第1話 運命の少年少女
この作品は完全に自分の自己満足で書いている作品なので、話の内容に思うところはあると思いますがご了承ください。
一応、月1ペースで話を更新できたらいいなと思っています。
あと、文章力が皆無なのでご了承ください
第1部 プロローグ
西暦2019年 9月18日 東京
いつもと変わらない風景。
変わらない街並み。
何台もの車が行き交う道路。
色んなお店が建ち並ぶ繁華街。
高層ビルが建っているオフィス街。
そしてこそを行き交う人々。
忙しそうに電話をするサラリーマン。
放課後の学校帰り楽しそうに会話をする学生。
何も変わらない平凡な日常。
しかしそんな日常もいつかは崩れ去る時がくる。
それは突然にやって来る。
鼓膜が破れるかのような爆発音と共に東京の殆どが爆風に包まれ、きのこ雲が発生した。その日、東京に新型爆弾が投下された。第三次世界大戦が始まった。世界中で紛争が起きた。もちろん日本も例外ではない。燃え盛る炎、飛び交う銃弾、そして各所で爆発がおこる。兵士はもちろん、女性、子供関係なく沢山の人が犠牲になった。戦争は西暦2027年06月02日に終戦したが、この戦争で世界人口の半数が命を落とした。そして終戦から20年の月日が流れた2047年、荒廃した東京に変わって東京湾の殆どを埋め立てて完成した新東京都から物語は始まる。
第2部 バイク
西暦2047年 4月09日 火曜日 22時27分
俺の名前は桐瀬凛神。俺は今、新東京都の第6区にあるBAR、HEAVENっという場所にいる。壁紙の塗装は剥がれ掛けてるし、床には煙草の吸殻やゴミが、転がっていて綺麗な店とは到底言えない。新東京が建設された当初からある店らしい。そして、ここに来る客たちの殆どは不良やら無職の浪人達ばかりだ。そんな店の中にあるレトロアーケードゲームを俺はプレイしている。昔のゲーム独特の音が店内に響き渡る。この不思議な音は昔のゲームによく使われたていたらしい。俺はこの音が何気に好きでこのゲームをプレイしている。
リンカ「ん?」
視線を感じ画面から視線を逸らすとそこに、いかにもやばそうな男の人が、こっちを見ていた。男の目は血走っていて口をポカーンと開けながらこちらを見ている。おいおい、あれは、やべー薬やってるんじゃねーのか?そんなことを思いながら、ついその人をガン見してしまった。
客の男「てめぇ、なにみてるんだ!?ああ?」
男は急に不機嫌になったのか、俺を睨みつけ、怒鳴ってきた。まずい、めんどくさいし、ここは適当にあしらっておくか。
「あー、何でもないです。アハハ……」
軽く愛想笑いながら、視線をゲーム画面にもどす。こんな所で面倒ごとは、ゴメンだからな。相手にしないでゲームに集中するか。あと、少しで今月の記録を塗り替えられる。すると店の扉が開き、一人の黒髪で短髪の男が入ってきた。その男は真っ直ぐ俺の方に、歩いてくる。
俺はゲームを中断して男の方に視線をやり待ちくたびれた感じで話しかけた。
リンカ「やっと来たか、逢沢」
逢沢は少し笑いながら
アイザワ「悪いな、集まるのに時間がかかって」
リンカ「皆、集まったのか」
再度、逢沢に確認をとった。
アイザワはもちろんという顔でうなづいた。そして、俺とアイザワは店を出ようとした時に店のカウンター奥でテレビを見ていた、マスターと思われる人が、不満そうな顔でこちらをみている。それを見た俺は軽くお辞儀をする。
リンカ「今度はちゃんと何か注文しますから〜」
っと言ったものの正直こんな店で注文したら何が出てくるかなんて想像もしたくなかった。たぶん、いや、絶対不味い。俺はあくまで待合せでここにきてるだけ。このバーはほぼ廃墟に近い雑居ビルの地下にある。バーのドアを抜け階段を上がり外に出る。スグ右に曲がった所にある路地に4台のバイクが止まっていてそこに、男2人が話している。そのうちのバイクに跨っている一人が、俺達に気づき、手を振りながら、俺に話しかけてくる。
バイクの男「お、リンカ、待ったか?」
アイザワとこの2人は俺のバイク仲間だ。
リンカ「いや、そんなに待ってない」
俺は軽く手を振り返しながら答えた。俺は4台あるバイクのうちの1台に近づく。青色がメインで白と黒のラインが入っている、フルカウルのバイク、これが俺のバイクだ。
バイク仲間「そういえばリンカの電気バイクまた、カスタムしたのか?」
仲間の一人が俺に訪ねてきた。
リンカ「ああ、今回は新型の強化セラミックモーターを入れたから出力が爆上がりだ」
自慢げに答えた。自分のバイクに興味を持ってくれるのは嬉しい。今の世の中、電動バイクが主流になってきている。俺は自分のバイクを乗ったりカスタムしたりするのが好きなのだ。
するとアイザワが皮肉そうに。
アイザワ「でもまた、乗りづらくなったんじゃないのか?」
俺のバイクはカスタムをして出力、つまりスピードを上げてる変わりに、乗りづらいバイクになっているのだ。
リンカ「まあー、ヘタにアクセル開けるとコントロールを失ったりするけどな」
俺は苦笑いをしながら答えたが、すぐにドヤ顔で。
リンカ「まあ、俺にしか扱えないピーキー過ぎるバイクになったってことで」
それを聞いてアイザワは呆れた顔をしてため息をつく。そして俺はバイクに跨りハンドルの右側にあるスタートボタンを押した。モーターの音が路地に激しく響き渡る。このモーターエンジンの音がたまらない。俺に続いて他の仲間も皆、自分のバイクのエンジンを掛け始める。エンジンの音で、俺は気分が高まってきた。バイクを道路の方面に方向転換して準備を整える。全員の準備が整うのを確認する、全員の準備が整うとアイザワがテンションを高めにして叫ぶ。
アイザワ「お前ら、いくぞ!!」
叫び声とともに皆が一斉に返事をする。アクセルを開けると、バチバチといいながらバイクのタイヤからスパークが出る。今日もいい感じだ。そう思いながら俺はバイクをウイリーさせる勢いで、一番乗りにバイクを発進させ路地から、道路にでて一気に加速する。仲間も俺のあとを追ってついてくる。さぁー楽しい夜の始まりだ。バイクに乗ると嫌なことを忘れられる。自由を感じられる。だからバイクは楽しい。俺たちはバイクで夜の街へと走り出したのだった。
第3部 取引
22時55分
新東京都の第5地区に位置する、新東京湾のコンビナート。そこの三階建ての建物の屋根に長い黒髪の高校生くらいの少女が立っていた。黒い制服らしき服装で腰には、日本刀を持っている。少女は右耳に、イヤフォン型の通信装置を付け誰かと話している。
少女 「目的の場所に到着しました」
通信機からは男の声が聞こえる。
通信機の男「了解。今日の任務について改めて確認したいんだが、覚えているよな」
少女「はい、今日はこのコンビナート付近の倉庫でマフィア同士の取引があり、その内、片方のマフィアの幹部、豊田っていう男が来ているので。その人物の拘束ですよね」
少女はポケットから携帯端末を取りだし、画面に表示されている任務の内容を確認している。
画面には、コンビナート周辺の地図や、対処人物、マフィアメンバーの数や写真っといった様々な情報が載っている。
通信の男「その通りだ。しかし、いつもなら表舞台に立たないはずの大物が今回の取引に現れるってことは、相当やばいブツの取引なのかもしれない。心して任務にかかれよ」
少女「分かりました。では、行ってきます」
少女は通信を切ると屋根の近くにある、足場の様な所を見つけては身軽に飛び移りながら建物から降りていった。
コンビナートの第三倉庫と書かれている倉庫の前に、黒いセダンの車が5台ほど止まっている。そして黒いスーツを着てサングラスを掛けた男達が複数人いた。男達は皆、重々しい雰囲気をだしている。
スーツの男「取引の物を」
男がそう言うと取引相手側の一人の男が少し大きめなブリーフケースに似たケースを、車の後ろのトランクから、取り出して持ってきた。
スーツの男「中身を見せろ」
取引相手の男「まずは、金の確認だ」
スーツの男「……っ」
男は不満そうに舌打ちをし、ポケットからカードを取り出す。
スーツの男「このMカードに入ってる。何なら今ここで確認してもいい」
しかし取引相手の男は受け取ろうとかしない。
スーツの男「どうした?」
取引相手の男「俺たちは現金主義だ。電子マネーなんかでの、取引はできない」
その言葉に対してスーツの男は声を荒らげる。
スーツの男「ふざけるなぁ!!そんな話きいてねぇ!第一このオールキャッシュレスが進む世の中で現金を、しかもそこそこの大金を、手に入れるなんて、出来るわけがない!」
取引相手は動揺することなく話を続けた。
取引相手の男「現金がないなら、この話は無かったことするまでだ」
スーツの男「舐めた真似してんじゃねぇぞ!!」
スーツの男がポケットから拳銃を構え他のメンバーに合図を出すと全員同じように拳銃を構えた。
取引側の男達もそれにあわせて全員が拳銃を取り出す。
緊迫とした空気が流れる。
「やめたまえ」
止まっている車の1台から声が聞こえた。
ドアを開けて降りてきたのは髭を生やした、40〜50ぐらいの男性だった。取引側の男達は拳銃を下げた。
取引相手の男「豊田様、ここは危険です。ここは我々に」
男は心配しそうに声を掛けたが
豊田「大丈夫、ここは私が話そう。」
っといい拳銃が向けられているのにも関わらず相手の方に近づいて行く。
スーツの男「お前が上司か?どういうことか説明してもらおうか。」
豊田「まあー、落ち着いてくれ。確かに今の時代、現金を揃えるのが難しいのは百も承知だ。だが、私達は今の電子決済の方法を警戒しているのだよ。例えば、このMカード、中に何らかのウイルスが入ってないとは完全に否定は出来ないだろう。それなら何も無いアナログの紙の方が、かえって安全ではないかい?」
スーツの男は少し納得したように拳銃を少し下に向けた。
豊田「確かに事前にこの事を報告していなかったのは詫びよう。少しばかり時間はかかってもいいから、どうか現金を用意してもらいたい」
「その必要は無いです」
いるはずのない若い女性の声が聞こえる。
この場にいた全員が声のした方を向く。
そこには日本刀を持った、黒髪の少女が立っていた。
全員何故ここに少女がいるのかが分からないって顔をする。
スーツの男「なんだ?貴様!」
少女はそんな男の問いかけを無視して豊田に向かい話をした。
少女「豊田さんですね、貴方を拘束します」
その言葉を聞いて取引側の男達は即座に豊田を護るように囲んだ。
取引相手の男「娘、本気で言ってるのか?」
少女「少女勿論本気です」
男と少女は互いに睨み合った。
そこにスーツの男が割って入ってきた。
スーツの男「小娘が何気取ってるんだ?とっとと消えな!」
少女は男に冷たい眼差しを向け、面倒くさそうに警告をする。
少女「貴方達のような小物には用はありません。怪我をしたくなければ、さっさと帰ってください。」
スーツの男「んだとーてめぇー!殺してやる!おい、てめぇら、こいつを殺せ!」
その言葉にスーツの男とその周りのメンバーは少女に使って走ってくる。
少女「はぁ……しょうがないですねー。本当はここまで騒ぎを大きくするつもりは無かったん出すけど」
少女は手に持っていた刀を抜いた。刃毀れ一つない新品同様の刀が夜の月に照らされている。そして刀を構え呼吸を整える。
少女「黒龍式剣術、参ノ型4番、連複刻斬」
少女は複数の相手を一瞬で斬った。
スーツの男「ぐぁぁ!」
斬られた男達の血飛沫が飛び、周りの壁や床に散布する。少女を襲ってきた相手は全員、倒れた。少女の透き通るような青い目で倒れた男達を見おろしていた。
少女「女の子に手をあげるなんて最低です。でも大丈夫ですよ。全員致命傷ではないので」
まじかで見ていた、豊田達は驚いていた。無理もない、銃を持った大人の男達が、たった一人の女の子に、やられたのだから。
少女は再び豊田の方を向く。
少女「豊田さん、来てくれますね。」
豊田は言葉も出なかった。
取引相手の男「撃て!」
その合図でメンバー達は銃を少女に向けて容赦なく発砲した。この状況では躊躇などしていられないと思ったのだ。倉庫中に拳銃の音が響き渡った。しかし怯むことなく少女は素早く走りだし、弾を避けながら、豊田達の方に向かっていく。豊田達はその光景に相当焦りを見せている
豊田「な、なんだと……」
取引相手の男「お前ら時間を稼げ!」
男たちは皆、取引相手の男の前に出て、拳銃を撃ち続けた。しかし少女は尚も弾を全て避け続けながら刀を鞘に納めそのまま居合の構えをとった。
少女「黒龍式剣術 壱ノ型ーーー」
しかし技を出す前に取引相手の男が何かを投げた。
少女「!?」
少女はそれがすぐに閃光弾だと気づき目を塞いだ。倉庫の中が眩い閃光に包まれた。他の男達は皆、目を眩ませた。それと同時に1台の車が走り去る音が聞こえた。 目は見えなくても何か起きたか少女には予想できた。取引相手の男が閃光の隙をついて豊田を車に乗せ走り去って行ったのだ。
少女「しまった!」
すぐに目を開けた少女はすぐさま車を走って追いかけた。しかし車に走って追いつけるわけがない、とすぐに気付いた少女は耳に付けているイヤフォンを使い通信を始めた。通信相手は、さっき話していた男だった。
少女「すみません、逃走されました」
通信機の男「おいおい…マジか……仕方がねぇ、プランBだ。すぐに車で向う。相手の車はGPSで追ってるから、お前は合流地点まで来い。」
少女「分かりました」
少女は携帯端末を確認し、合流地点まで走った。
第4部 事故
23時26分
あれから1時間近く走った俺たちは、第5区にある新東京湾沿いの環状道路を走っていた。4月とはいえこの位の時間になってくると寒くなってくるな。そろそろどこかで止まった方がいいかな。一番先頭を走っていた俺は後ろのメンバーの様子を見ようとバイクのスピードを少し緩めミラーを確認する。すると逢沢のバイクが勢い良く近づいてきて俺を追い抜いていったのだ。
リンカ「おい、アイザワ!」
逢沢は嬉しそうに俺を見ながら走ってた。恐らく俺の前を取った事が嬉しかったんだろう。大きめな交差点が見えてきた。この交差を過ぎた先に、確かコンビニがあったはず、そこで止まるか。俺はそれをアイザワに伝えようとした、その時、先に交差点に進入したアイザワのバイクに横から黒いセダンの車が突っ込んできた。
聞いたことがない鈍い音、そして宙を舞ったアイザワは、地面に叩きつけられた。まわりには衝突で破損した、バイクの部品などが散乱しバイク本体は地面を擦りながら信号機に激突した。俺たちは道の真ん中だろうと関係なく急いでバイクを止め、アイザワの方に駆け寄り、数人でアイザワを持ち上げ、路肩へと運んだ。その後はひたすらアイザワに呼びかけた。
リンカ「アイザワ!しっかりしろ」
幸い、目立った外傷はなかった。
アイザワ「……ぁぁぁ」
どうやら意識もあるようだ。しかし先まで俺たちの信号は青だった。ということは、車の方は、赤信号だったはずだ。つまり車の信号無視って訳だ。俺は事故を起こした車の運転手に話を聞こうとし車に目を向けると車はまるで何かから、逃げるように、そのまま凄い勢いで走り去ってしまった。あれ?これってひき逃げだよな。
バイク仲間「キ、キリセ、ど、どうする?」
仲間は焦って俺にどうするか、聞いてくる。
この状況だ、焦る気持ちは、分かるが俺は焦りよりも逃げた車に対する怒りの方が強かった。
リンカ「あの野郎… お前等、とにかく救急車を呼ぶんだ!」
俺はそう仲間に指示をだしながら、バイクに飛び乗る。
バイク仲間「キリセは、どうするんだ」
リンカ「俺は、あの車を追い掛ける。このまま逃がしてたまるかよ」
俺はバイクを、急発進させ車を猛スピードで追いかけた。モーター音が激しく唸り、ホイールからスパークが出る。この時間帯だから車通りがほぼ無いため追いかけやすい。軽く100km近いスピードは出てた。すぐに車の後ろを捉えた。黒のセダンだ。あきらかにわかりやすい車だったからすぐに分かった。
リンカ「見つけた!」
俺はさらに加速し、車のすぐ後ろについた。
俺はすぐに止まれとジェスチャーをしたが車はそれを無視した。 くそ!余計にイライラしてきた。
リンカ「この野郎、だったら強引にでも」
俺は車の右側につき、運転席のドアを思っきり蹴った。
バイクに跨りながらとはいえ、相当力強く蹴ったため、車のドアは凹む。幅寄せされて俺まで事故るのは嫌なので、一旦車の後ろにまわった。俺の蹴りが効いたのか、車はスピードを緩め、そのまま停止した。俺もそのままバイクを止める。車のドアが開き、中から男がでてきた。俺もバイクから降りた。
男はサングラスを掛けスーツをきた人だった。
男「何の用だ?」
その第一声に俺は再び怒りを覚えてた。こいつふざけているのか?
リンカ「何のようだじゃねーよ!人を引いておいてその態度はなんだ?」
男「こっちも取り込み中だ。そんなことに構ってる暇はない」
俺は怒りに任せて思ってる事をそのまま相手に言ってやった。
リンカ「んなの知ったことか!友達は怪我してるんだよ!今、救急車と呼んで時期に警察も来るぞ!さぁ、はやーーー」
俺が喋り終わる前に男は胸元からサバイバルナイフを取り出す。
男「小僧、これ以上関わるな。命が欲しかったらとっとと立ち去れ」
へぇー脅しね。
てか、あんなナイフを持ってるなんて、ただもんじゃないな。
リンカ「お前、マフィアだろ?」
男「だったらどうした?」
リンカ「別にどうもしないさ。マフィアだろうがやった事の責任は取ってもらう。あと一つ覚えておきな。俺は、脅されると燃えるタイプだって事を」
俺はドヤ顔で男にいった。
男「そうか、ならば仕方がない」
男はナイフを振りかざす勢いで俺に向かってきたが、こんなの俺からしたらこんなの余裕だ。動きが単純。
リンカ「へへ、遅い。」
男「!?」
リンカ「龍神式格闘術 参ノ型3番 風神舞」
振り下ろされたナイフを受け流し男の腕を掴みそのまま男を投げた。男は空中で一回転し、背中から地面に叩きつけられた。
リンカ「へへー、どうだ」
男は気を失っている。
「まさか、そんな事が…」
後ろから声がした。
リンカ「ん?」
俺は後ろを振り返る。そこには車から降りてきた、中年のおっさんが唖然した顔で俺を見ていた。
中年の男「ま、まさか。変な技を使う奴が他にもいたとは。」
中年のおっさんは悪夢を見ているかのような顔でその場に立ち尽くして震えていた。変な技ってまさか、俺の格闘術の事か?すると遠くから見る限り古い車が走ってきた。
あれは、ガソリン車、全世界7割程が電気自動車になりつつあるご時世にガソリン車とは珍しい。今にも壊れそうなエンジン音、マフラーから出る排気ガスの匂い。この匂いを嗅げるのは今や貴重だな。車は俺らの近くで止まり、運転手席から30代後半ぐらいの男が降りきた。男は周りをひと通り見渡し、しばらく考えた後に、俺に声を掛けてきた。
車の男「おい、それはどういう状況だ?」
リンカ「いや、まずあんたは、誰だ?」
この状況自体は俺も知りたいんですけど。
車の男「これ全部お前がやったのか」
さっきから質問責めだなー。
リンカ「ああ、そうだけど。」
「オズさん、何をやっているんですか?」
車の中から女の子の声が聞こえた。すると助手席の方から黒髪の女の子が降りてきた。
リンカ「え?」
少女「あ、」
俺はその女の子の事を知ってる。そして女の子も俺の事を知っている。
リンカ「もしかして、黒咲哀?」
少女「先輩、何やってるんですか?」
第5部 幼馴染
4月10日 0時05分
あれから、すぐに警察がやって来て俺を襲おうとした男や、豊田って男を、連行していった。
俺は、事情聴取でもされるかと思ったが、古い車に乗っていた、おっさんが話を付けてくれたみたいでそんなに面倒な事にはならなかった。
アイザワの方はあの後、すぐに救急車で運ばれたらしい。幸い命に別状は無かった。俺は道の端っこで通話をしている。
リンカ「うん、そうか。良かった」
バイク仲間「これからどうする?」
リンカ「今日はもう解散でいい」
バイク仲間「分かった。また」
リンカ「ああ、またな。」
俺は通話を切り、アイの方へと歩いて行く。アイは、俺の一つ下の幼馴染だ。住んでる家が近くな為、昔から交流はあったが、そこまで仲がいいって訳ではない。そして俺が高校に上がってからは、尚更会ってない。でも、一昨日あたりに、俺の高校で入学式があり、その時にアイを見かけた。でも話すことが特に無かったから話しかけないでいた。だからこうやって直接話すのは本当に久しぶりだ。
リンカ「まさか、こんなところで、アイに合えるなんて」
道路の街頭に寄りかかってるアイは冷たい目線で俺の方を向く。
アイ「私だって、こんなところで先輩と会ってしまうなんて、不幸ですよ」
相変わらず、愛想がない、というか口が悪い奴だな……アイは昔から口が悪く愛想がない性格なのだ。そのせいで昔から友達も少なく、いつも一人でいるイメージしかない。
アイ「ところで先輩は何してたんですか?バイクに乗って可愛い女の子を、ナンパしてたんですか?」
リンカ「お前、俺をいったい、なんだと思ってる」
たわいもない会話をしていると車のおっさんが警察との話がすんだらしく俺たちに話掛けてきた。
車の男「なんだ、お前ら知り合いか?」
アイ「はい、幼馴染なんです。でも今となっては消し去りたい過去ですが。」
おいおい、それは酷くないかー。
車の男「おい、お前。今日の事は絶対に誰にも言うなよ。俺の方で手は回しておいたからこの事が学校とかに報告される事はない。いいな。」
学校に連絡がいかないのは、有難いが、俺にも聞きたいことがあるんだけどなー。
リンカ「あんたは、いったい何なんだ?そして何でアイと一緒にいるんだ?」
車の男「たく、質問が多いな。俺は小津天元だ。そして、アイは俺の……なんて言うんだ…仕事仲間」
名前だけ名乗られてもなー
てか、なんだ仕事仲間って?
アイはまだ、高校生だぞ?
バイトって事か?
リンカ「仕事仲間ってどういうーーー」
オズ「おっと、これ以上は、聞くな。」
おっさんは俺の質問を途中で切った。
だが、俺もここで押させる訳にはいかない。
リンカ「いや、そんなこと言われでも、納得できる訳………」
その時、目の前に何かを向けられた。
俺はそれが一瞬何か分からなかったが、すぐに理解出来た。
アイが刀を抜いて切っ先を俺の方に向けていたのだ。
アイは相変わらず冷たい目で俺を見ている。
人に刃物を向けているのに何も思ってないような感じだ。
リンカ「アイ、どいうことだ」
アイ「これ以上知ってしまうと、先輩の首が飛びますよ」
恐らくアイの言ってる事は本気だろう。そこまでして隠したい事があるんなんてな。まあ、女子校生がこんな刀を、持ち歩くなんて、どう考えてもおかしいけどな。
リンカ「なぁ、アイ。脅してるのか?だったら無駄だぞ。知ってるだろ?俺は脅されると燃えるタイプだって事を」
アイ「知ってますよ。先輩が好奇心旺盛のバカだって事は。でも、正直先輩の事は斬りたくありません。だから、警告したんです」
なるほどな。本当は優しいんだよな、愛想はないけど。まあ、流石に今日は、引いておくか。
リンカ「分かった。これ以上、何も聞かない。だから、刀を収めてくれ。」
そう言うと、アイは刀を鞘に収めた。
心做しかアイは、安心した表情だった。
オズ「よしそれじゃ、アイ戻るぞ」
アイ「わかりました」
オズのおっさんは車に乗り込みエンジンを掛けた。本当に壊れそうな音だな。
アイはその車に乗り込む直前、俺に向かって小声で。
アイ「先輩。恐らくまた、会えると思います。あなたと私は同じ、運命には決して抗えない」
同じ?
どういう事だ?アイはそう言うとおっさんの車に乗り込み、走り去ってしまった。俺は夜中の道路に一人。
静に風が吹き、遠くでおっさんの車の音が聞こえる。アイの言葉の意味、あれはどういう事なのだろう。そんな事を思いながら、俺もバイクに跨り帰路についたのだった。
俺はこの時、この言葉の意味を知る術は無かった。
つづく
第1話 完