地球の最後
プロローグ
トウキョードームイッコブン。
大昔に使われていた広さを表す単位らしい。
そのトウキョードームイッコブンの島が九つ。
それが、ジパングの全土。
そのジパングを覆っている屋根が開かれる。
その先に広がる「宇宙」へ向かって、私は打ち上げられていく。
無数のサクラの花びらを身にまとい、かつて人類が宇宙への船として使っていたロケットのように、あるいは天へと駆ける龍のような姿となって、私は上へ上へと昇っている。
「アンユ、ドームを抜けたら辺りを見てごらん。それが、君たちの住む、地球の姿だ。」
私の中にいる、カルラの声がする。
大丈夫だよカルラ。……私は私で、ここに思い入れがあるから。
言葉にはせず、心の中で彼に応える。
地球最後の姿を、一緒に見てから旅立とう。
天井を抜け、これまで吐き続けていた呼吸をゆっくりと整えていく。
それに合わせて、サクラの龍も上昇をやめる。
私の遥か彼方の足元に、これまで暮らしていたジパングのコロニーが見える。
真ん中には、巨大な塔を持つ「中央0区」
その真北にあるのがコロニー全体を管理する「第一地区」。
0区の北東に「第二」、東には「第三」と円を描くように続いていって――。
――最後の北西、第一の隣に浮かんでいるのが、「第八地区」。
あそこが私の生まれたところ。
これまで島々を覆っていてくれたドームはもう、花のように開かれている。
「まるで、大きな蓮の花みたいだ。」
私の心内を察してか、カルラがいつになく詩的な表現をする。
うん。でも、もうあんなに小さく見える……。
少し感傷的な気持ちも浮かんだけれど、もう引き返せない。
さ、いつまでもこうしていられないし、そろそろ行こう。みんなに私の「声」を届けて。
カルラに伝えると、私は大きく息を吸い込む。
そして、開かれたドームへ群がるように浮かんだ、おびただしい数の桜の花びらに呼びかける。
「みんな!私と一緒に新しい世界を作ろう!!」
声に答えるように、桜達は空へと舞い上がる。
今の私を形作る、龍と一体となって、私の元へと駆けつける。
龍はさらに質量を増して。
地球全体を覆っていたすべての桜が、私と一つになる。
彼らを引き連れて、「私」は再び、天へと進み始める。
私は加速する。
速く、早く、はやくなって。
光をも超えて、進み続ける。
これが、私たちの生きた、地球の最後。
続きも投稿済みです。
全42エピソードにて完結済です。
よろしくお願いいたします。