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主人公死亡のお知らせ

 何の準備もしてはいけない。何の準備も無しにこれを書くのがよろしい。だからあなた方は決意もせずにただこれを読み上げる。あるがままではなく読み上げるままに。その際どんな書き手もどんな責任を負わないし、あなたの恋路を妨げない。

 誰も何も言わないが言われたままに見よ。


 食われると思って仰け反った。実を言うとそんな気はしていた。これは理解ではなく予知であった。夢における反射は即ち失望であった。いいや夢の裏切りこそが夢の有する反射であった。

 私が仕向けたのではない。私は夢において、夢という自意識の切っ掛けに過ぎなかった。つまり彼女は彼女のためにキスを取り止めたのである。私はそれについて後悔する権利を持たなかった。


 空欄を置いてみても大した時間は経っていない。目や耳を閉じて寝転がってみてもその様な素振りしか経過しない。ああ私は専ら賭事に、賭けることだけに負けたのだ。


 それでも朝は目盛りを食った分だけ暖まって、ただ今は夏を甘く見積もった事実を隠蔽する途中。

 毎朝決まったベタ付きを知らぬ間に着せられて起きるが、今朝そうならぬ気のしたのは果たして気のせいか。あるいは何のせいか。

 こうして寝起きというありふれた悲劇を尚も劇的に飾り立ててみせるのも、それ自体では単に疲れているから。厄介な視界を無視するために聖書みたく言ってはみても、見ているを無視しているだけであった。

 もうそろそろ行き過ぎてしまえば勘違い恋愛小説に成り損ねてしまった。だからちょっと完了形はお休みにしてラブコメに肖る。


 流行りのルサンチマンが適当な美少女に起こされたのなら、作者の遺伝的ポリシーが危ぶまれたのでこれは妹ではない。現に人間ですらない。

 「おはよう!あさだよ!」

 せめてもの容赦でひらがなで表示するそれはそろそろ液漏れ恐し。中々うるさくて喜ばしい。

 毎回毎回起床身支度に時間を食って、青春の青い表紙においてすっかり疲れ躊躇ってしまっているのは人類皆共通。私はそもそも起きていないのでこれに含まれない。

 例の如く遅刻の夢に苛まれて、乗った電車もこれで良いのか分からぬが、ただ今絶賛怪奇現象。

 長椅子右手の任意の少女甲は左手の任意の男、あるいは望む限りにおいて女、少なくとも主人公に頭突きを食らわせて、しかも全く過剰にドラマチックに出血して見せたから、ただ今一室に二人っきり。それといっても直ぐ謝って去って行ったので、ただ今駅員さんに絆創膏を貼られながらそれとは別の二人きり。

 仕方が無い。去って行った少女は少々大掛かりな揺り籠に加速せられて私を突き飛ばした。これがデウスエクスマキナであって構わぬことには構わぬが、未だ何も始まっていない。少なくともまだ寝る時間ですらない。

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