#6
数回、ティラノを殴りつけるが全くダメージを与える事は出来ない。
ティラノはアマネを両前足の爪で刻み付ける。
ザクッ、ガキィン、ガキィン
「ぐわっ」
アマネは<障壁を>を発動するが、一撃目の攻撃に<障壁>は間に合わずに左手を切りつけられ血を垂らす。
「アマネ大丈夫か?」
ティラノに乗っているクデロペはアマネを心配して助けに行こうと一瞬考えたが、アマネを信じて自らのやるべき事に集中する。
ガキィーン、ガキィーン、ガキィーン、ガキィーン
ティラノの頭や首元のに何度も何度も剣を振るうが、硬い鱗に阻まれて切る事も突き刺す事も出来ず全くダメージを与えれなかった。
ティラノは頭を大きく振った。
振り落とされたクデロペは着地に失敗して大きく体勢を崩してしまった。ティラノはその隙を見逃さず口を大きく開け鋭い牙で噛み殺しに行く。
「しまっ……」
ガキィン
アマネの<障壁が>間一髪間に合った。
クデロペを引きずりティラノから離れ体制を整える。
「助かった今のはマジでやばかった。 左腕大丈夫か?」
「うん痛いけど大丈夫、取れた訳じゃないし」
さて、ここまでだな。これ以上やるなら殺すよ。
馬車の屋根から弟子の戦いを観察していたカースドはティラノに向けて殺気を放つ。
アマネとクデロペに牙を剥き出しで唸り声をあげていたティラノは大人しくなり反転して逃げ出していった。
「助かったのか」
「たぶん」
アマネとクデロペは安堵し力が抜け地面にしゃがみ込んだ。
「ほいアマネはこれ飲んで」
「ありがとうございます」
師匠から貰った回復薬を飲み左腕の傷を治した。
「2人共よく逃げなかったね。上出来上出来」
「俺達今までも狩りで何回も死にかけてるし、なぁ」
「うん。だけど今回はラッキーでしたね。あのままティラノと戦ってたら僕達死んでたよ」
「しかし何でティラノはどこかに行ったんだ?」
「ふぁっはっはっはっはっは。よく気が付いたな、それは……俺様がグワッと殺気を放ってあいつがビクッてなってシュパパパパーと逃げ出して行ったんだな。この俺様、超強いカースド様に恐れをなしてな」
師匠の言っている意味が分からない、擬音も多し。
「師匠が追い返したって言いたいのか? はいはい、分かった分かった。凄いねー師匠、取り敢えず馬車で寝てろ」
クデロペは師匠の話を全く信じていない様子だ。
「うおっ、君達信じてないね。分かったここで待ってろ、さっきのティラノ切り刻んでくるから」
師匠はティラノの逃げた方角へ歩きはじめる。
「いやいや師匠止めて下さい。師匠の凄さは僕達よく分かってますので。 それに早くあの山まで行かないと」
歩く師匠にしがみつき引き留める。
「うーん、そだね。じゃあ少し休憩して出発ね、着いたら起こして」
なんとか師匠を引き留めることが出来て馬車の中へ入ってもらった。
休憩後、馬車を引いて山へと走り出した。
ガラガラガラ
「なあアマネ、俺の魔法なんだけど威力が上がってる気がするんだけど?」
「やっぱり、うん僕もそう思った。ティラノに<炎>打ち込んだ時、思わず『えっ』って言っちゃったし」
「だよな。威力上がってるよな魔力を使い切る訓練のおかげか?」
「だと思うよ。それにクデロペが食べられそうになった時、スッて横移動が出来てクデロペとティラノの間に入れたのは、反復横跳びのおかげじゃないかと僕は思うんだけど」
「だな。反復横跳びやってなかったら俺死んでたわ。アマネ俺達は確実に強くなってる、もっと強くなるぞ」
「おー」
ドンドンドン
「師匠着きましたよ、起きて下さい」
ガチャ
「ふぁぁぁぁ」
師匠は伸びをしながら馬車から出てきた。
「よく寝た。ってまだ麓やないかーい。山の中腹まで行って起こしてくれないと」
「えっ?道無いですけど」
「無いなら馬車を担いで行こうよ。考えたらわかるじゃーん」
「師匠よく見てみろ、あんだけ木が生えてたら担いでも通れねーわ」
師匠は馬車に戻り、斧と鉈を持ってきた。
「さぁこれで山道作ってね。修業、修業」
「わかりました修業ですね、行きましょうクデロペ」
「おう」
やっべっ、あいつら修業って言ったら何でもやるよ、ちょろいな。
斧と鉈を持ってみたが、やはり呪いのせいで武器とみなされ持つ事が出来ないのでクデロペが斧で木を切り倒していく。
「うおぉぉりゃゃゃ」
カンカンカンカンカン、バターン。
「どおりゃゃゃ」
カンカンカンカンカン、ドシーン。
切り株は僕の担当で根っこごと引き抜き穴を埋める。
「ぐぬぬぬぬっ」
ズボッ、ポーイ。
ペタペタぺタ。
「せいやあぁぁぁ」
ズボッ、ポーイ。
ペタペタペタ。
僕達は山道作りに慣れてきた。
カンカンカン、バターン。
カンカンカン、ドシーン。
ズボッ、ポーイ、ペタペタ。
ズボッ、ポーン、ペタペタ。
夕方まで山道を作り続けた。
「あー疲れた。ねーどこまで行けば良いと思おう?」
「わかんね、今日はここまでにしようぜ。腹減ったし」
ドンドンドン
「師匠起きて下さい」
「起きろー師匠」
ガチャ。
師匠が怠そうに馬車から出てきた。
「ふあぁぁ、山道で来たんだ」
「まだですが、夕方ですしお腹が空いたので」
「ふむふむ、確かにお腹空いたね。夕食にしようか、食料や調味料はアマネの家から沢山かっぱらって来たから問題ないぞ」
間違ってます師匠。かっぱらう事が問題なんですよ。
「アマネは燃えそうな枝を持ってきてくれ、師匠は竃を作ってくれ、俺は下ごしらえをする。
クデロペが夕食作りの支持を出す。
枝を集めて戻ってくると師匠はお腹が空きすぎているのか文句も言わずに竃を作っている。クデロペは料理が上手く相変わらずの手際で下ごしらえを済ませていく。
竃が完成し枝に火をつけてクデロペが次々に料理を作り、三人で夕食を食べた。
大した設備が無いのに相変わらずクデロペの料理はとても美味しい。
「美味い! クデロペ君、冒険者は諦めろ俺様の料理人になれ、但し給料は払わない。弟子はクビだ」
「ふざけるな、俺は冒険者になるし弟子も続けるわ」
「クデロペはケチだなー」
師匠の顔が、えーって嫌そうな顔になっている。
「ケチって給料を払わずに人を雇おうとしてヤツが言うな」
食後はいつもの訓練を行い、いつものデコピンとビンタでボコボコにされ、魔力を空っぽにして倒れるように寝た。もちろん僕達は地面、師匠は馬車で。