや、楽しんでる場合じゃなくて!!


「アンユッチ落ち着くスよ。」

「落ち着いてられるかっ!」

「と、言う割に、心の中では楽しんでるみたいで良かったス。」

「アンタは覗くな!!」


 言うなりマスターの周りをぴょんぴょんと逃げ回るウサギを捕まえようとするが――。


こういう時に、生き生きとした顔してんのがいっちばんムカつく!!


「いやぁ、褒めてもなんも出ないスよ~。」


イっっっラぁあああああああ!!その耳もぎ取ったるわ!!


「ほいっと!今度はこっちスか?ははっ!なんかこれ新しいトレーニングに使えそうスね。」


――その度、マスターの端末に私の考えが投影され、それを読むウサギに避けられてしまった。


「さ、こんな所じゃおちおち食事もできないスから、オイラは別室でゆっくり食べるスよ。」


 そういうと、ウサギはマスターの運んだお弁当をひったくる様にして、部屋を出ていった。

私としては、もうしばらく悪あがきを続けたいところだったが、トレーニングの疲れもあり、悔しくも諦めることにした。


「お伝えするのが遅れて、申し訳ございません。」


 息を切らす私に、マスターが冷たいお茶を入れてくれた。


「あ、どうも。……えっと、どうしてこんなことに?」

「はい。先ほどウサギとお話しされていた、『彼との対話』に必要な処置だったんです。」


あ、また「彼」って言ってる。


「そのことについてもお話ししますね。」


あぁ、気になるけどお腹もすいた……。


 と「思った」ことに気づいた瞬間、私は顔が熱くなる。

そして案の定、マスターは端末を見た後。


「それでは、食事をしながらにしましょうか。」


 と笑った。




 コロニー建設前、予定地の中心で「彼」は発見された。

調査の結果、生殖能力を持たず、代わりに一つの実をつけた彼は――。


「――あの木には、我々で言う脳波のような、『意識』が存在することが解ったのです。」


 そして、彼は明確な「意図」をもって果実をその身に宿していることが判明したそうだ。

彼は必ず一つだけ実をつける。そしてそれが採取されると、新しい実を、やはり一つだけ身に宿す。


「それ以来、我々は彼の意志を認識する方法を模索しました。」


 安全が確認され、彼がつけた実を食べることにした。結果、食べた者は「何か」を語り掛けられた感覚がしたという。

しかし、それがなんであるかは理解ができなかった。

彼の持つ「言語」を理解、吸収する術を人類は持ち合わせていなかったのだ。


 そうして、ポーレンアレルギーが誕生することになった。


「今のアンユさんが実を食べると、何か、メッセージを受け取り、理解することができるはずです。」


 しかしそれは、我々の持つ言語とは別の、体験的なものになることが予想されたため。


「なので、アンユさんの思考を言語化することで、我々人類に理解できる形に翻訳することが必要だったんです。」




なるほど……。


「彼のメッセージを一つ一つ翻訳していくから『対話』、なんですね。」

「はい。これまで彼は単一的なものしか語り掛けてきませんでした。しかし、我々が彼の言葉を理解できると知れば、新しい情報を提供してくれるかもしれません。」


そうやって、彼のことを少しづつ知っていく……。


「ご理解、いただけたでしょうか?」

「はい。『これ』が必要だっていうのは分かったんですけど。」


心を覗かれて、良い気はしない……。


「申し訳ございません。ですが慣れてくることで、何を言語化して何をアンユさんの内に留めておくか、分けられるようになりますよ。」


そういうもんなのかな……。


 と、この時は不安だった。




「今日は、この後、彼との最初の対話を予定しています。」


 お弁当を食べ終え、容器を片付けながらマスターが言った。


「記録によると、あの実はけっこう美味しいみたいですよ。」


デザートにピッタリじゃん!


 単純な私は、すぐに不安が吹き飛んだ。

 続くエピソード13も投稿いたしました。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうもです。 最新話まで読ませていただきました。 ウォーターワールドを彷彿とさせる世界を舞台に繰り広げられる、登場人物達の絡みが良いですね。 設定も良く練られており、文章も丁寧に書か…
感想一覧
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