私が選んだあなただから、それでいいの!
「僕はさ、一生懸命やってるんだよ。でもすぐ上司に怒られるんだよ。頑張ってるのにさ、僕ってダメだよね。でもこんな僕を好きになってくれて、ありがとう、陽菜。」
「・・・・。」
「あれ?陽菜??」
私は、もう限界だった。
「こんな僕を好きになってくれて、ありがとう、陽菜。じゃねぇーーーよ!!!仕事で頑張ってるのは分かる!!新人が辛いのも分かる!!でも湊の事が好きな私に、湊の悪い所、悪い所、悪い所を全部言うんじゃない!!こっちまで暗くなるわ!」
湊は目を見開いて固まっていた。あぁ、言ってしまった・・・。スッキリしたけど、これは怒りに任せて言って良かったのか!?ここで私はようやく我に返った。
「・・・あっ、酷い事言ってごめんね。大好きだけど嫌いな所もあるの。でも、こんな事言っちゃったから、流石にもう私たち、終わりかな。傷つけてごめんね。」
陽菜は走って店を出た。外に出て、涙がじわじわ出てきた。好きなのに、勢いに任せて酷い事を言ってしまった。しかも終わりって言ってしまった。もう明日から湊に会えない。
しくしく泣いていると、湊が店から出てきた。私を見つけると、走ってきた。逃げようとしたら、手をガシッと掴まれる。
「待ってよ、陽菜!!」
「嫌!!離して!!」
本当に手を離した。悲しくなる。
「ここは掴んでてよ、バカッ!!」
「えっ!?あっ、ごめん!!そっか!!」
湊に再び手を掴まれたから、全力で振り払ってやった。今さら遅いのよ!!そのまま泣いていると、湊は困った様に頭を掻いた。
「いつも愚痴ばっかり言って、ごめんね。こんな僕の話を聞いてると、嫌になるよね。」
謝ってばかりいる湊の話を、私は黙って聞いていた。だってこれが私達の最後だから。
「でも僕、陽菜がいいんだ。こんなに僕の事を想ってくれて、励ましてくれるのは、陽菜しかいないよ。さっきお店で言ってくれた事、嬉しかったんだ。僕の事を好きって・・・これからも仕事を頑張るよ。」
湊が私の手を取った。微かに震えている。
「だから、一緒にいよう、陽菜。好きだよ。」
湊は今にも泣きそうな目をしていた。まるで捨てられて痩せ細った子犬のように、プルプルしていた。
「私も湊がいい。だから、もう自分を悪く言わないでね。上司の愚痴は聞いてあげるから。」
「陽菜〜〜!!」
2人で駅に続く道を歩いてたら、湊が私に言った。
「さっきのお店、陽菜の分のお金、僕が払っておいたんだよ。感謝してね。」
・・・やっぱり湊なんて嫌い。腹が立つ。本当に腹が立つ。
※ ※ ※
私達、別れたと思いますか?いえいえ、こんな事を繰り返しながら、結局3年付き合って結婚しました。
相変わらず湊はネガティブだし自分を卑下する。仕事も嫌いらしい。仕方がないから私は湊を応援したり、励ましたりする。そうすると、いつも湊は嬉しそうにして元気になるし、毎朝仕事にも通えるみたい。時々愚痴を聞きすぎて怒っちゃうけど・・・私たちは、それでいい。こうやって私達は私達らしい家庭をこれから築き上げていくんだと思う。
今日も私は湊を励まし続ける。この人を勇気づけられるのは、私しかいないんだから!!
日常にある勇気って何かなーと思って、この作品にたどり着きました(笑)
ヘタレ彼氏を大好きな彼女が、怒りながらも応援しちゃう。そうすると、ヘタレだけど一瞬頑張れる彼氏。
メンタル弱い湊には、仕事も恋も毎回勇気を出さないとやりきれない弱さがあるのですが、それを補ってくれる彼女がいたらいいなーと思って書きました。
拙い文章ですが、読んで頂いてありがとうございました!




