これ以上堕落しないために勢いで『追放する!』といってみたけれど、もう遅い!~僕っ娘勇者(女)は、超優秀な荷物持ちに依存している~
題名ネタ作品です。
あらすじをご覧下さい。
「レクサス……君をこのパーティから……
追放する!!」
「「「「えぇ!?!?」」」」
僕の『追放』の一言に、驚愕したのは指名したレクサスだけではない。
パーティ全員である。
僕はリオ。神託を受けた正式な勇者である。
リオノーラ・べネット公爵令嬢だった僕は、15歳の時に『勇者である』という神託を受け、それからは『勇者・リオ』として生きている。同様に神託を受けた仲間と共に魔王討伐の旅に出ているところだ。
魔王がこの国の拠点としている城の、手前の小さな村の宿屋で僕は、荷物持ちのレクサスにパーティから抜けるよう強く迫った。
騎士・ノリス、魔法使い・サリヴァン、聖女・ミルカ……
──そして、何故か公爵家で僕の従者だったレクサス。
僕を含めた4人が神託からお役目を拝命したにも関わらず、レクサスだけは自主的に付いてきている。
彼には戦闘能力は皆無。
ミルカのような回復や防御に特化した魔法も使えるわけではない。
彼を置いていくのは当然のことである。
──しかし
「ダメだよダメダメ!! レクサスがいないなんて考えられないよ!」
「リオ様! なに血迷ってんです?!」
「レクサス様なしでなんて辛すぎますわ!」
レクサス自身は動揺を隠さないまま黙っているだけだというのに、皆は口々に僕を責める。
僕は机を強く叩いて声をあげた。
「黙らっしゃい!!!!」
その剣幕に皆が口を閉ざす。
「レクサスはベネット公爵家の従者だ! つまり、民・間・人!! 君たちは神託を受け使命を負った人間として恥ずかしくないのか?!」
「「「…………」」」
僕が吐いた正論に、皆物言いたげな顔をしながらも返す言葉がないようだ。気まずい空気が流れる中、レクサスがおずおずと前に出た。
「お嬢様……」
「お嬢様と言うのはよせ」
「リオ様、わかりました。 私はパーティを抜けます。 皆様も、お世話になりました」
レクサスは公爵家の従者らしく、恭しく皆に一礼すると、背を向け去っていく。止めようとするミルカを右手で制止すると、皆も諦めたように項垂れた。
──翌日。
「ううぅ……荷物が重いですわ……」
「こんなんじゃ戦えねぇよ」
荷物は装備、食糧、回復薬、調理品など大量である。ミルカとノリスがぶつくさと文句を言うのを、サリヴァンが諌める。
「文句を言うのではない……勇者様を見てみろ」
僕は大量の荷物を積んだ荷車を引いていた。
レクサスは超有能な荷物持ちであった。
彼はどこから得たスキルかはわからないが、『無限ポケット』なるスキルを取得しており、ありとあらゆるものを出した。
また、『無限ポケット』にはナマモノを保存することはできないのだが、調理も上手い彼のおかげで、捕らえた動物の肉と植物に詳しいミルカが採ってきた食べれる草を使い、美味しい食事にもありつけていたのだ。
休憩時には柔らかなソファに座りながら、ゆっくり身体を休めつつ美味しい軽食をつまみ、就寝時には『王都ウエストリヴァー』製のダウン99%・高級羽毛布団セット(※同じ柄の枕付き)に包まれて眠っていた。
それは非常に快適な旅であったが……ここからは戦いの本番。そんな旅行気取りの軟弱な精神では魔王は倒せない。
「彼を追放したのは僕だからな! 君らには辛い思いはさせんッ!!」
そう嘯いてみたところで、レクサスに適う筈もなく──荷を引いている僕の体力だけが無意味に減っていった。
聖剣がこんなに重いと感じたのは、いつ以来だろうか。
「どちらかというと、軟弱な精神でも以前の方が魔王を倒せたような……」
「しっ、可哀想だろ!」
しっかり聞こえている。気を遣わせているのが逆に居た堪れない。
「うう……面目ない……」
僕らは(特に僕は)その辺のスライムにも負けるのでは、という程疲れていた。
戦いよりも、移動で。
後悔していないと言えば嘘になる。
しかしこれ以上、民間人を危険な旅につきあわせることは僕の矜恃に反する。
王城手前までは意外な程にアッサリ着いたが、僕らはもうヘトヘトだった。
「一旦休んでから倒しに行こう……」
「ええ、そうですわね……」
僕らは厳しい訓練や戦いを経てここまで来ていた筈なので、荷物が重いとこんなに辛いとは思いもよらなかった。
考えてみれば長距離移動は今まで手ぶら、大きな戦いの際にはレクサスが出してくれた家具でゆっくり身体を休めてから挑んでいたのだ。
如何に彼の能力がチートだったかを思い知らされる。
(いかんいかん、僕がこんなでは……)
「──よし! 食事にしよう!! 腐っても元公爵令嬢の僕にお任せあれ!」
「公爵令嬢は料理しないよね?!」
「不安しかない!!」
「私がやりますわリオ様!!」
「ふふ……舐めるな! なにを隠そうこの僕は公爵家一の美食家、『神の舌を持つ女』と言われていたのだぞ!」
『神の舌を持つ女』と呼ばれていた事実が僕を奮い立たせる。
「いざ見せてくれるわ! 我が1000万の女子力を──!」
そして僕は包丁を手にした。
「ぐっ……!!」
──ブシュアァァァー!!!
飛び散る鮮血。
「今呻き声あげた!!?」
「なんか血出てない?! 出てたよね?!」
そりゃあ出るよね!
──ってくらいズッパリいった。
(……ふっ、この僕としたことが。 しかし皆をこれ以上不安にさせてはいかん)
僕は堪えることにした。
「ハハ、嫌だなミンナ、生肉ヲ切ッタダケダヨ~」
「絶対ウソだ!!」
「キャー! 血みどろじゃないですか?! 」
「アンタの肉なんて食べたくないですよ!」
結局ミルカに回復させられたあと、皆の制止を振り切って再び作る。ただし、包丁は取り上げられたので、キッチンバサミとピーラーでなんとか形にした。
「おあがりよ!」
勢いよくそう言って皆に出したスープみたいなものは、非常に残念な出来であった。
「うん……食べられなくはないよ……」
「そうですね……」
「素材感溢れる……と言いますか……」
神の舌と調理技術にはあまり関係がないことが実証された。
「……ねぇ、回復薬貰っていい?」
「僕も欲しいです。 最後の戦い前だし……いいですよね?」
「私もできれば……」
皆回復が速いので、普段はレクサスのおかげで自然と回復するのだが、この休憩では皆全くそんな様子がない。むしろ僕のせいで余計にグッタリしたようだ。
戦いの為にとっておきたいが、原因が自分なので言えず、肩を落としつつポーションを渡した──その時である。
禍々しい邪気を纏った一人の男が、城の上から悠然と降り立った。
「貴様ら…………」
長い漆黒の髪に大きな角──
なんと魔王がやってきたのである。
皆疲弊し、ミルカに至っては僕のせいで魔力を消費している。
(このままでは死……!)
息を呑む僕らに、魔王はとんでもないことを言った。
「──行商人だな?」
「「「「え」」」」
「フッ、よくぞここまで辿り着いた。 さあさあ早く商品を紹介するがいい!」
青白い肌を若干紅潮させ、興奮を隠しきれずに魔王はソワソワとしている。
そこになんだか毛むくじゃらの、貴族の様な格好をした獣人っぽいのがドスドスと音を立ててやってきた。
「魔王様ー! 勝手に出歩いちゃダメでしょ!! 」
「だって久しぶりに人間の行商が来たのだぞ!」
「んん?……なんだお前ら、迷い込んで来たのか? よく襲われなかったなぁ……」
「行商人は襲わないように触れを出しておいたのだ!(ドヤァ)」
「なに勝手なことしてるんです!? 人間共は盟約を破ってこちらを滅ぼそうと企んでるんですよ!?」
「盟約……?」
おもわず聞き返すと、毛むくじゃらは面倒そうに教えてくれた。
この城は魔界と我々の世界を繋ぐ扉であり、そもそもは『友好の証』だと言う。
基本的には魔界と世界は『不可侵』。
それが大昔交わされた約束。
この城以外にも幾つか扉となる場所は存在し、魔界の統治は魔王がしているものの……基本的に倫理が人とは違う。その為扉から外へ出た者に対しては、人間が好きなようにしていいらしかった。逆もまた然りであり、ダンジョンなどがそうだという。
「魔王城周辺もその地域に入るが、まあその……あの通り魔王様は変わったものが大好きでな……」
我々に説明をする間にも、私の引いてきた荷台を探っては、ミルカに頻繁に質問をしている魔王。それをチラリと見て毛むくじゃらは溜息を吐いた。
結局僕らは行商人に扮し、魔王は上機嫌で『王都ウエストリヴァー』製ダウン99%・高級羽毛布団セットを購入。多額の金銭を貰い受け、脱力をしたまま踵を返すことにした。
その際、今魔界で大人気の『魔王プリン』と、魔王コラボ『魔界Tシャツ』をおみやげに持たせてくれるという歓待ぶり。
魔王は『今なら先着30名様に!』と言いながら呪われた防具を寄越そうとしたので、それは丁重にお断りしたが。
「……つまり、悪いのは王の方なんじゃ……?」
「……お前もそう思う?」
「どうしましょう、リオ様……」
我々は途方に暮れた。
このままだと故郷に凱旋も叶わないが、だからといって命を賭して魔王に挑む気にはもうなれないでいた。
「とりあえず、この辺で一旦休もう……僕らは眠った方がいい。 今はそんな気がする」
僕は寝ずの番を自ら買って出た。『一番疲れているのはお前だ』と言われたが、一番迷惑を掛けたのも僕であるので譲れない。渋りながらも、(精神的に)大ダメージを受けた皆は、すぐに寝息を立てた。
──皆良い奴だ。
固い地の上に寝かせてしまった……『王都ウエストリヴァー製高級羽毛布団セット』がなくて申し訳ない。
三人の寝顔を見ながら、そんなことを思う。
全てが夢であるならどんなに良かっただろうか。
揺れる炎をぼんやりと眺めていると、楽しかった日々を思い出す。
その記憶は勿論公爵令嬢だったリオノーラの頃のことも沢山あったが、思った以上に旅の内容が多い。
そう、この旅は楽しいものだった。
辛かったのはかつて受けていた厳しい王妃教育や、勇者としての厳しい訓練の日々くらいなもので、勇者として旅立ってからは辛いことなど殆どない。
そして勇者としても、公爵令嬢としても……どちらの日々にもレクサスはいた。
そしてどちらにおいても、彼は僕を支えてくれていた。
物理面は勿論、精神面においても。
あれは僕が学園に通っている時だった。
「リオノーラ! 君との婚約を破棄させてもらう!!」
秋の収穫祭で、第一王子殿下が僕に婚約破棄を行った時。
「君がエイヴリル・バリー男爵令嬢に、ことあるごとに嫌がらせを行っていたことは既にわかっている!」
「おそれながら、仰っている意味がわかりませんが……」
謂れなき罪を被せられ、困惑するだけの僕の前に颯爽と現れたレクサス……彼は静かに口を開いた。
「──殿下、お戯れを」
「なんと言った? ……貴様、私が嘘を吐いているとでも?」
「嘘を吐いているかはわかりませんが、お嬢様ができないことは確か……この場にお嬢様がいることが、なによりの証拠です」
「なんだと?」
「授業の合間にも厳しい王妃教育を強いられているお嬢様に、そんな時間の余裕はございません。 こちらのスケジュールは王家から直々に仰せつかったもの……蔑ろにすれば直ぐに不敬と看做され、ただではすみません」
『従者でありながら学生である』という立場を利用して壇上に上がった彼は、鮮やかに逆断罪を行ってのけた。手際よく鷹を飛ばして公爵家に連絡を入れる事も抜かりなく行っており、僕に恥をかかせた第一王子との婚約は公爵家側から破棄。
僕はそれで満足だったが、慰謝料をたんまりふんだくったようだ。
殿下は『病気で療養』の為、僻地に送られた。
余談だがスケジュールは事実であり、その為に部屋や教師を使っていたが……実際はそこでゆっくりお茶を飲んでいることが殆どだった。
第一王子の成績と女癖を考えると『立太子前に降ろされる可能性が高過ぎて、やるだけ無駄』と判断し、教師を買収したのもレクサスである。ちなみに第二第三王子には既に優秀な婚約者が別にいる上仲も良いので、私に回ってくることはまずない。
第一王子の処罰がぬるいのは、僕がレクサスのおかげで優雅な学園生活を楽しんでいたからにほかならない。
殿下は可愛い女の子が好きであり、中性的とよく言われる僕のことは好きではなかったようだが、こちらも彼のことなどどうでも良かったのである。
派手派手しい顔面も、やたらと長い髪も好みではない。女の子みたいで。
その点レクサスは地味だが、凛々しくも可愛らしい顔をしている。身長も僕より低い位だが僕をなんなく担いだことがあるので、身体は案外逞しいのではないだろうか。
(レクサスの方がよっぽど素敵だな。 あんな素晴らしい男はいないのではないだろうか)
レクサスが作ってくれた焼き菓子は私の神の舌を唸らせ、レクサスが用意した寝床は、どこであろうと一瞬にしてピンとシーツが張られ、僕に集る虫には、その表現が比喩であろうとなかろうとレクサスは素早く叩き潰した。
まさに従者of従者である。
気付けばレクサスのことばかり考えていた。
(僕はレクサスが好きなのだろうか……)
ただ単に依存しているだけなのかもしれない。
仮にレクサスがなにも出来なくなっても、それでも側にいて欲しいと思えるのか。
(くだらない考えだ……)
そもそも僕はもうベネット公爵家の令嬢ではなく、勇者かどうかも怪しい存在だ。しかも自ら手を離してしまった。
依存しようにももう、どうしようもない。
自嘲気味に笑いを漏らすと、『お嬢様』というレクサスの声が聞こえた気がして、何故か涙が出た。
──この先のことを考えなければならないのに、なにを感傷に浸っているのか。
レクサスのことを考えるなら、『彼ならこんなときどうするか』であるべきだ。
「……レクサス、君ならどうする?」
「なにがでしょう、お嬢様」
「ふぅっ……ああぁぁぁッ!?!?!!?」
なんか目の前にいた。
「なんです!? 敵襲ですか!?!?」
「クソっ熟睡しちまったか!」
ビックリして叫んだ僕の声に皆が飛び起きる。そう、僕の声に──まがりなりにも我々は、神託を受けた勇者一行である。
気配を一切感じなかったことには、衝撃を禁じ得ない。
「…………あら?」
「「レクサス?!」」
気付いた三人に向けてレクサスはニッコリと笑うと、恭しく一礼した。
「皆様、お騒がせして申し訳ございません。 私、公爵家にお暇を頂いて参りました。 つまり、私個人の意志により皆様のお仲間に加わることをお許し頂きたく」
レクサスは非常に爽やかな笑顔のままそう言った。
「──そうですね…… 皆様は事が終わったらどうなさりたいのでしょうか?」
結局レクサスに相談した。
僕のこだわりや矜恃など、もうどうでもいいし、依存かどうかも今は些細な問題だ。
「私は……帰りたいですわ。 家にはまだ小さな弟妹がおりますの。 できるなら成長を見守りたい……」
「俺自身は帰らなくてもいいのだが……」
ノリスはミルカを一瞥してから顔を背ける。
今までは気付かなかったけれど、ノリスはミルカが好きなのだろう……と何故か急に思った。
「サリヴァンは?」
「う~ん、どちらでも構いませんが……このまま今の王家に使われるのは納得いきませんねぇ……リオ様こそお立場を考えたら微妙なのでは? 公爵家に戻られるにしても、勇者にしても、王家にとっては手に入れたい駒でしょう? ……そして戻るには魔王を倒さなければならない」
サリヴァンの最後の言葉にミルカが頭を抱える。
「それがまず問題ですよね……私、話してしまいましたもの。 魔王、あんなに無邪気に色々聞いてきたのが、なんていうか……お土産を持って帰ったときの弟みたいで……」
「ミルカ……」
気持ちはわからないでもなかった。
見た目は青年男性くらいだが、別れ際に見た魔王は『王都ウエストリヴァー(以下略)』を幸せそうに抱きしめていたのである。
『ふわふわであるぞ!』と言いながら。
「ふむ……」
レクサスは僕の意見は聞くことなく、少し悩んだ後でこう言った。
「──では、勝手に和睦を結んでしまいましょう」
「「「「ええええええ?!」」」」
「そんなことして大丈夫なの?!」
「勿論裏から手は回します。 そもそも『不可侵』の盟約を破ったのが王家であることを詳らかにしてしまえばよいのです。 公爵家にお暇は頂きましたが、繋がりがなくなったわけでもありませんし……それに、もうじき第二王子が立太子されます。 それを使いましょう」
「どういうことです?」
「即位を早めさせて差し上げるだけですよ。王宮には魑魅魍魎が沢山おりますから、殿下も早目に地盤を固めたいところでしょう」
「…………できるのか?」
僕の問いに、レクサスはいつも通りの笑みを浮かべる。
「問題ありません」
──レクサスは荷物持ち以外でも超有能であった。
再び魔王城に赴いた我々は、和睦(とは言っても不可侵)をすんなりととりつけ、レクサスが奔走している暫くの間、魔王城にお世話になった。
その後、第二王子が立太子と同時に即位。
宮廷の顔ぶれは一新し、前陛下は第一王子と同じく『病気療養』の為僻地へと居住を移した。
ノリスは領地を賜り、程なくしてミルカと結婚。ミルカの家族も近くに呼びよせ幸せに暮らしているようだ。
サリヴァンは『竜を飼いたい』と言って魔王城に世話になると決め、竜をしつけている。
魔王とも仲良くなり、魔王は暇つぶしの相手ができてとても楽しそうである。
そして僕とレクサスは──
「お嬢様、お食事ができました」
「だからお嬢様はやめろって……」
相変わらず魔物討伐の旅をしていた。
レクサスが何故僕の意見を聞かなかったか。
──それは和睦とは言え『不可侵』であり、魔王の統治がいい加減なのが前提である以上、どうしても扉から外へ出た魔物の被害が出てしまうことにある。
扉の数がそう多くはないことや、魔王自体がこちらに攻める意思が全くないので、被害はそこまで多くはない。
ギルドを作って対応するには規模が小さすぎるし、大体が騎士や鍛錬を積んだものでなんとかなるレベル。
それでも時々厄介な魔物が現れた時、僕が倒しに行くのだ。
「正直なところ……私はお嬢様のお側にいれれば、なんでも良いのですよ」
「ふん……」
僕の正直なところを言うなら、レクサスの言葉をそのまま信じてはいない。
レクサスにはその能力を含め、謎が多過ぎる。
魔王城でも感じたことだが、魔王がこちらに敵対心を持っていないにしても、そもそも何故すんなりと話合いに応じたのか──
実はコイツは魔王の縁の者ではないのだろうか。
だが真実を突き止める気は特にない。
「……側にいるなら『お嬢様』はやめろ。 ──名前で呼べ」
「はい、リオ様」
「…………様も、要ら、ない」
顔が熱い気がするのは、スープが熱いから。言葉が不自然に途切れたのも、そう。──心の中で自分に言い聞かせながら器を見続ける僕に、レクサスは「ふふ」と意地悪く笑った。
「──なんなんだッ?! それ……」
「リオノーラ」
「ッ!!」
「リオ」
……不意打ちだ。
残念なことにこぼしてしまったので、言い訳となるスープはもうなかった。
別にもう、依存でもいいと思う。
レクサスと旅をしていたい。
できれば、一生。
平民のひろろ様、ありがとうございました!
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