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五十四、隕石はいくつ?

 魔法使いの長オルグさんは、陛下がアレクシス様と体を共有している事を知っていた。


「アズサ様、なんとお礼を申し上げれば良いか、、、」


 ほろほろと涙ぐむ。


「陛下は一生、アレクシス様から解放されまいと思っておりました。むろん、アレクシス様は英明な方です。素晴らしいまつりごとをなさいました。しかしそれでも、陛下になにかと圧力をかけてくるのです。陛下のお体を維持する為には仕方がないとあきらめておりましたが、本当にようございました。このような事を言っては不敬にあたるのかもしれませんが」

「良い、お祖父様には感謝している。この年まで生き長らえられたのは、お祖父様のおかげだ。、、、余は着替えて来よう。このなりでは何があったのかと、みな心配するであろうからな」


 陛下が着替えに衣装室に行っている間、オルグさんにアレクシス様がどのような最後を遂げたか、詳しく話した。

 オルグさんは、アレクシス様が陛下の体を乗っ取ろうと襲いかかったと聞くと、すっごく腹を立てていた。


「なんということを! アレクシス様は気が触れたとしか思えません」

「気が触れていたんだと思います。永遠の命を得たのだと言っていましたから。長く生きてなんになるでしょう。自分の命の意味がわかればそれでいいと思うのです。ただ、長く生きていたいなんて」

「アレクシス様の気持ち、多少、わかりますな。年をとると意地汚くなりましてな。もっともっと欲しくなるのですよ」

「あなたも永遠に生きられるとしたら、生きて行きますか?」

「いえいえ、永遠に若く生きられるなら、、、。ああ、そうか、アレクシス様は陛下を通して若い肉体を手に入れたのですね。だから、陛下に執着したのでしょう」

「なるほど」


 年を取った意識が若い体を手に入れた。

 それが、いきなり断たれたのだ。

 しかも、エンペラースライムの体になって。

 そりゃあ、気も触れるわよね。

 陛下が着替えから戻って来たので、あたし達は陛下の私室へ行って、エンペラースライムの遺骸を回収、暖炉で燃やした。

 オルグさんが水魔法で遺骸から水分を抜いてカラカラにしてから燃やしたので、とてもよく燃えた。


「先輩、、、」


 涙があふれる。

 こんな形で、お別れするなんて。

 ううん、元の世界にいた時の先輩だけ、覚えておこう。

 楽しかった思い出だけ。




 陛下との面会が終って部屋に戻ったら、スタッドさんとサンドラさんがとても心配していた。


「報告に行っただけなのに、なかなか帰って来ないから心配したぞ」

「何かあったのですか?」


 陛下の私室であった事は口外厳禁なので、なんとか誤魔化さないと。


「えーっと、オルグさんが、昨夜隕石が落ちたのが怪獣のかけらじゃないかって。その話をしていて遅くなったの。オルグさんが隕石が落ちた場所はある程度絞り込めるって」

「隕石か。隕石がかけらの可能性は十分にあるな」

「それで、隕石回収の捜索隊が組まれる事になったの。でね、この国に落ちた隕石の回収にはお金をだすけど、他国に行く費用はあたしの力でなんとかしろって陛下に言われて」

「つまり、他国への遠征の金は出さないと」

「そうなのよ。怪獣のかけらを回収して世界を救う旅なのに、お金だしてくれないの」

「仕方ないだろ。世界が救われても自分の国が財政難で滅びたら元も子もないからな」

「でも、世界が滅んだら自分の国だって滅びるのよ。遠征費用くらい出してくれてもいいと思うわ」

「それで、落ち込んでいるのか?」

「ええ、まあね」

「あんたも相当な守銭奴だな」

「あんたに言われたくないんですが!」


 なんとか、誤魔化せたみたい。

 隕石の話は本当の事だし、納得してくれたみたいで良かった。




 その夜、夢を見た。

 闇の神が、夢の中に現われたのだ。

 思わず平伏する。

 浪々とした声が響いた。


「そなた、よくぞ、怪獣を倒した」

「え? え? えーっとこれ、夢ですよね」

「ああ、夢の中だ。おまえに直接礼を言いたいと創造神に頼んだのだ。夢の中なら良いと許可がおりた。まこと、よくぞ怪獣を倒してくれた。礼を言う。これで魔素生産の役目が果たせる。喜ばしい限りだ。そなたに褒美をやろう。と言っても大した事は出来ぬが。そうだな、黒の三姉妹の影を使役出来るようにしてやろう。怪獣のかけらを集めるのに役立つだろう」

「あ、ありがとうございます。あの、どうやったら黒のお三方の影を呼び出せるんですか?」

「『出でよ、黒の影達』と呼べば三姉妹の影がすぐに表れるだろう。本体を出すと、この世界に悪が蔓延するからな」

「そんな恐ろしい人達なんですか?」

「ああ、恐ろしいぞ。だが、影なら、そのような事にはならぬ。我が体を清めた事、誉めてつかわす。特に髪を洗ってくれたのは、実に気持ち良かった」

「そ、それは、良かったです。ですが、今後、体を清めてくれる人はいるのですか?」

「ああ、創造神が我が体を清めるゴーレムを何体も作ったのだ。これからは、ゴーレム達が清めてくれるだろう」

「それを聞いて安心しました。また、埃が溜まるのではないかと気になっていました」

「そなたは良い人間だな。そなたのような人間を闇に落とすと楽しいのだがな」


 闇の神がにたりと笑った。

 きゃあ、恐い恐い恐い。

 やっぱり闇の神様なんだ。


「ははは、怯えなくとも良い。おまえに手出しはせぬ。部下達にも手出しはさせぬ。安心せよ。さて、話は終った。さらばだ」


 はっとして目が覚めた。

 闇の神が会いに来るとは思ってもいなかった。

 あれ、夢じゃないよね。

 黒の三姉妹ってあの、おばあさん達でしょ。


(バトラー、居る?)

(はい、こちらに)

(闇の神が夢の中に出て来たの。見てた?)

(いえ、残念ながら、アズサ様の夢の中までは見られません)

(そう、そうよね)


 あたしは、闇の神が夢に現われたこと、黒の三姉妹の影を使えるようになった話をした。


(それは本当に闇の神なのでございますか?)

(え? どういう事?)

(つまり、今回の事情を知っている者が闇の神の名を騙ったとは考えられませんか?)

(え? それはないんじゃない?)


 唐突に光がさした。


「わしじゃ、かの者の言った事は真じゃ。さすがに冥界の者は用心深いの。良い事じゃ。昨夜の夢は信じてよいぞ」

「あ、ありがとうございます」


 うわあ、創造神様が直接お声をかけて下さった。

 ありがたい、ありがたい!


(バトラー、今の聞いた?)

(はい、聞きましてございます。いやはや、素晴らしいですな。お声を聞いた私めまで、体が暖かくなったように感じました)

(幽霊なのに? 体、ないんだよね)

(はい、体が無いのに、でございます)


 さすが、創造神様、凄いなあ。

 黒の三姉妹の影を呼び出す実験は魔物領に行ってからやってみよう。

 ここで呼び出したら、いろいろ不都合が起きるかもしれないものね。



 昨夜寝る前にメリーに手紙を出しておいたのだが、早速返事が届いていた。

 メリー、きっと怒ってるだろうなあ。

 だって、久しぶりに手紙が来たと思ったら、怪獣のかけらが落ちて来てるかもしれないから、気を付けてねっていう内容なんだもん。

 読むのが恐いけど、手紙を開いた。


(あんた、こんな大事な事、もっと早くに知らせなさいよ!)


 あー、やっぱり怒ってる!


(あんた、こんな大事な事、もっと早くに知らせなさいよ!

 テトの畑にもう落ちてるわよ。

 おかげで、スライムが食べて巨大化して大変だったんだからね。

 あんた、凶暴化した巨大スライムがどんな物か知らないでしょ!

 スライムが進化しないで、ただ、大きくなったのよ!

 あのテトが鼻や口を塞がれて窒息しそうになったんだからね。

 幸い核も大きくなってて、ツノで核をついて破壊出来たから良かったけど。

 とにかく、九つのうち1つは破壊したから。

 あと八つ、回収するのよ!

 テトがね、巨大化したスライムの死骸のおかげで、今年の畑は豊作になるだろうって言ってたわ。

 美味しいロズサイが出来るって。

 たまには、食べに帰って来なさいよ!

 あんたが無事で良かったわ。

 じゃあね!)


 まさかテトの畑に落ちてたなんて!

 テトが無事で良かった。

 あたしは迷ったあげく、陛下と魔法使いの長に怪獣のかけらが八つになったと報告した。

 そこで、仕方なくあたしがこの世界に来て一ツ目巨人に助けられたと報告した。

 決して、一ツ目巨人を討伐しない事を条件に。


「ふむ、左様でしたか。本当にアズサ様は運の良い方ですな。魔物に捕まったら命を落とすのが普通でございますのに」

「運の良さもそなたの特殊能力の一つに数えて良さそうだな。では、隕石の数をいかが致そう?」

「実は、申し遅れましたが、隕石の内、二つは地上に落ちて来る前に燃え尽きたようなのです。少なくとも地上には達していないようです」

「それは誠か!?」

「はい、先代が地中から魔物が出て来た時の為に各地に魔道具を設置致しました。これは、地面に起きた振動を計測する物なのですが、この魔道具の情報と隕石の軌道を比べました所、二つは燃え尽きたか、地上に着く前に魔物に食われたのではないかと思われます。しかし、魔物が食べたのなら、怪物が出現する筈ですが、そのような報告はありません。従いまして、空中で燃え尽きたと考えて良いかと思います」

「わかった。では、隕石は三つ地上に達する前に燃え尽きたと発表しよう。集めるのは六つだな」


 その日の宮廷では、あたしが病から回復した事、六つの隕石が落ちた事、神のお告げで落ちた隕石を集めなければならない事が発表された。


「神はアズサに隕石を見つける道具を授けた。よって、アズサを捜索隊の顧問として同行させる。捜索隊の隊長は、、、」


 こうして、五十名ほどの捜索隊が組織された。


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