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封印刑の勇者殺し  作者: スズキジン
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4話 仙人峡へ



先ほどの町から20kmほど離れた場所に、仙人峡がある。


仙人峡は、その名の通り仙人が住んでいたとされる谷で、峡谷の洞窟を利用し人々が住んでいる。


そこに住む人たちは仙人の武道や仙術を代々受け継いでおり、日常的に鍛錬を行っている。


勇者の仲間であるシンはこの峡谷の生まれで、武術の達人だった。だが彼は仙術がめっぽう苦手で、仙術においては歴代でも1位を争うほど才能がなかったらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


歩くこと数時間、峡谷が視界に入ってきた。


「ようやく着いたか。流石に休みなしとは思わなかった」


俺は衣服がボロボロになり、所々に傷ができていた。


「ホント、伝説の勇者の右腕だった男とは思えないわね」


ミラージュは傷一つなく、衣服にはほつれすらない。余裕そうな口振りで、嘲笑している。


「仕方ないだろ。上手く力が出せないんだ」


ここに来るまでに、何十体もの魔物に襲われた。俺は200年封印されていた影響で本来の力を全く出せないでいた。体が思った通りに動かないことはもちろん、魔力も上手く扱えない。そんな状態を打破するため、道中に出会った魔物は残らず相手をし、実践により少しでも感覚を取り戻そうとしていた。


「にしても、やられすぎよ」


「俺が死にかけるまで助けないからだろ!流石に無理させすぎだって!」


今の俺は低級の魔物すら十分に相手できないレベルだ。そして、この付近の魔物は低級から中級の魔物が蔓延っている。ましてや、群れで襲ってくる場合が殆どだ。


ここまで、俺の力だけで倒せたのは数匹で、他の魔物は全てミラージュが一撃で倒していた。


俺が殺されるギリギリ手前で。


「お前って治癒魔法使えないのか?」


「使えないわ。黒魔術使いはそういう運命なのよ」


「ミラは使えてたんだけどな。あいつがおかしいのか」


黒魔術を使用する魔術師は、治癒魔法は使えないとされている。黒魔術を覚えてしまうと、魔法回路が治癒魔法を使うのに適さなくなるらしい。ミラは何故か両方使えたが。


「同じ血筋でも別人なんだから当たり前じゃない」


魔術の特性は子孫に受け継がれやすいといわれているが、確実ではなかったという事だろう。


「仙人峡についたら、住人に頼んで治してもらいなさい」


仙術には治癒の効果があるものもある。1人は使える人がいるだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


仙人峡の見た目は、至って普通の峡谷と言える。ただ、人が住んでいるため多くの洞穴が存在し、穴の前には衣服が干してあったり、調理場があったりする。


「すいませーん」


俺は1番近くの洞穴に向かって呼びかける。


「...どなたでしょうか」


中年男性と思われる声が洞穴から返ってきた。

ミラージュは小声で俺に話しかける


「一応、正体は隠しときましょう」


俺はそれに頷き、洞穴に向かって再度話しかけた。


「魔王軍に対抗するため、修行の旅をしている者です。その一環で、ここを訪ねました。」


そう言うと、洞穴の奥から白い道着を着た男性が出てきた。


背丈は小さいが、鍛えてあげられた筋肉が成す所作が彼のその道を極めし者であることを示していた。


「初めまして。コウジと申します。そのお姿を見るに、道中かなり無理をされたようですね。」


話しながら、彼は手を差し出した。


「初めまして。フェイ(偽名)といいます。世界の置かれた状況を考えれば、この程度、無理に入らないですよ」


「さっき無理させすぎとか騒いでたじゃない」


とボソッと言ったのが後ろから聞こえてきたが、気にせずコウジの手を握った。


「おや、貴方からはとてつもない潜在能力を感じますね」


「本当ですか?それは嬉しいです...おぉ!?」


手を握った一瞬のうちに、身体中が癒えていくのを感じた。


「凄い、一瞬で傷が治りましたよ」


「ええ。治癒の術は私が最も得意としていますから」


以前訪れた時も仙術による治癒を受けたが、その時は周囲で舞を踊ったり、句を読むなど儀式を行っていた。10分ほどかけて体を治してもらった記憶がある。それと比べると、今回は異次元の早さだ。


「ここの長は貴方ですか?」


「この集落を仕切っているという意味ではそうです。ただ、偉いという意味で言えば、別の者が居ます」


「と、いうと?」


「仙術が苦手にもかかわらず、武道を極められ、この村の歴史上で最高齢に到達した方です」


その特徴には覚えがあった。


「まさか...」


「お心当たりがありますか?元勇者の仲間だったシン様です」


本当に生きていたことに驚愕したが、同時にまた会える事に嬉しさを抱いた。


「その方に会うことは出来るかしら?この世界のことで、お話を聞きたいの」


「ええ。大丈夫ですよ。今の時間ならまだ起きていらっしゃるはずです。ご案内します」


そうして俺たちは、峡谷の奥地にある、シンの棲家へと向かった。

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