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海老の大蒜漬け焼き─Garlic shrimp─



  「ははっ、マジで大漁だぜ!!

   これだけありゃあガーリックシュリンプ食い放題だ!!」

  「と、獲りすぎて食べきれるかなって思ってたけど、

   これくらいの量なら大丈夫そうだね……」



 サムが抱える籠の中には、今も跳ね続けている活きの良い大量の海老がいた。

 量的に食べきれるかどうかと心配になっていたギークだったが、

 サムの様子を見るにこの籠いっぱいの海老すらも平らげられそうな

 はしゃぎっぷりに杞憂だったと胸を撫で下ろす。



  「ほっほっほ、これだけ大量に獲れるとは凄いのぅ。

   では台所に戻って料理してみるとしようかの」

  「おうっ、早速作り始めるとするか!!」

  「美味しいやつ、よろしくね……!」



 Gと連れ立って井戸の方へと向かうと、

 洗濯桶の中からは水が抜かれており、洗濯も終わっているようだ。

  


  「サムは籠抱えてるし、Gは大変だろうから……

   ここは僕が、洗濯物持っていくよ……!

   少しくらいは役に立ちたいし……」

  「ほっほっほ、ぎいく君は既にさむ君を説得するのを手伝ってくれたり、

   いろいろと頑張ってくれておるよ。

   じゃが折角じゃからのぅ、お願いしてしまってもいいかの?」

  「うん、任せて……!そういえば乾燥機はないの……?」

  「ふぅむ、残念じゃが乾燥機は今のところないのぅ。

   ワシが必要としていないがゆえに出てこないのかもしれん、

   すまんがワシが普段やっている外干しで干してはくれんかのぅ?」

  「あ、うん。いいよ大丈夫……!干し方は普通にハンガーとかに

   干せばいいんだよね……?」

  「おお、それで構わんよ。ありがとう」



 洗濯桶の中から洗われた服を取り出すと、水は切ってあるがまだ湿っている。

 そういえばジャパンでは洗濯物は日に干して乾かすと聞いたことがある、

 自分たちの居たところでは景観保全や窃盗防止のために外には

 干せなかったが、ここではそんな心配もない。

 

 Gは日本人だからここでは日本のしきたりに習うのがセオリーだろう。

 ……楽に済ませられないのは残念だが。



  「ちょ、ちょっと重いな……ん……?」



 ふらつきながらも洗濯物をしっかり持って運ぼうとした時、

 服の中に何かが紛れていることに気が付いた。


 なんだろう、どこかで見たことのあるような気がする──



  「……あっ!!ぼ、僕のスタチュー……!?」



 昨日までに起きたことが色々ありすぎて完全に失念していた。


 しかしさすがに今洗濯物を下ろしてまで手に取るわけにはいかない、

 とにかくGの後についていって干した後に回収するしかないだろう。



  「ああー……お気に入りだったのにぃ……」

  「どうしたんじゃぎいく君?溜息なんぞついて、

   何かあったのかのぅ?」

  「ううん……ただの僕の不注意……」



 張り切りながら「早く戻ってきてくれよ!!」と意気込むサムをキッチンに残し、

 うっすらと涙を浮かべながらGと一緒に外に繋がる廊下へと向かう。



  「さて、洗濯物を干す場所なんじゃが……

   ここ、縁側から竿が見えるかね?」

  「さお……?」



 Gが指さす方向を見ると、2本の細い柱みたいな物に渡された1本の長い棒が見える。

 鉄棒か何かと思ったが、柱に固定されているようにも見えない。



  「あれが、どうかしたの……?」

  「うむ、あそこに渡されている棒を物干し竿と呼んでおってな。

   ワシはあそこに衣紋掛け……おぬしらのいう〝はんがあ〟じゃな。

   それに服をかけて干しておるんじゃ。

   ぎいく君にも同じことをしてもらいたいんじゃが、良いかのぅ?」

  「あ、うん……それくらいなら大丈夫だと思う」



 良くは刃が洗濯物を干しているところは見ていたし

 何度かだが手伝ったこともある、

 干すことについては問題ないだろう。



  「では、この桶に洗濯物を入れて干してきてくれんか。

   〝はんがあ〟もここに用意しておくからの」

  「うん、わかった……サムが待ってるだろうから行ってあげて」

  「ほっほっほ、感謝するぞぎいく君。

   ではさむ君の元へ向かうとするかの」



 Gがイオリの中へ戻っていくのを見届けて

 ギークは近くに置いてある桶の中に洗濯物を放り込むと、

 その中に紛れ込んでいたスタチューを手に取った。



  「ああー……やっぱり洗濯されて歪んじゃってるぅ……」



 お気に入りのスタチューは洗濯の際に歪んでしまったようで、

 まるで握り潰されたかのようにクシャッとなってしまっていた。



  「仕方ないよねぇ……はぁ……干しちゃおう……」 



 ギークは歪んだスタチューをパンツのポケットに仕舞い込むと、

 シャツを手に取りハンガーに通して物干し竿に掛けていった。







  「おっ、ようやく戻ってきたなミスターG!!

   さっさとガーリックシュリンプ作っちまおうぜ!!」

  「ほっほっほ、慌てるでない。侍たるもの急いてはならんぞ?

   さて、何から始めたらいいかのぅ?」



 籠いっぱいの海老を前にしてGはどうしたらいいものか考える。

 ガーリックというからにはニンニクは必ず使うのだろう、

 それ以外は全くわからないが。



  「それではさむ君の感想を元に、作ってみるとしようかの」

  「おう、頼むぜ!!俺もできる限り協力するからよ!!」

  「ほっほっほ、頼もしいのぅ。

   ではまず、どんな味だったかを聞いておこうかのぅ」



 Gの問いにサムは唸り声を上げながら考え込んだ。

 ガーリックシュリンプの味を出来る限り思い出して、

 何が入っていたか考える……



  「そう、まずは刻んだ玉ねぎとニンニクが

   たっぷり入ってたのは覚えてるんだ……」

  「ふぅむ、玉ねぎとニンニクとな。

   玉ねぎの甘さとニンニクの〝ぱんち〟が効いてそうじゃのぅ。

   ほかには何かわかるかのぅ?」

  「後は……そう、ソルト&ペッパー、あとはハーブが何種類か

   効いてた気がするな……あとはそう、レモンの香りがしたな」

  「ほぅ、檸檬とな。酸味が効いて美味しそうじゃのぅ」

  


 残念ながら香草は何が入っているのかはよくわからず、

 思い出せるのはここまでとなった。



  「ふぅむ、では味付けに気を付けながら作っていこうかの」

  「海老には味がしっかり付いてたから、漬け込んでマリネたのかもなぁ」

  「なるほど、漬け込むのは理に適っておるのぅ。

   では漬け込み汁としていろいろ作ってみるとするかの」



 サムとGは協力しながらいくつかの浸し汁マリネソースを作り、

 何個かひどい失敗をしながらもようやく納得のいくものが出来上がった。



  「で、出来たぜ……!!納得のいくマリナ―ドソースが……!!」

  「ニンニクに〝たいむ〟、〝おれがの〟、〝ろぉずまりぃ〟。色々入れたのぅ。

   しかしおかげで美味しい漬け込みダレができたようじゃ。

   海老は殻を剥いて漬けるのかのぅ?」

  「いや!ガーリックシュリンプは殻付きのままガブリッと行くのが美味いんだ!

   だからこのまま入れちまうぜ!!」



 サムの指示に従って浸し汁マリネソースの中に海老を放り込むと

 まだ活きの良い何匹かがぴちぴちと跳ねている。

 


  「……ちょっと残酷か?」

  「ほっほっほ、日本ではホタルイカの沖漬けなどという

   生きたままのホタルイカを醤油につける方法もある、

   この程度はどうということはないんじゃよ」



 「さすがジャパン、クレイジーだぜ」と思いながらサムは

 海老が漬かっていくのを見届けた。






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