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2話 高篠雫は孤高の少女

 クラスで1番の美人と評判の高篠さん。

 そんな彼女とお付き合いしているなんて、この俺自身でさえも、未だに信じられていないわけだけど。


 …勿論、分不相応にも惚れてしまったのは、俺の方だった。




♢♢♢




 いつからだっただろうか。

 同じクラスになったときから、綺麗な子だな、と密かに気になっていたのは確かだけど、そのときはまだ『好き』ってわけではなかったな。


 大村くんが率いる男子の輪の中に入らなかった俺は、入学早々お世辞にもクラスに馴染んでいるとは言えない立ち位置となり、その結果、気の合う数人とつるんでいないときは1人でいることが多くなった。だからそんな俺は、なんとなく人間観察をすることが多くなった。


 はじめは男女構わずぼんやりと見ていた俺だったが、いつしか高篠さんのことばかりを目で追うようになっていた。


 高篠さんも俺と同じで、皆とは群れずにいるタイプだった。彼女の周りにいる子も大人しい子や悪口を決して言わないような子ばかり。



 彼女ほどの美貌をもってすれば、もっと楽に生きられるだろうに。



 真面目な高篠さんを見ていると、いつもそう思ってしまうのだった。

 まあ、俺たち高校生のコミュニティなんて、所詮、強い口調で言葉を発した奴が正義になるわけで。

 それに同意できなければ、仲間とは認めてもらえずにグループから除外される。

 もし反対意見なんて口にしたら、強い敵意を向けられるに違いないし、そんなことで無駄な争いはしたくない。

 だから、俺らみたいな口数の多くない人間は、他者とできるだけ関わらないことを選ぶ。

 1人ないしは少人数でいるようになるのだ。



 そんな高篠さんの姿に、俺はどこかシンパシーを感じて…



 いや、本当のところ、俺たちは似ていない。そのはずなんだ。

 だって、俺は特別容姿に優れているわけではないし、高篠さんとは違って、異性の子に告白されたことなんて1度もないのだから。


 頭ではそうわかっているはずなのに、それでも俺は高篠さんのことを目で追い続けてしまう自分がいた。



 同性だったらきっと気楽に話しかけられるのにな、と思った。

 文化祭の出し物作りのときに、少しだけ話す機会はあったけど、席替えをしても彼女とは近くにはなれないし、なかなか接点がなかった。

 代わりに、大村くんみたいな奴とは何度も近くの席になるのに。

 俺は神様を恨んだ。



 もっと話してみたい、という気持ちは日に日に膨れ上がるばかりだった。

 初めは容姿が綺麗なのもあって彼女のことが気になっていたはずなのに、いつしかこんなに綺麗じゃなければ、変に意識せずに話せそうなのにな、とさえ思うようになっていた。



 そんなときだった。

 

 大村くんが高篠さんに告白する、とクラスの男子たちに向かって宣言し始めたのは。



 皆の中心人物である大村くんならもしかして…



 ふと、そんな考えが頭をよぎった。

 そしてそれが、高篠さんのことを『友達』の候補ではなく、『女の子』として強く意識していることを、俺自身がはっきりと自覚してしまった時でもあった。



 ―――だから、大村くんが玉砕したときは、彼には申し訳ないけど少しホッとした。



 まあ、少し落ち着いて考えれば、高篠さんはクラスカーストとか気にしない人だってわかりきったことだったし、大村くんの性格は高篠さんが好ましく思わないタイプだってことは、火を見るよりも明らかであった。

 後になってみれば、不安に思っていた自分がバカなだけだった。


 しかし同時に、俺の中に一度芽生えた、高篠さんを誰かに取られてしまうかもしれない、という焦りはどうしても消えなかった。

 高篠さんと仲良くなる、という過程をすっ飛ばして、いきなり恋人になりたいだなんて、あの時の俺は焦って、焦り過ぎて、どうかしていたのかもしれない。



 だが、誰よりも自分の直感を信じているのはこの俺だ。

 仲良くなってから告白、それが普通の順序なのはわかってる。

 しかし、仲良くなるためにはもう、いきなり彼女に告白するしか手段はないと、あのときの俺は思ったのだった。



 だから俺は、本当に勇気を出して告白した。

 自分自身のことについて、好きになれない点が多い俺だけど、あの日の俺のことだけは、心の底から褒めてやりたいと思う。



 そんな俺の一世一代の告白の結果は…



 1週間だけ考えさせてください、だった。

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