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アンユの日記~Pollen・Allergy・Lover~  作者: 昼場まなと
第三話「初めての対話」
12/42

無意識の意識化

エピソード11

「あ~、あ~、あ~、あ~、あ~。」


 歓迎会の翌日、私はボイストレーニングをさせられていた。




 今朝、用意された自室で目が覚めると、朝食をカートに乗せたマスターがやってきた。


「アンユさん。おはようございます。よく眠れましたか?」

「おはようございます~。それはもうぐっすり。」


 眠い目を擦りながら、答えた。


「朝食がお済になりましたら、こちらのウェアに着替えて、トレーニングルームまでお越しください。」


執事のいる生活ってこういう感じなんだろうか?


 こうして、私の任務初日は優雅な幕開けとなった。




 そんなひと時もあっという間、まだトレーニングを始めたばかりだというのに、私は全身グショグショになりながら挑んでいた。


「はい、もう一回。もっと腹式を意識して!」

「はひ~。」


腹式呼吸というのは、案外、体力を使うもので。普段から運動不足気味の私は、トレーナーさんの厳しい指導に早くも音を上げそうになっていた。


「ア~、ア~、ア~、ア~、ア~。」


 なんでも、腹式呼吸というのは免疫機能を発揮させやすくするとか。

そして、ゆくゆくは目覚めるであろう、サクラの能力を操るために、私は特殊な呼吸法を習得しなければならないらしかった。




「お、アンユッチやってるスね~。」


 ウサギは、今しがた目覚めたことをわざわざアピールするかのように、大きくあくびをしながらやってきた。


重役出勤もいいとこですわねっ!


 心の中で悪態をつくも、午前のトレーニングを終え、へとへとになってしまった私は、ただただ睨むことしかできなかった。


「当面の予定を伝えに来たんで、コレを飲みながらでも聞いて欲しいス。」


 渡されたお水が全身にいきわたる感覚に、軽く感動を覚えながら、私たちは休憩室へ向かった。




「まず一つ目が、今やってもらったボイトレを始めとした能力強化スね。」


 私の中にある、力の吸収能力を使いこなせるようになること。


「これを使いこなす為には、これまでアンユッチが『無意識』に行っていた、免疫機能を意識化することが一歩目ス。」

「意識化……。」

「例えば、今そうしてアンユッチは水を飲んだスけど、それはアンユッチが何も考えずとも、胃や腸を通って吸収されまスよね?それを自らの意志で行うような感じス。」

「なる、ほど?」

「まぁ、難しく考えなくとも、アンユッチはすでにそのきっかけを掴んでるはずス。今も、なにか感じなかったスか?」

「あぁ……。」


体にしみこんでいくような――。


「今は、その感覚を大切にするだけで十分ス。そうして無意識の意識化を続けていくことで、段々と力の使い方が分かってくるはずス。」




 ウサギは続ける。


「そして二つ目にやってもらうのが、サクラを操る力の強化ス。」

「サクラを操る?力だけじゃなく、花そのものをってこと?」

「そ!これまでにも、少しづつサクラを取り込んで、アンユッチの中にサクラの力が蓄積されてってるス。」

「あぁ、そのために『おひたし』を食べさせられてたんだよね。」

「これも無意識の意識化なんスけど、その力を応用することで、アンユッチはこの世界にある、すべてのサクラの長として、意のままにあやつれるようになるんスよ。」

「私が、サクラの女王になるんだ……。」

「ははっ、アンユッチには『女王』っていうの似合わないスね。」


自覚はあるけど、馬鹿にすんな。




「そして、最後にやってもらうことになるのが――。」

「――彼との対話。ですね。」


 声の方を向くと、マスターが昼食を運んでくれていた。


「マスター!わざわざすみません!」

「良いんですよ。私の任務は計画の実行ですから、アンユさんにお仕えするのが今の私の仕事みたいなものなんです。」


 マスターはそう言ってくれたけど、私も手伝いながら、昼食をテーブルに広げた。

マスターが運んでくれた食事は3人分きっちりと揃っていた。


「あれ、ウサギがここにいるっていうのも知ってたんですか?」


 聞いた後、マスターはしまったというような顔をして、申し訳なさそうに言った。


「実は、アンユさんに伝え忘れていたことがございまして……。」


何だろう?そんなにおおごとだったのかな?


 言葉を待つと、マスターは端末を確認して。


「おおごとと言えば、おおごとと言いますか……。」


ん?今なんか、違和感が……。


「その、アンユさんの内面に関わるものでして。」


あれ?……まさ、か?


「その『まさか』でございます。」

「……。えっと、マスター、その端末に映ってるの、って?」


 マスターは画面を私に向けた。


「アンユさんの思考は、このように言語化されて、我々に伝わるようになっていたんです。」


は、は、恥ずかしいぃいいいい~~~!!!!


 そこには、「は」と「い」の数まで正確に、私の心が映し出されていた。

エピソード12も投稿いたしました。

事前の予告と変更して、毎日投稿にさせていただいております。

ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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