stibnite ~ ネクラ少女と灰色鉱石(1)
くだらない。
私は心の中でそう吐き捨てる。
勿論、口に出したりはしない。その方が懸命。
口に出すほど悪化する。
口に出さなければそれ以上悪化しない。
謝ると激化する。
何か言葉にすると着火剤になる。
これ以上面倒なことは無い。
ある日のこと。
一人の少女の言葉から全てが始まった。
「この教会には宝石が隠されている。」
根も葉もない噂だ。
一人の修道女として教会に属していたが、
全く耳にしたことがない。
少女が言うには、
神父が晩酌をしている時に溢していたそうだ。
だが、神父はそれ以上の事は口を閉ざしたという。
何処にあるか、どんなものなのか。
それは言い出した少女自身もも分かっていなかった。
話は変わるが、人間の集団にはどこでも軋轢が生まれる。
修道女の中でもやはりそれは起きていた。
肌の色が違う私はいつも避けられ、罵られ、悪戯されていた。
だからこそ、修道女として過ごす日々に私は辟易していた。
そんな私も宝石の話を聞かせられたわけだが、
別に噂仲間として呼ばれたわけではない。
私は分かっている。
「調べてこい。」
そう、言われることを。
いつものこと。私は虐げられるだけ。
集団を仕切っている少女がそう口にすれば従わざるを得ない。
私のいる場所を確保するため。
生きるため。仕方なく頷く。
くだらない。面倒。
その言葉をかみ殺した。