六羽 外練習と課題
三人は公園に着くと持ってきたラケットとシャトルを準備した。
「それじゃあ、やりますか。 でも一応人の迷惑にならないように気をつけないとね」
双葉がそう言うと美穗と茜の二人は頷いて答えた。
「でも今私たちは三人だけどこのまま三人で打ち合いをするの? それとも交代しながら二人で打つ?」
「そうだね。 交代しながら打とうか。 それならお互いに確認しながら練習できるしね。 はじめは美穗と茜の二人で打って良いよ。 それと美穗、さっきのノートをもう一回見せてほしいんだけど」
「ノート? 良いよ!! ちょっと待ってね」
美穗はカバンからバッグを取り出すと双葉に渡した。
「ありがとう。 それじゃあ二人とも交代になったら教えてね。」
それから美穗と茜の二人は距離を取って打ち始めた。 双葉は美穗のノートをじっくり見始めた。
(改めてみるけど、しっかりまとめられてるな。 練習方法も中だけじゃなく外での練習方法も書いてある。 どれも効率よくできる練習方法だ。 でも美穗は最近バドミトンを始めたって日記には書いてあったけど…… もしかしたら誰かスポーツをやってる知り合いがいるのかな? 親とか……)
双葉が美穗のノートをじっくり見ている中、茜と美穗はいろいろと確認しながら打ち合っていた。
「美穗、今日は少しだけ風があってちょっとだけ軌道が変わるけどこれならある程度の練習はできる。 だから普段通り打って大丈夫そう。」
「そうだね。 それなら高く上げるからまずはスマッシュの練習をしようか。」
美穗がそう言うと茜は頷いて再び距離を取って打てる体制をとった。
「それじゃあ行くよ~」
美穗は茜の準備ができたのを確認するとシャトルを高く打ち上げた。
茜はシャトルの落下点を見極めるとスマッシュのフォームを取ると思いっきり打った。
ビュッという音がして、スパーンというシャトルを打つ音がした。
そして茜の打ったスマッシュは一直線に美穗の手元に向かっていく。
そしてそれを美穗がまた高く打ち上げる。
その動作を10回ぐらい続けると今度は茜がシャトルを高く打ち上げ、美穗がスマッシュを打つ。
そしてそれを10回続ける。
スマッシュの練習が終わると二人はお互いの見た感想を言い合った。
「美穗、もしかしてスマッシュちょっと苦手?」
「う、た、確かに苦手かも、うまくスピードが乗らないというか……」
「そうなんだ…… う~ん、もしかしたら決めようとするから角度は申し分ないけどその分力がうまく乗ってないのかも」
「やっぱり考えてるからなのかな? よし!! うまく打てるように頑張るよ!! それで茜ちゃんはね、なんかコースがわかりやすいというか…… 打ちやすい?」
「そ、そうなんだ……」
美穗が茜に修正点を言うと茜はガーン!!という音が似合うぐらいびっくりして、少し落ち込んだように顔を下げた。
「あ、い、いや悪いわけじゃないんだけどね? なんかスピードはあるけど、コースがわかるというか……」
「い、いや、そんなに落ち込んでるわけじゃないから。 それにしてもコースが予測しやすいか…… 私は力いっぱい叩くけどその分コースが甘くなるのか……」
どうやら美穗と茜の修正点はお互いの得意なところが相手の修正点になっているようだ。
美穗はパワーで茜はコントロール。
二人はそれからスマッシュ、ドライブなどの打ち方を練習して、そのたびに修正点を見つけてはお互いに話していた。
「よし、それじゃあ双葉ちゃんと交代しようか。双葉ちゃん呼んでくるね。」
美穗はそう言うと近くの木陰でノートを読んでいる双葉を呼びに行った。
「双葉ちゃん、交代だよ~」
「うん、すぐ行く」
双葉は美穗にそう言うとノートを閉じて美穗と一緒に茜の元に向かった。
「美穗も茜もお疲れ様。 良い練習になった?」
「なった。 美穗が私の修正点をすぐに見つけてくれるから助かった」
「茜ちゃんもどこを直せばいいかアドバイスくれるからすごく助かったよ!!」
美穗と茜は互いのこと褒めていた。それを見ていた双葉は満足そうに言った。
「うんうん、お互いに良い練習になってよかったよ。 それじゃあ私も打つかな? 二人とも体力は大丈夫?」
「ちょっと疲れたけど大丈夫だよ。 私が双葉ちゃんの相手をするから茜ちゃんは休んでて良いよ」
「わかった。 それなら木陰で休んでるね」
茜はそう言うと先ほど双葉がいた木陰に向かった。
「それじゃあ双葉ちゃん、始めるね!!」
「良いよ!! でも最初はちょっと確認しながら打ちたいからラリーでお願いね」
「了解!!」
それから二人はラリーを始めた。 双葉は美穗ができるだけ動かなくても良いように美穗がいる位置にシャトルが返るように狙って打っていた。
(やっぱり…… 体が思い通りに動かない。 元の体のように動かそうとしているけどどうしてもワンテンポ遅れてる感じだ。 何回かこの体でバドミントンをしたがいつもこんな感じだった。 男の体と女子の体はこんなにも違うのか……)
「よし、美穗!! 好きに打って良いよ!!」
双葉の突然の言葉に美穗は少しびっくりしたみたいだが双葉の言うとおりに自分の思うように打ち始めた。
最初はシャトルに追いついて取っていた双葉だが何回か繰り返すと息が上がっていき最後は空振ってしまった。
「双葉ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫、大丈夫」
(まさかこんなに動けないなんて思わなかった。 体力もそうだけど、どちらかというと俺の意思とこの体が合ってないという感じだ。 これは早く直さないと、バドミントンどころの話じゃなくなってくるぞ)
「双葉ちゃんはうまいけどなんだかぎこちなく感じた…… なんだか喧嘩してるみたい……」
美穗がそう言うと双葉は息が落ち着くと不思議そうに美穗を見た。
「喧嘩? 誰と誰が?」
「え、えっとね? 双葉ちゃんと双葉ちゃんが喧嘩してるみたいだった……ってごめんね!! 変なこと言っちゃって」
「い、いや、大丈夫。 だけど、喧嘩か…… 確かにそんな感じかも」
(永峰さんが言っていることは間違いないではないはず…… それはそうだ。 なぜならこの体は双葉ちゃんの体で俺の体じゃない…… なのに意思は俺だから俺は双葉ちゃんの限界以上のことを体に命令してたってことだ。 だからワンテンポ遅れるように感じるのか…… それにしても喧嘩か…… 永峰さんは面白いとこに気がつく子だな~)
「ありがと、なんかわかった気がするよ。 それじゃあそろそろ時間になるから体育館に戻ろうか」
「そうだね。 それじゃあ茜ちゃんも呼ばないとね」
二人は使った物を片付けると木陰にいる茜に手を振ると茜もそれに気がつきこっちに走ってきた。
「よし、これからは本当にうまい人の練習を見られるんだ。 しっかり自分の物にして帰ろうね。 それと美穗、ノートありがとね」
双葉はそう言うと持っていたノートを美穗に返した。
それから三人は奥原 由紀の練習試合が始まる体育館に戻っていた。
この外練習は三人の課題を見つけるための良い練習になったようだ。
作者からお知らせです。
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これからも応援していただけるとうれしい限りです。