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侍の心得─Samurai code─



  「さて、新たなる侍の誕生、大変におめでとう。

   しかし刀を振るえるようになっただけでは侍になったとは言えん。

   剣の稽古は日々重ねてこそ意味がある物じゃ、一度出来ただけで

   満足してはいかんぞ」

  『なるほど、わかった!』



 サムとギークは同時に頷き、Gは返事に満足してくれたらしく

 満面の笑みで頷き返した。



  「うむうむ、いい返事じゃ。鍛錬は必ず成果となって返ってくる、

   良く励むことじゃ」

  「おお……本当に、本格的にサムライになったんだな俺たち……!!

   よっしゃあ!!やってやるぜぇ!!」

  「張り切ってるねサム……!でも、僕も興奮してくるよ……

   今まで碌に運動なんてしてこなかったけど、

   全部巻き返す勢いでやっていくよ……!」



 意気揚々と拳を突き上げながら宣言したサムたちを、

 Gは満足そうに眺めていた。


 

  「うむ、〝力〟の方は問題なさそうじゃな。

   じゃが侍になるためには〝心〟、精神性も鍛えなければならん。

   そのための心得というものを教えるとしようかの」

  『サムライの心得!?』



 サムは言葉の響きに惹かれ、ギークもまた目を輝かせている。

 Gに連れられてエンガワまで戻ってくると、そのまま部屋へ上がり

 いつも座っている椅子へとそれぞれに座った。



  「ふぅ、すまんのぅ、ワシも立ったままは辛くなってきてしまってのぅ。

   心得の話は座学にさせてもらうが、良いかのぅ?」

  「俺は問題ないぜ、ミスターGが一番楽な体制でやってくれよ!!」

  「僕も異論無し……ゆっくりやってくれていいよ……!」

  「ほっほっほ、本当におぬしらは優しい子らじゃのぅ。ありがとう」


  

 Gは腰を落ち着けると、懐から2冊の古びた本を取り出した。

 


  「一冊は刀の振り方に関する資料じゃ、この本を参考にして

   刀の修練に励むとよい。これはおぬしらに先に渡しておこうかの」



 Gの差し出した本を、ギークが受け取りパラパラとめくる。

 サムが横合いから覗き込んでみると、サムライソードを持った人物が

 様々な姿勢で振るっているのが描かれている。


 確かにこの本を参考にすれば、サムライソードの練習はGに無理をさせず

 自主練習もできるかもしれない。



  「さて、もう一冊の本が今回の本題じゃ。

   といっても、かなり古い内容になる物じゃから

   全てを心に留めおくようにとまでは言わんからの」

  「なるほど、時代の移り変わりで変化するってことだな。

   でもできる限りその教えに基づいて行動するようにするぜ」

  「そうだね……サムライは失敗したらハラキリするって

   聞いたことがあるけど……僕たちがそれやったら、

   お腹がいくつあっても足りないだろうから……」

  「ははっ、ナイスジョークだぜギーク」



 サムが茶化したものの、静謐な空気が満ちていることを思い出して

 笑いを引っ込めると、咳払いをして椅子に深く座り直した。



  「ほっほっほ、そう固くならんでも構わん。

   ……では、説明していこうかのぅ」



 Gが本をめくり、そこに書かれている教えを語り始めた。



  「教え、その一。

   〝命か忠義を選べと言われたのならば、自分の命など微塵も惜しくはない〟。

   侍は命を懸けて主に仕えるものじゃ、もしも敵に寝返れ、

   などと言われたのならばその場で死を選ぶのが侍なのじゃ」

  「へぇ……なんだか諜報員スパイみたいな心構えでもあるね……

   でも諜報員スパイは生き残るために全力を尽くすけど、

   サムライは主人のために死ぬ覚悟があるんだね……」

  「サムライってだけで無敵の存在に思えるけど、

   それだけじゃねぇんだな、捕まっちまうこともあるのか……」

  「そうじゃ。侍とて人は人、負ける時には負けてしまうし、

   捕らえられることもあるのじゃ」



 なるほどなとサムたちが頷く中、Gが本の頁をめくり

 2人は次はどんな教えが出るのかと身を乗り出した。



  「教え、その二。

   〝使える主人が厳格過ぎては、家臣の信頼は得られない。だが、

    主人が信用しすぎると家臣は手に負えなくなるものだ〟。

   侍は上に立つ者としてもあらねばならん。厳しくし過ぎれば家臣、

   すなわち部下からは敬ってはもらえん。じゃが甘やかしすぎると

   今度は部下が図に乗ってしまい、侍の言うことに従わなくなってしまう。

   何事も適度な緩みと締め付けが必要じゃということじゃ」

  「これは社会にも言えることだよなぁ。

   何でもかんでも厳しくしすぎると間違いなく反発を喰らう、

   だからと言って全て人民の言う通り、なんていうことにすると

   確実に舐められちまって肝心な時に言うことを聞いてくれねぇ」

  「そうじゃな。締め付けのし過ぎは毒じゃが、緩めすぎもまた毒なのじゃ。

   難しい問題じゃが、そこは才覚と周りの意見で乗り切るしかないのぅ」

  「うーん……サムライって強くあればそれでいいって思ってたけど……

   それだけじゃ駄目なんだね……」

  「うむ、そうなのじゃよ。……さて、まだ伝えることはあるぞ。

   次に行くとするかのぅ」

  『了解ラジャー!』



 Gが再びページをめくる、その度にサムライの知らない話が飛び出してきて

 サムたちの見識が改められる。

 次はどんな話が飛び出してくるのだろうか?

   


  「教え、その三。

   〝病に伏せたり悩み事に苦しむとき、真の友が誰なのかがわかる。

    距離を取ろうとするようなら、それはただの臆病者だ〟。

   困難に当たった時にこそ助けてくれるのが本物の友人じゃ、

   利益や損得のみで近寄ってくる者たちは、困難に出会ったときに

   逃げ出してしまうじゃろう。持つべきは真の友を持てという話じゃな」

  「真の友人か、確かにそれを見極めるのは難しいもんだ。

   友達面して横に並ぶ腰巾着なんて、ザラにいるもんな」

  「うーん……そう言われちゃうと、チャット仲間が本当の友達かって聞かれて

   答えられないかも……本物の友達だっているって信じてるけど……

   何人かはただ話したくて集まってきただけの人たちだろうし……」



 顔に影のできたギークにサムは一瞬躊躇したが、

 決心してその肩を抱き込むように飛びついた。



  「だが今はマジモンの友達ダチがここに居るだろ!?」

  「あっ……うん、そうだね……!」



 華やかな笑顔をこちらに向けたギークに「そうだろ!!」と言って

 サムは笑顔を返した。



  「ほっほっほ、そうじゃな。今の2人は真の友人じゃと言えるじゃろう。

   良いことじゃ良いことじゃ」



 その後もGからサムライとしての心構えを聞き、すべて聞き終えるころには

 空は茜色に染まっていた。



  「──以上、これらが侍としての心構えじゃ。

   長い講義に付き合ってくれてありがとう、2人とも」

  「いや、良い講義だったぜ!!大学ユニバーシティじゃ絶対聞けねぇ内容だったな!!」

  「本当、聞き終わってこんなに充実した授業は初めてかも……!

   Gが先生だったら大勢生徒がやって来てただろうね……!」

  「それな!!」



 2人ではしゃぎながら感想を言い合っていると、

 誰の腹か知らないが、ぐぅーと大きく抗議した。



  「ほっほっほ、もうこんな時間じゃ、お腹も空いたじゃろう。

   少し遅くなってしまったが食事の準備を始めるかのぅ」

  『賛成!!』



 3人は連れ立ってキッチンに向かうが、Gはサムとギークが

 未だに腰からサムライソードを下げていることを指摘する。



  「おお、2人とも刀を腰に結び付けたままではないか。

   先ほど椅子に座っていた時も辛かったのではないか?

   解いておきなさい」

  「いや!!ガキ見てェで悪いんだけど、今日はこのサムライソードはこのまま

   腰から提げていてぇんだ!!」

  「ぼ、僕も……幼稚かなって思われるかもしれないけど、

   今日はこのままでいたいんだ……!!」



 Gはどうしたものかと考えこんでいる様子だったが、

 やがて観念したように笑顔を浮かべた。



  「ほっほっほ、承知した。

   では、今日はこのままでいるとしようかの」

  「っ……!!サンキューなミスターG!!」

  「ありがとうG……!汚したりしないから……!」



 2人は子供のように喜びながらGへ礼を述べる。

 


  「それじゃあ今日は、僕が食材調達してくるよ……!

   と言っても、裏から持ってくるだけだけど……」

  「ははっ、この2日俺が食いたいもんばっかり出してもらったからな、

   今日はギークが食いたいもんにしようぜ!!」

  「そう言われてみればそうじゃったのぅ。

   ではぎいく君、好きな食材を用意してきてくれるかのぅ?」

  「任せてよ……!」



 そう言ってギークはキッチンから外へ出ると 

 鶏肉が食べたいなと思い、飼育場へと向かったのだった。






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