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Explorers  作者: 森々のすけ
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#2

「ほいっと」

 突然現れた男はクデロペがホーンウルフへ止めの一撃として振り下ろした剣を親指と人差し指の2本だけで止めた。

「ふぇ?」

「へ?」

 僕達は何が起こったのか理解できなかった。


「もう良いよ」

 男はホーンウルフへ微かな声で呟く。それを聞いたホーンウルフは草原に向かって走り出した。


「少年達よ大丈夫かい? 俺様が来たからには、もう安心だよ。お礼は金貨1枚で良いから」

 男は満面の笑みを浮かべて軽い調子で話し出した。

 呆気にとられていた僕達は我に返る。

「はぁ? ふざけんな、オッサンが邪魔しなければ倒せたのに何で俺達が金払わなきゃなんねぇんだよ」

 うーんクデロペを落ち着かせないと話にならないね。

「クデロペ落ち着いて。深呼吸、深呼吸。僕が話をするから」

  スーハー、スーハー、クデロペは深呼吸を数回行い少しだけ落ち着いた。


「僕はアマネと言います、彼はクデロペです。貴方は誰ですか?」

「えー助けてあげたのにお金払わないのー? 信じられなーい」

 おっと無視された。

「良いですかクデロペの剣は確実にホーンウルフの首を捉えていたと思います、素材を逃したので僕達が損をしているのにお金を支払うのですか? 逆に僕達が貴方からお金を頂きたいくらいですよ」

「しょうがない、金貨1枚じゃなくて夕食と酒にまけてあげる」

 またまた無視ですか。

「全然、話を聞かない人ですね。話になりませんクデロペ帰りましょう」


 男に背を向け歩き出すと男は回り込んだ。

「わかった俺様は名はカースド。少年達がそこまで言うなら賭けにしてあげよう」

「はぁー? オッサン何で上から目線なんだよ、意味わかんねーよー、気持ちわりーよー」

 クデロペは怒りを通り越して呆れはじめる。


「はいはい。じゃあ賭けをして下さい、これで良いね。俺様が勝ったら夕飯&酒、少年達が勝ったら銀貨5枚」

 カースドは鼻をホジホジしながら答えた。

「そのお金で普通に夕飯食べた方が良くないですか?」

「少年それは間違いだ……人の金で食う飯と飲む酒が一番うまい!」

 カースドさんはキメ顔で親指をビシッと立てる。


「良いだろう賭けをしてやる。但し俺らが勝ったら1人銀貨5枚だ。勝負はアマネの壁をオッサンが3回攻撃して壊せなかったら俺らの勝ち。それで良いな?」

「よっしゃー! で、壁ってさっきのホーンウルフを弾いたやつを壊せばいいんだね」

 クデロペが悪い顔をしてる勝った気でいるけど大丈夫かな? 確かに僕の<障壁>は頑丈だけど。


 僕は<障壁>を発動した。

 コンコンコン

「ふーん本当に壁が有るね、へー」

 カースドさんは見えない壁がある事を確かめるとクデロペから訓練用の剣を借りて振り下ろす。

 ガキィーン!

「オッサン残念だな後2回だ」

 カースドさんは<障壁>に触れ少し考える。

「まぁこの位かな? 2回目いっちゃいまーす」

 再度、剣を振り下ろすと。

 バキィーン! バリバリバリ!

 ……あっさりと<障壁>は崩れ去り僕達は暫く呆然としてしまった。


「イェーイ、俺様超つえー、超カッコいいー、タダ飯&タダ酒ゲッート!」

 カースドさんはダブルピースを何度も僕達の顔の前に出してきて少し面倒くさい。


 クデロペと話し合い今日は僕の家でご馳走する事になった。

 街でクデロペと別れ、僕は冒険者になりたくて訓練している事を話し、カースドさんは冒険者で今は1人で活動しているなどの話をしながら家へと向かった。


「この辺りって街の一等地だよね、この辺に住んでんの?」

「はい。あそこです」

 高級住宅街の中でも一番大きな屋敷を指差して言った。

「アマネの親は何をしてる人なの?」

「父さんは商人です。モーリヤ商会を営んでいます」

「あのモーリヤ商会?」

「はい。そうです」


 呪われしモーリヤ家か。なるほどね、そりゃよく見えねぇはずだわ。カースドは納得する。


「お帰りなさいませアマネ様」

「ただいまアレフ、こちらのカースドさんに食事とお酒をご馳走しますので用意してください。父さんには僕から話をしますので」

 父さんの執務室へと向かった。


「私は執事のアレフと申します。カースド様こちらへどうぞ」

 カースドは応接室へ通された。


 執務室で父さんに今日の出来事を話した。

「ほーお前の<障壁>をたったの2撃で破壊したのか、それは凄いな。話は解った約束は守りなさい、商人にとって信用は最重要事項だからな。存分にご馳走してあげなさい」

「ありがとうございます」


 コンコンコン

 執務室のドアがノックされアレフが入ってきた。

「旦那様失礼します。少々お話がございます」

 アレフが父さんの耳元でコソコソと話し始めると父さんが驚愕した。


「何? ダブルだと? それは本当か?」

「確かめた訳ではございませんが佇まいなどを拝見しておりますと、おそらくは本物かと」

「そうか。では私も食事に同席しよう」

「かしこまりました」

 アレフは一礼をして執務室を後にした。

 カースドさんに問題でもあったのだろうか? 忙しい父さんが食事に同席するなんて。


 カースドさんの待つ応接室へ行くと。

「一目惚れっす、お付き合いをして下さい」

 カースドはメイドのノアに頭を下げて手を伸ばしている。

「仰っている意味がわかりません。失礼します」

 ノアは足早にこの場を去って行った。

 カースドさんはそれを目で追いながらガックリと肩を落とした。


「何をしているんですか」

 今にも泣きそうな顔をしているカースドが振り返り。

「へ? 何って求愛だよーだって猫耳メイドだよ、男のロマンだよー」

 男のロマンて何言ってんだろう? でもこの人、良い人なんだろうな。亜人族の猫人ノアに求愛って大声で言って偏見を持っていない。この国での亜人族の扱いはまだ良い方で他の国では亜人族は人族の下と見られ差別や迫害を受けているらしい。


 しばらくして食事の用意が出来たとノアが伝えに来たが速攻で立ち去って行き、カースドさんはまた肩をガックリと落した。

 食堂へ向かうと様々な料理が用意されていて、既に父さんも待っていた。




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