終わり
「オラッ!」
「――ッ!」
兵士によって、俺は乱暴に牢屋にブチ込まれた。
既にボロボロなのに、なんてことをするんだ。壁にぶつかった背中がズキズキと痛む。
ガチャリ、と牢屋に鍵が閉められた。
「王国最強とも言われたお主が、まさか儂にこんな無様な姿を晒すとはな」
国王が、皮肉気に俺を見下す。
よく言う、アンタが俺を嵌めたくせに。
そう言おうとしたが、俺にはもはや喋る気力すらない。
国王が言葉を続ける。
「お主は儂のためによく働いてくれた。しかし――分かるじゃろ? お主のその力は強過ぎる。城内でお主を危険人物と呼ぶ者も少なくはない。じゃから、分かってくれ」
国王はそれだけ言い残すと、兵士と共に奥へと消えて言った。
「……く……そ」
動かない体を必死に動かそうと頑張ってみるが、なんとか壁に寄りかかるのが精一杯だ。
くそ、こんなことだったら変な意地を張らずに風俗でも行っときゃよかった。まさか、童貞のまま一生を終えることになるとは。
死ぬ間際だというのに、そんな下らないことを考えてしまう。いや、逆に死ぬからこそ生物として種を残そうとしているのかもしれない。
本当なら『テレポート』でも使って今すぐに逃げたいところだが、コレが付いている内は、そんなことは許されないだろう。
俺は自分の腕に付いている、不気味に光る腕輪に触る。
これは、通称『奴隷の印』と言われており、この腕輪をはめられた者は、一切の魔法が使えなくなるのだ。
つまり今の俺は、魔法の使えない王国最強の魔法使いというわけだ。本当に笑えない。
「……あぁ」
やばい、目が霞んできた。まさか、これが俺の最期だなんて。
「……どう……てい……は、いや……だ」
その言葉を最期に、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。