十一羽
「今度は双葉ちゃんと奥原選手の練習試合を流すね。」
茜はそう言うと二人の練習試合の場面に切り替えた。
「二人とも強かったよね、とてもじゃないけど今の私たちじゃあ手も足も出ないと思うな…… でも二人の試合を見ている間に少し気になったことがあったんだ。」
美穗はそう言って動画を巻き戻してある程度戻った場所で動画を止めた。
「私が気になったのは、ここの双葉ちゃんの動きだよ。 この場面で双葉ちゃんは奥原選手の打ってきた球に対して、空振りしたの。 最初はただ単に空振りしたと思ったんだけど…… このとき、双葉ちゃんは少し驚いた感じでシャトルを見てラケットを数回素振りしていた。 私が気になったのは空振りした際に双葉ちゃんが球を打ち返せなかったことに困惑していたことだよ…… 双葉ちゃん、なんであのとき少し驚いていたのか聞いても良いかな?」
「えっとね、あのとき確かに奥原選手が打ってきたシャトルに対して、反応できたと思ったの。でも実際は空振りをしちゃって…… 自分の中では完全に当たったと思っていたし、目でも完全に追えていたから余計とあれ?ってなっちゃったの」
(確かにこの場面でミスしたときは永峰さんの言うとおり、シャトルを打ち返せて居ないことに困惑してしまったが、こんな小さなことで気がつくのか…… これは仲が良い間柄だから気がついたことなのか、それとも才能か……)
「そうなんだ…… ありがとう。 それにしても、自分の中ではシャトルを打ち返せていたってことは完全にシャトルを認識できていたってことだよね。 それなのに実際は空振りしたってことは何か問題でもあったのかな?」
「自分の認識と実際の出来事が食い違うことはよくあることだと思う。 野球選手が自分に向かってきた球を打ち返すときに、自分ではここに来ると思ったところにバットを振っているけど、実際は空振りして、ストライクになることとか。 テレビでも似たようなことを言うスポーツ選手はたくさんいるし、それは自分の体に問題があった。とかじゃ無くて、相手の方がうまかった、という話だと私は思う。」
茜は美穗が言っていた言葉に対し、自分の思ったことを返すと、美穗は「確かにそういうときもあるね。でも……」と答えながら、白紙のページを開いて、ノートに記入し始める。
「確かに茜ちゃんが言ったとおり、スポーツ選手の中には双葉ちゃんと似たような体験をして相手の方がうまかったって答える人も確かに居るね。でも、その人たちが居る一方、こんな風に答えている人も居るんだよ。 自分の認識と体の動く範囲にずれが生じてなかなかうまく動けなかったって。 それってこの人が言ったとおり、自分の体の動きと自分の想定している体の動きにズレが生じているんだと私は思うな。 実際このスポーツ選手は試合前に起きた怪我から復帰直後の試合でこのコメントを残していたの。 つまりこのスポーツ選手が想定していたのは、万全だったころの自分で、復帰したあとの自分の体だと万全の状態より、いくらか能力が低下していてうまく動けなかった…… つまり、相手の方がうまいことがあれば、自分が原因の場合もあるってことだよね。 さて、この話を聞いてもう一度双葉ちゃんに聞くけど、この空振りをしたときに取った行動はこの二つの話のどちらに近いかな?」
美穗は人の体を書いたページにペンをおいて、双葉に再び質問をした。
双葉は少し、考えるような姿勢を取ると、美穗の問いに対して答える。
「えっと、茜ちゃんの言っていたことも間違いでは無いと思うんだけど、今回の件については美穗ちゃんの言っていたことが近いかな? この時ね、私の目は間違いなく奥原選手が打ってきたシャトルを目で追うことはできていたと思う…… でも……」
「でも?」
「でも、私の体の方がね。 私もこの動画で気がついたことだけど、私がラケットを振ったときにシャトルとラケットに少し間が開いているよね。」
双葉はそう言うと、止まっていた動画を少し戻し、話題に上がっているところでもう一度動画を止めて指を指しながら二人にラケットとシャトルの間が開いていることを説明する。
「この時、ラケットを振ったときに私はこの位置でシャトルに当たると思って振ったから、空振りをしたときは空振りしたことに気がついてなかったの、でも点数のコールが聞こえてようやく自分がミスしたことに気がついたの。 でもその時はミスしたことに困惑したけど、落ち着いて考えてみて理由がわかったからもう大丈夫だよ。」
「え、双葉ちゃん、理由がわかったの?」
美穗が驚愕しながら双葉に確認を取ると双葉は「うん」と言いながら頷いた。
「えっと、理由を聞いても大丈夫かな?」
美穗が双葉にそう聞くと、双葉は少し困ったような様子で、首を振り答えた。
「ごめんね、理由はわかったけど、これは私の問題だから今、説明するのは難しいかな。でもちゃんと覚悟決めたときに話すからもう少しだけ待ってもらえないかな?」
双葉は二人にそう二人に話すと、美穗と茜は双葉の様子にただならぬ雰囲気を感じ、二人は顔を見合わせて一回頷いて双葉に話しかけた。
「わかった。双葉ちゃんがそう言うなら私は双葉ちゃんの準備ができるまで聞かないよ。自分でどうにかしたい問題だもんね。」
「私も双葉が話せないって言うなら詳しくは聞かないかな。でも困ったときはため込まずに少しでも助けを求めてほしいかな。 双葉は大切な友達だからね。
作者からです。
まずは半年間も放置してしまってすいませんでした。
活動報告でも書きましたが学業の方に再びつき、バイトもはじめ、朝からバイト、夜に学業と時間が余り取れず放置してしまいました。
ですが、最近はバイトなどになれて、再び少しの時間ですが小説を書く時間を取れるようになってきました。ですので、土日に一話、調子が良ければ二話更新で再開させていただきます。
作者の方も半年も経っているので最新話と過去の話に食い違いがあったりなどあるかもしれませんがその場合は修正を入れたり、過去の話に追加を入れたりするのでよろしくお願いします。
本当に長い間お待たせしてしまってすいませんでした。
それでもコメントなどはすべて確認させていただきました。
心配してくださるコメントや応援のコメントなど本当に心が温まりました。
これから返信させてもらいますが一足先にこちらの方で感謝の報告をさせていただきます。
本当に暖かく見守っていただきありがとうございます。
毎日更新とは行きませんが、無理せず頑張っていきます。
これからもよろしければ暖かく見守っていただければうれしいです。
以上にて作者からのメッセージとさせていただきます。
次回は来週の土日に更新させていただきます。
時間があれば見ていってください。




